006./ ホーンラビット先輩
久しぶりの投稿!
時間が開いて申し訳ないです!
書くのが飽きてたわけじゃないよ? ホントダヨ?
後、冒険者のスキルの名前を一部を変更しました!
「はぁ~、スライムにも勝てない俺って……」
ハヤテは草原を項垂れながら歩いていた。
スライムにすら勝てないのなら、自分は一体何に勝てるのだと、ハヤテは目の前が真っ暗になっていたのだ。
遠くの方では、プレイヤーがピッグやスライムと戦っている様子が見て取れたが、誰しもはハヤテの様に苦戦することもなく、軽々と勝利を収めていた。
ハヤテの自信は今、ドン底にあったのだ。
しかし、そんなハヤテの目の前に、一つの希望が降って沸く。
「ん?」
『きゅ?』
そのモンスターは、下を向いて歩くハヤテの視界を横切る様に現れた。
兎の様なモンスターで、頭に小さな角が一本生えていた。
「これなら、俺でも倒せそうだな……」
首を傾げながら、愛くるしい目で此方を見るその兎型モンスターに、少々罪悪感を覚えながらも、ハヤテは短剣を抜く。
するとその瞬間、文字通り脱兎の如く逃げていく兎型のモンスター。
「ま、待て!」
ハヤテは短剣を握り締め、直ぐに兎型のモンスターを追うように草原を駆けた。
そして、SPDで優っていたハヤテは、直ぐに追いつく事が出来た。
その事実に、後ろを振り向きながら驚く兎型モンスター。
ハヤテは、それを好機と見るや、短剣を素早く横に走らせた。
「まず一発!」
――シュバ!
『きゅい!』
「よし!」
兎型モンスターのHPバーが五分の一程減り、それと同時に、バーの右上にホーンラビットと、兎型モンスターの名前が表示される。
「かなり減る! 意外と弱いぞコイツ! これなら!」
『きゅいきゅい!』
背中にダメージを受けたホーンラビットは、すぐさま反転し、その小さな角でハヤテに攻撃を仕掛けるが、ハヤテはラビットホーンを跨ぐように、その攻撃を避けた。
「あ、アブねー! スライムの二の舞になる所だった」
『きゅい~』
避けられたことに不満な雰囲気を醸し出すホーンラビットと対峙しながら、ハヤテは隙なく短剣を構える。
「あと4回。急所で2回。落ち着け。俺ならやれる……」
ジリジリと距離を詰めながら、ハヤテはホーンラビットに近づいていく。
そして、一気にハヤテは間合いを詰める様に走った。
ホーンラビットもハヤテに対し、額の角で攻撃するべく、後ろ足で草原を蹴る。
そして、数度の交差の後、ハヤテはホーンラビットの頭に短剣を刺し込み、ホーンラビットのHPバーを0にした。
『きゅいぃぃ……』
「よっしゃぁぁ!」
短剣を空へ掲げ、ホーンラビットが青い粒子となって消え行く中、ハヤテは雄たけびを上げながらガッツポーズをする。
そんなハヤテを、周りのプレイヤー達は生暖かい目で見ていた。
「やっと自力で一匹倒せた!」
興奮している事で、周りに気づかないハヤテは、一人喜びながらステータス画面を開き、経験値の入り具合を確かめる。
「おぉ、経験値が20%も入ってる! やっぱ貢献度で減らされてたのか……」
ステータス画面を閉じながら、自分の考えが当たっていた事に満足し、短剣を腰へと収める。
すると、先程までホーンラビットが居た地面に、何やらアイテムの様な物が落ちていた。
「お、ドロップアイテム!」
地面に落ちていたのは、笹の葉の様な物で包まれ、紐で縛られたアイテムだった。
ハヤテは、それを直ぐにアイテムBOXに移動させ、説明を表示させる。
------------------------
【ホーンラビットのモモ肉】RANK:1
ホーンラビットから入手できる食材アイテム。
------------------------
「肉か。まぁ、そうだよなぁ……」
レアなアイテムかとちょっと期待してただけに、現実を突きつけられ、先程のテンションがクールダウンしていくハヤテ。
「まぁ、これからの目途も立ったし、良しとするか!」
気を取り直しながら、ハヤテはホーンラビットを見つける為、草原を歩き出すのだった。
「ハッ!」
――ザシュ!
『きゅいぃぃぃ……』
「ふぅ……」
五匹目のホーンラビットを倒し終え、そろそろ動きも覚えて来た頃、ハヤテの脳内で『ピコン!』と、電子音がなった。
「ん? 何の音だ?」
一応、辺りを確認した後、ハヤテがメニューを開くと、そこには『LVアップしました』という文字が表示されていた。
「やっとLVアップか。1LV上げるのに、どんだけ時間掛かってんだよ俺……」
2DゲームのRPGでは楽だったのに、こうも現実として上げるとなると、何故こんなにも大変なのかと、少々げんなりしながらも、ハヤテはステータス画面を開き、SPを全てSPDに振る。
------------------------
NAME:ハヤテ
JOB:冒険者
LV:2
HP:110
MP:110
ST:235
STR:0
DEX:0
VIT:0
INT:0
SPD:25
MND:0
LUK:0
SP:0
NEXTLV:1%
------------------------
「HP・MPで比べると、STだけ二倍近くあるな。SPDを1振ってST+5って感じかな? LVアップでHP・MP・STが10ずつアップと……」
STから逆算し、SPDを上げた時に、どれだけSTが上がるのかを計算したハヤテは、ステータスを閉じながら、辺りを見回す。
周りには、ハヤテと同じくモンスターを倒すプレイヤーが居り、ハヤテが苦労して倒しているホーンラビットを、皆一刀のもとに切り伏せていく。
「ん~、やっぱ俺、火力不足だよなぁ」
腰の短剣を弄りながら、ハヤテは何かしらの方法で火力を補おうと考え始めていた。
「そう言えば匠の奴、ボムとか何とか言ってたな。街に戻ってみるか?」
ハヤテは、匠との会話を思い出しながら、街の方へと目を向けた。
しかし、とハヤテはアイテムBOXを除き、現在持っている所持金に目を向けた。
「2200リン……足りないだろうなぁ。ボムが幾らするかも分からないし。5000リンまで溜めてからにするか」
【リン】とは、この”WORLD LINK ONLINE”での通貨である。最初始めた頃は、所持金が2000リンあり、ホーンラビットが偶に落とす銅貨を拾い、200リン増えた。
ハヤテは、まだこのゲームでのアイテムの相場を知らない為、シュヴァインの言っていたボムが、どれだけの値段で売っているのか分からなかった。
「LVも上げれて一石二鳥だしな。そうと決まれば、後はモンスターの動き覚えてLV上げか」
ハヤテは背伸びをした後、草原を走り回り、ホーンラビットを狩っていった。
そして、LV5の通知音が響き、SPDを40にした後、ハヤテはログアウトし、一日を終えた。
その背中に、魔の手が忍び寄っているとも知れずに。
ホーンラビットはLV3です。
動きは早いが、攻撃力や防御力は然程なく、比較的倒しやすいモンスターです。