020 定番料理と腕輪操作と1秒クッキング
2017/01/29 改稿
リンドブルムのお肉は、2480Kgもある。
1年は336日だから、1日2Kg食べても、4年くらい持つ計算か。てか、皮とか牙とか鱗とか、絶対お金になると思うんだけどなー。知らないといった手前、ほとぼりが冷めるのを待つしかないか。ちぇっ。
異世界・お肉、と来たら定番は唐揚げだけど、まずはリンドブルムが旨いかどうか確かめないとね。サンプルで1Kg取り出してみたら、ちゃんと1Kgのブロックになって出てきた。所持の腕輪、凄いぞ。
ま、とりあえず、ちょっと焼いて食べてみますかね。
さっき買ってきた包丁っぽいユーティリティナイフで少しカットして、フライパンでさっと焼いてみた。
はぐっ。むぐむぐむぐ……なんだこれは。
言ってみればリムーザン牛とブレス鶏を足して2で割ったというか、鶏っぽくもあるがもっとコクが強くて、噛めば噛むほど味が出る。むっ……ちゃ、旨いっす。
「なんだか幸せな匂いがします、です」
鼻をひくひくさせながら、ふらふらとリーナが近づいてきた。目、いや鼻敏いやつだな。
「ちょっと味見するか?」
「します、です!」
あーあ、尻尾が全開だよ。しょうがないやつだな。
100グラムくらい焼いて、お皿に載せてやると、一口で食べやがった。
「ほぐほぐほぐほぐ。んーーーー、これは良い肉、ですっ!」
目をつむって、ほおに手を当て、陶酔したようにそういった。
もっと欲しそうな目で見ても、ダメですよ。
リビングの椅子の上で、開いた魔法書に隠れながら、こっちを覗いてるやつがいるぞ。
「ノエリアも味見する?」
「……よろしければ、ぜひ」
恥ずかしいのか、顔を赤くして台所まで移動してくる。
「ぱくっ……はふっ、素敵です」
目をうるうるさせて感動している。くそっ、艶っぽいな。
「ほらほら、後はご飯の時な」
と追い返すと、リーナは指をくわえてこっちをみながら、元の作業に戻っていった。
んじゃ、唐揚げの仕込みをしますかね。
……ん、まてよ? 重さを指定して取り出せば、そのサイズの肉が取り出せるんなら、例えば、5cm x 5cm x 5cm って念じたら……おお、出たよ、直方体の肉! いやまて、さらにこれ、腕輪の中で解体君にお願いできるんじゃね?
まず台所にあった一番大きな寸胴鍋を取り出しまーす。
でもって、買ってきたニンニクっぽい野菜と生姜っぽい野菜と、ストッカーにあった日本酒と、醤油と、その他諸々で、付け汁を作りまーす。
そうしたら、それを腕輪に収納して、リンドブルムの肉を、大体 5cm x 5cm x 5cm 程度にカットしたものを寸胴に8割くらい入れて、まんべんなく付け汁を回しておいてくれ。と念じてみた。
次に「もう一度」台所から寸胴鍋を取り出しまーす。あーら不思議、寸胴鍋が復活しているでは、あーりませんか。
さらに、MPが12000程減っているではあーりませんか。
うえ。流石に大物だな。消費財とはレベルが違うか。
こちらは、シンプルに塩胡椒で塩だれを作って入れておいた。
先ほどと同じく腕輪に収納して、同じように操作を念じる。
そこでさらに、MPが12000程減った。
収納したりして、この空間になくなると同時に有無を言わさず再生するんだ。もしMPがなかったら死ねるんじゃ……10%くらいは残しておく癖をつけた方が良いな。
(腕輪操作のレベルが1になりました。時間管理が追加されます)
腕輪操作?
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カール=リフトハウス (10) lv.12 [23] (人族)
HP:140/140 [ 5,472/ 5,472]
MP:312/312 [270,988/270,988]
SP:0
[一般常識(日本)]
[めっちゃ幸運]
[交換]
[認識 ■■□□□ □□□□□]
[祝福 ■■■■□ □□□□□]
腕輪操作 ■□□□□ □□□□□
[使徒(シールス神)]
[カール=リフトハウスの加護 経験 x 40 取得 x 2]
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腕輪操作
所持の腕輪を操作する機能
lv.1 時間管理
格納されたもの別に時間流を調整する機能。温度は定温に保たれる。
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つまり所持の腕輪の中に入れた物ごとに、時間流を設定できるってこと?
……4日目にして、もう、なんでもありだな。
寸胴鍋(大)醤油味 12Kg
寸胴鍋(大)塩味 12Kg
おお、あの寸胴 12Kgも入るのか。
じゃ、今の寸胴鍋、6400倍速で1秒間実行。これで、2時間置いたことになるのか……
まてよ、マイナス倍したら、新しくなったりするとか?
いや、想定外の動作でアイテムを壊したりしたら元も子もないしな、ここは余計なことはしないでおこう。修理なんて絶対できないし。
二つの寸胴を取り出した後は、揚げますよー。
低温と高温の油を用意して二度揚げしましょう。油をきったものから、どんどん腕輪に入れていきますよー。
しかし、今更だけど腕輪すげーな。これで後は温度を設定できたら完璧……まてよ。
時間を経過させても温度が一手に保たれる?
それはつまり100度で入れたものは、2時間経過させても100度だし、マイナス16度で入れたら、100時間経過させてもマイナス16度ってことだから、つまりスチコン以上に温度設定可能な夢の断熱調理器具ってことなのでは??
シチューとか、特定温度で腕輪に入れて、8時間とか経過させれば、一瞬で完成なんじゃ……所持の腕輪パネェ、万能調理器具だ。
と思ったけど、そうは問屋がおろしませんでした。
表面温度が130度、内部温度が50度のお肉を格納したら、全体のエネルギーを平均するように熱が廻るし、定温というより内部の熱エネルギーを均質化するような感じだということが判明。
自由に温度を設定できるわけではないから、特定の温度にするのが凄く難しいというか、無理でした。定温でキープするだけの目的なら、時間経過0のほうが使いやすいし。
便利そうに見えるけど、使い処によるな、これは。
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その後は、機械のように揚げ続けたけれど、揚げ終わる頃には結構な時間が経過していた。
唐揚げ(リンドブルム)醤油風味x301
唐揚げ(リンドブルム)塩味x298
12キロの肉って、唐揚げにすると300個くらいなのか。1個平均40グラムくらい?
ぐぅうううう、きゅるきゅるきゅる。
なんだ、この異音は?
「……あの、ご主人様」
「ん、どうした?」
「あの、あの……おなか減りました、です」
真っ赤になってうつむきながら、リーナが訴えてくる。
うーん。奴隷っぽくなくて、良い傾向だな。
早速、人参ぽい野菜と、ジャガイモっぽい野菜を茹でて、沸騰したところで腕輪にお湯と分離して収納、そのまま1200倍速で1秒おいて取り出したら付け合わせに。
すごいな、料理が一瞬だ。1秒クッキング、使える。皿に盛ったら、全部収納。これでまったく冷えないぜ。
お肉は一杯食べそうだから、たっぷり焼こうと思ったけれど、特定の温度にするのが非常に難しかったので、これは食べる時ノエリアに焼いて貰おうと思って、厚さ3cmで2kgほど取り出しておいた。
このさいパンも作っちゃうか。
強力粉とドライイーストとお塩に砂糖で、こねましょう。
というか、ノエリアパン生地作って。
「お任せ下さい。でも今からだと結構時間がかかりませすけれども」
「そこは大丈夫」
「リーナもお手伝いする、です!」
料理スキル lv.10 は伊達じゃない。あっという間にいくつかのパン生地が完成した。
よし、ここからは腕輪の出番だ。1次発酵は3600倍で1秒!
取り出してカットして、ベンチタイムは600倍で1秒!
収納して、2次発酵は、2400倍で1秒!
後はノエリアにオーブンで焼いて貰えば、あーら不思議、焼きの時間だけで基本のパンが30個も完成したよ?
「なんで、出したり入れたりするだけでパンが焼けるようになるのか全然分かりません」
ノエリアが目を白黒させながらそう言った。
俺もそう思う。
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お腹が一杯になると幸せになるのは、万国共通だ。
うつらうつらし始めたリーナに、お風呂に入るように言っておいた。
リーナもお風呂が大好きになったようだけれど、犬って、風呂嫌いじゃなかったっけ? あ、狼か。
ノエリアがリーナをお風呂場に連れて行ったので、俺は、無駄に寸胴が増えてしまったこともあって、牛の乳のようなものからバターを作成して、乳のようなものとバターっぽいものと小麦粉を使って、クリームシチューをこしらえ、寸胴鍋に入れたまま収納、4時間を経過させて時間を停止させておいた。リンドブルムシチュー(クリーム)だ。
なんと皿も収納しておけば、腕輪の中で盛りつけて取り出せることを発見した。お玉いらずだね。
よし、からあげ、王道。