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017 クリスティーンと第1回どうする会議とTUEEEEできぬ

自転周期を26時間から24時間に変更。ご都合主義で。


2017/01/29 改稿


「くわー、終わったー!」


聴取を終え、広場に戻って来たのは、16時をまわった頃だった。

ノエリアとリーナは、国会答弁のごとく「知りませーん」を連発していたから、すぐに出てこれるだろう。ちょっと待ってるか。


「カール=リフトハウス様?」


広場を出たところで、知らない声に呼び止められた。

振り返ると、そこには、聴取文官の後ろに控えていた女性が一人で立っていた。

プラチナブロンドのショートボブをスウィングカールにまとめ、クールに整った顔立ちを柔らかくしている。


 --------

 クリスティーン=ハイアルト (18) lv.14 真偽官(人族)

 

 #クリスティーン=ランジェラ

 

 HP:206/206

 MP:444/444

 --------


え? え? ハイアルトって……? 俺に一体何の用があるんだ?


「あら、私のこと、ご存じみたいね」

「ご高名はかねがね伺っていますよ、ハイアルトさん」

「……」

「どうされました?」

「あなたの聴取を行った文官が、10歳だというのに、まるで老練な文官と話をしているようだと言ったのを思い出していました」


なんだ、こいつ。何を考えてる?


「いくつになっても貴族の教育を受けるということは、そういうことなのかも知れませんね」

「14どころか、20を過ぎても子供みたいなバカ貴族を何人も見てきた私には、そうとは思えませんが」


ぶっ。いや、俺もそう思うけどさ。


「これは手厳しい。反面教師にして精進するといたしましょう。ところで、何かご用でしたか?」


「……一体、あなたは、何者です?」


うぇ。何てストレートな。

しかし相手の嘘が分かるなら、ストレートに質問して返事を待つのが一番手っ取り早くて確実か。つまり、ハイアルトの人間と話すときは、まともに答えてはいけないってことだな。


「リフトハウス伯爵家の三男坊ですが、それはまたどうして?」

「熟練の冒険者ですら全滅したほどの異常事態だった黒の峡谷のダンジョンから、素人の奴隷ふたりを連れて全員で生還し、アーチャグの大繁殖まで解決しながら、その功績の全てを、わざわざハロルド氏に押しつけようとしているようにすら見える。英雄になりたがる年頃の少年――貴族ならなおさらそうです――が、です。ちょっと興味をそそられませんか?」

「それはもちろん、(ひとえ)にハロルドさんのおかげで脱出できたわけですから、そう言うしかないわけですよ」


うそじゃないぞ。


「……なにかの加護をお持ち?」


ぐっ。切り返せ、切り返すんだ。


「真偽官になるためには、ハイアルト様の加護を得る必要があるとも聞いておりますが、加護を得たことを認識できるものなのですか?」

「いえ、明確には」

「真偽の程を明らかにするほどの力であってもそれなのですから、少しばかり何らかの加護を得ていたとしても、それと認識することは難しいのではありませんか?」

「ふむ。そうかもしれませんね」


「ところでこの会話は、あなたの職務と関係が?」

「いえ、いまのところ」

「……真偽官が職務の外でその力を行使することは、大きく制限されていると伺っていますが」

「もちろん、その通りです。いずれ私の仕事にも関わってきそうな予感がするのですが、今はまだただの興味本意です。女性に興味を持たれるなんて、なかなか将来が楽しみですわね?」


にっこり笑いながら、クリスティーンがそう言った。

凄く綺麗なんだけど、切れそうな怖さもあるな。


「ハイアルトさんのような素敵な女性に、そう言っていただけるのはありがたいのですが、喜べるようになるのは、あと数年は先の話でしょうか」

「くすっ。今のところは、十分満足のいく回答を頂けました。いずれまた、近いうちにお会いできるでしょう。お呼び止めして申し訳ありませんでした」

「プライベートであればいつでもどうぞ」


彼女は軽く手を振ると、後ろを振り返らないで、ゆっくりその場を離れていった。その後ろ姿が、次の角を曲がって見えなくなったところで、俺は盛大に息を吐き出した。


「ぶはーーーっ」


てか、なに。なんなの? あの人。プレッシャーが凄いんですけど。


  ◇ ---------------- ◇


「第1回、これからどうするか考えよう会議~」


そう宣言して腕を回すと、ノエリアとリーナが拍手ではやし立てる。

わー、パチパチパチ。


「まずは、ドルムに向かおうと思う」


ノエリアのお茶を、リーナと3人で飲みながらそう言った。


「ドルムまでは馬車でも3日くらいかかるらしいから、必要なものを買っておこうと思うんだけど、なにか欲しいもの、あるかな?」


そっと、ノエリアが、手を挙げる。


「はい、ノエリア君」

「ご主人様、お茶を買い足されました?」

「いや? 何も買ってないけど」

「実は、この間使った、ストッカーの中にあったお茶が、新品になっていました」

「ええ?」

「それから、ハロルド様が飲まれた果実酒も、すっかり買い足されたみたいに元通りになってました」

「……まさか」

「どうも、ハイムの中にあった備品は使っても元に戻るみたいです」


つまり、自動修復の対象になってるってことか?

じゃ、セラーの中のワインや、ストッカーの中のお茶や調味料って、売り放題?? 腕輪に入れて持ち出せるのかとか、そのうち試してみないとな。


「それで、ノエリア君。ストッカーの中には何があるのかね」

「このあいだ調べたところですと、小麦粉が2種類、薄と強ってマークが付いてたのが10Kgずつ。そして、米「なんですと?」」

「どうかされましたか?」

「今、米って行った?」

「はい」

「お米あるの?」

「はい」


奥様、お米、あるんですってよ! それに、ノエリアが知ってるってことは、この世界にもあるのか。


「そのお米、白い?」

「はい、見たこともないくらい真っ白です」


精米済みだよ。流石に現代品種をここで増やすのは無理か。


「あとは?」

「お塩と、お砂糖。他に、油とお酒とお茶が何種類か。それに見たこともない香辛料や調味料がいくつかと、あと、これなんでしょうね?」


ノエリアが取り出した箱を見て、目を剥いた。

……カレーのルーだよ。エス○ーだよ。


「あと、あの冷たい箱の中に金属のようなものがいくつか」

「金属?」

「はい、これなのですが」


……缶ビールに缶ジュースだよ。


「あとは多少のお野菜と丸鳥が1羽。大体そんな感じです」


ふーむ。これはやはり、何もないところでぼっちになっても、最低限の食には困らないようになってたんだな。しかしノーペナルティで無限復帰って、いくらなんでも怪しいよな。一体何を支払ってるんだろう?


ストッカーから強力粉を取り出して、腕輪に収納、もう一回ストッカーを開けてみたら……復活してた。ステータスを見てみると、


 --------

 カール=リフトハウス (10) lv.23 (人族)

 

 HP:5,472/5,472

 MP:269,988/270,988

 --------


あ、MPが1000減ってる。原資は所有者のMPか。

1Kg/100MPって、よく考えて見れば結構な消費量だけど、対価がわかれば、ちょっと安心だ。


「じゃあ、食料は、お肉やお魚と、野菜や果物をたっぷり買っておけばいいよね。他には、なにかある?」


「はい、です」

しゅたっと、リーナが手を挙げる。


「リーナ君」

「お肉、です!」


びしっ。チョップを額にカマしてみた。


「い、痛いですー。なにをするのです!」


両手で額を抑えて、クビをすくめるリーナ。


「その話は、今終わったところだろ」

「重要な案件なのです! 大事なことは2回言うの、です!!」


だから、そういうのどこで覚えてくるんだ。


「えーでは他には」

「はい、です」

しゅたっと、リーナが再び手を挙げる。


「……リーナ君」

「おに……じゃなくて。武器が欲しいです」

「ああ、そういえば壊れたままだったっけ。じゃあ武器も買いに行こうか」

「はい、です」


うーん、武器か。お金足りるかな。予算は金貨8枚くらいかな。


「スキル構成からしたら短剣かな」

「短剣でお役に立てますです?」

「もちろん。いずれは忍者かな」

「ニンジャ? ニンジャって凄い、です?」

「凄いよ。ムラマサブレードでバッタバッタと……はっ」


まずい、リーナに冗談は通用しないんだった。なんかきらきらした目でこっちを見てるよ。


「ムラマサブレード……」


あ、いや、ムラマサブレードは売ってないんじゃないですかね。


「ええ~……」


ああ、しおれていく。


「いや、ほら伝説のブレードだし、今すぐは手に入らなくても、リーナが頑張っていればいつかは手にはいるかも、よ?」

「そうなのです? 頑張るです!」


ふんっといった感じで小さくガッツポーズするリーナは可愛いけど……ちょろいな。


「じゃあノエリアには、魔法の発動具がいいのかな? それより魔導書を手に入れないと、使える魔法が増えないか」

「魔導書も高レベルのものは大変高価だと聞いています」


「そうか。じゃ当面適性のあるものだけにした方がいいのかな。ノエリアって適性どうなってるの?」

「はっきりとは……」

「じゃ、それも調べに行こうか」

「はい」


ん?でも魔法の適性って、どうやって調べるんだ?

ギルドでハロルドさんを捕まえて聞けばいいか。


「あとは懐剣を頂ければ」

「懐剣? わかった。とりあえず普通の短剣になるかもしれないけれど」


「ムラマサブレードは譲れないの、です」


なに言ってんだか。


「じゃあ、明日は、ギルド行って、できたら魔法の適性を見て、武器屋で武器や鞄を購入して、最後に食料品店でお肉とかお魚とか野菜とか買ってこよう」」

「「はい(です)!」」


  ◇ ---------------- ◇


翌朝。ノエリアが朝の準備に抜け出していったのをきっかけに、早く目が覚めたので、ステータスの調査と整理をしてみた。


 --------

 カール=リフトハウス (10) lv.23 (人族)

 HP:5,472/5,472

 MP:270,988/270,988

 SP:0

 

 一般常識(日本)

 めっちゃ幸運

 交換

 

 認識 ■■□□□ □□□□□

 祝福 ■■■■□ □□□□□

 

 使徒(シールス神)

 カール=リフトハウスの加護

  成長速度UP x 40

  取得 x 2

 --------


しかしこのMP、人には見せられないな。どうにかならないかな……と考えた瞬間


(ステータス擬装を有効にしますか? Y/N)


は? ステータス擬装? なにそれ。

どうやら、使徒には、使徒だということを隠すためにステータス擬装というサブスキルがあるらしい。

これを利用すると、鑑定等で見られるステータスを擬装できるらしい。もちろんYだよ、Y。


レベルは、そうだな、12くらいにしておくか。色々やらかしちゃってるから、あんまり低いと疑念を抱かれそうだし、ちょっと高いくらいで。


 --------

 カール=リフトハウス (10) lv.12 [23] (人族)

 HP:140/140 [ 5,472/ 5,472]

 MP:312/312 [270,988/270,988]

 SP:0

 

 [一般常識(日本)]

 [めっちゃ幸運]

 [交換]

 

 [認識 ■■□□□ □□□□□]

 [祝福 ■■■■□ □□□□□]

 

 [使徒(シールス神)]

 [カール=リフトハウスの加護 成長速度UP x 40 取得 x 2]

 --------


まて、全部見せられないじゃないか。何にもないと流石にまずいよなぁ……子供で活躍しようと思ったら大抵後衛気味の能力だろうけど、俺何にも魔法が使えないし。

そういやリンドブルムを倒したペルムートってなんだったんだろう。


 交換

 --------

 生活魔法同様特殊な体系を持つ魔法で一般には知られていない。

 解放

  ペルムート (2/21)

 --------

 

 ペルムート permuto

 --------

 交換魔法。複数対象可。対象の防御力無視。

 自分のMPと対象のHPを等価交換する。

 通常の対象位置は自分を中心にして半径5mの円内。

 

 クールダウン:21日。

 --------


おお! 俺のMPがアホみたいにあったおかげで、リンドブルムのHPを全部交換できたってことか。

俺のMPは加護のせいか、凄い値になってるし、魔法が使えないため使い道がないから、これで俺TUEEEEが……クールダウン21日?


例の図書館で調べたところによると、この世界の1年は336日、1年が4期に、1期が4月に分けられている。つまり1月は21日で衛星の満ち欠けに対応している。

なお、1日は24時間だ。


しかし、1ヶ月に1回しか使えないのかよ……TUEEEEできぬではないか。


しかたない。ついでに、いままで曖昧だった祝福をチェックしてみた。


 --------

 祝福

  加護を与える。

  加護を与えた人数が、10 30 70 150 310 630 1270 2550 5110

  毎にレベルアップします。

  

  成長速度UP:level x 10

  MP共有:加護を与えた人とMPを共有できる

 --------


現在レベルが4だから、成長速度UP……よんじゅうばい?

なにその異能。2年で人の一生を駆け抜けるってこと? 一気に老けたりしないよね? でも、なんで急に?


……なるほど。

自分だけの時はレベル1で再計算がなかったけど、リーナの祝福が発生したことで、成長速度UPx10で20名分になって、レベルが2に。

レベル2で再計算され、40名分になって、レベルが3に。

さらに、レベル3で再計算され、60名分になっていたところに、ノエリアの祝福が発生したから、90名分になってレベルが4になったってことか……なんだか詐欺みたいだな。


それにしてもスワンプリザードの討伐数は749匹だから、実際は、29960匹の討伐にあたるんだよね? レベルアップ前があるにしても、20000匹分くらいにはなるわけで。それでも lv.16くらいまでしか上がってなかったって、しょっぺー、スワリザしょっぺーよ。人気ないのも当然だな。


後はMP共有か。よく分からないが、もしこれが、俺のMPをノエリアやリーナが使えるものだとしたら、俺のMPを使ったネトワヤージュとか、どんなことになるのか試してみたい気はするな。


しかし、いつまでたってもSPが0なんだよなー。俺も新しいスキルが欲しいんだけどなー。


「ご主人様?」


ノエリアが俺が起きたのかのぞきに来た。起きてるよーというつもりで手を振った。


「お食事の準備はできておりますから、いつでもいらっしゃってくださいね」


はいはーい。

さて、ご飯を食べたら、ハロルドさんを探しにギルドに向かおうか。


以下のような史的な設定は、文章が非常に分かりにくくなったので、採用しませんでした。


「1日(自転周期)は16テトル。もとは、日時計を利用した円を昼夜半分にカットしたあと、出来た領域を1/2にしていって、適当な長さにまでカットしたところで決められたらしい。

それ未満の分にあたるような単位は特になく、作業などはテトル単位で行われる。長閑(のどか)だねぇ。一応必要になった時は、1テトル1/2とか1テトル3/4とかそんな感じで間に合うようだ」

いずれリライトするようなことがあれば、分かり易く表記できる方法を考えるかもしれません。


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[気になる点] 誤字報告がオンになってないのでここに書いておきます。 > 「今、米って行った?」 言った
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