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001 プロローグ

一度はすなる転生記といふものを、我もしてみむとて、するなり。

それの年の十二月の二十日あまり三日の日の戌の時に、門出す。

そのよし、いささかにものにかきつく。


スタンダードな転生物で日頃のストレスを発散しようと目論んだ作者。

果たして旅の結末は。


2017/01/25 改稿


気がつけば白。白だけの世界。

少し過ごしただけで、頭がおかしくなりそうな空間だ……


「目覚めよ、上家あげうちかおる」


不意に声が響いたかと思うと、耳に優しい鈴の音が聞こえてくる。

それはまさに天上の音楽。

音の方向を見ると、白き衣をまとった光り輝く女性?――声は女性っぽかったけど――が近づいてくる。


なんだ、この茶番は?


確かさっきまで、新プロジェクト成功の打ち上げで、ゴルフコンペ中だったよな?

7番ホールで会心のあたりのドライバーショットが、なぜかOBゾーンに飛び込んだにもかかわらず、実に都合良く岩でキックして、420ヤード地点まで転がった。

なんだ、こいつツキまくりやがってとフェアウェイで散々はたかれたあと、ピッチングを振り抜いたらそのままカップインして……アルバトロスなんて、生で初めて見たよ。

で、そのボールをカップから取り出したところで、何か凄い衝撃が。


スタンガンで眠らされて、サプライズ?

いや、いくら悪ノリが酷いって、そこまではやらないよな、普通。


しゃなりしゃなりと近づいてきた白女が――あ、裾ふんで転けた。

……動かないぞ。大丈夫なのか?


あ、立ち上がった。

何事もないような顔で、そのまま歩いてきた。


「……あの~」

「なんじゃ」

「鼻の頭が赤いよ」

「っ!! 忘れて!!」


ガイ~ン!!

杖のようなものが高速で側頭部に激突すると、目の前が白から黒へと変化した。



  ◇ ---------------- ◇


「……起きて。起きて下さい」

「……ん、あ?」


目を開けると、涙目の子供?の顔。あと、頭痛い。


「はー、よかった。ここでもう一度死んじゃったら、どうしようかと思いました」


まて。……もう一度?


「はい。雷に打たれて即死でした」

「……いや、こうして話してるし」

「あ、申し遅れました。私、女神のシールスと申します」


は? めがみ? このちびっこが?


「今、何か失礼なことを考えましたね」


ぎくんぽ。


「……いえ、そんなことは」

「そうですか? それでですね……」


シールスとやらの話を総合すると、神様というものは世界の管理者で、一柱の神様が、それぞれ複数の世界を担当しているらしい。

ある世界で死ぬと、同じ神様が管理している別の世界に、可能な限りすぐ転生させられるらしい。だから魂の総量は一定だけど、ひとつの世界に着目すれば人口の増減があるってことだ。


そんな中、ある世界を発展させるために、そこよりも進んだ世界から記憶を持ったまま転生させることが、極々希に起こるらしい。

あなたの世界にも、ナザレのほにゃららとか、レオナルドなんとかとか、いたでしょ? って言われた。……そうだったのか。


しかし、俺には、そんな高度な文化的または科学的素養なんかないと思うんだけど、何故?



「あなたは、固有スキルをふたつもおもちな珍しい体質なのですが、そのうちのひとつが、”めっちゃ幸運”という希有なスキルなのです」

「何幸運?」

「”めっちゃ幸運”です。大学受験の時、合格圏内の学校を全部落ちたり、絶対うからないと言われた大学に合格したりしたでしょう? 変だと思いませんでしたか?」

「……まあ、多少は」

「今回、雲もないのに雷に打たれたりしたのは、全部そのスキルのおかげです」


まて。全然幸運じゃないものが含まれているような気がするんだが。


「幸運というのは、本来起こらないような確率の事象が、高確率で起こるようになることです」

「つまり、その結果が良いことだとか悪いことだとかとは無関係?」

「それは主観の問題です」


絶対治らない難病が治癒したりするかもしれないが、滅多に見られない難病に罹ったりするわけか? いらねぇよ、そんなスキル!


「で、そのめっちゃ幸運が発動したせいで、記憶を保持した転生者として選ばれたってこと?」

「おそらく」

「……スキルって破棄できる?」

「普通はできません」



くー、身も蓋もない。

しかし、この話がヨタでもなんでもないとしたら、なるべく良い条件で転生して、生存確率を上げないとダメだな。めっちゃ幸運がダメな方に効果を発揮したりしたら、あっというまに次の人生まで終わりかねないし。



「俺がここにいる理由は分かったけれど、次の転生先で多少の利便は図って貰えるわけ?」

「まあ、ある程度でしたら」

「ある程度の文明がある世界で、それなりに不自由のない身分で、ついでに、ある程度自由に行動できるけれど、充分寿命が残っている感じかな」


シールスは、難しい顔をしながら、なにか空中を操作している。


「あー、一人だけ可能な方がいらっしゃいますね」

「え?」


つまり、0歳児からの転生の場合は、転生する魂の個数に併せて受精させればいいので、困ることはないそうだ(世界レベルで考えれば、Hなことをしている人の数はスゲー数なので……)。

人口増加中の世界があると、他の世界では魂が足りなくて不妊症が増えるくらいらしい。

しかし、途中の年齢と言うことになると、そこにすでに存在している魂をどうするのかが問題になるらしい、そりゃそうか。


そんな仕組みだとすると、転生する先にいるそいつって、大丈夫なんだろうか?


「ええ、大丈夫のようです。よかったですね」


にっこり笑いながら、シールスはそう言った。……笑顔が良すぎる。なんだか怪しいな。


「まあいいか。それで、なにかこう、便利なスキルとかもついでにくれたりする?」

「ま、まあ、ある程度でしたら」


「絶対死なないスキルとか、何でも作り出せるスキルとか?」

「そんな大げさなものは無理です。最初から死んでるアンデッドにでもなります?」


アンデッドかー、どっかの支配者とかそれも悪くないかも知れないが、ものが食べられないのは嫌だな。


「……いや、やめとく」

「そうですか」


「そうだなぁ、絶対が無理なら、危険を避けられるようなスキルとか、あと、お金が無くても生きて行けそうなものがあれば」


「わかりました」


目をつぶってなにかをもにゃもにゃと唱えると、俺の体が微かな光に包まれた。


「認識のスキルを与えました。それでは転生しても?」

「は?」


まて、認識? なんだ、それ? てか、俺が選ぶんじゃないの?


「何かを認識する的な?」

「まんまじゃん! そんなんで大丈夫なのかよ!」

「智は力、ですよ?」

「いますぐ変更を要求する!」


「あの……一度与えたスキルは変更できません」

「な、なんですとー? じゃ、別の有用なスキルは?」

「すみません。一度に1つ以上はちょっと……」


くっ。しかたない、なにかこう便利な……そうだ、アイテムボックス的な何かと、転生直後から使える、ひ弱な現代人が生き残るための便利アイテムを……


「仕方がありませんね。なんとかしましょう」

「あと……」

「まだあるんですか?!」

「えー、シールスが適当にスキルを選んだくせにー。本当は俺が選ぶんじゃないの?」

「うっ。……は、話だけは聞きましょう。あと、一応女神ですから呼び捨ては止めた方が」


どうやら、本来はいくつかのスキルを呈示して対象に選ばせるものだったようだ。図星かよ。

しかしまあ、アイテムもくれるって言うし、しょうがないからシールス様って呼んでやるか。


その代わり、常勝無敗的な何かや、矛盾の盾矛みたいな何かを是非。


「無理です」

「ええ~?」


「では、準備はいいですね?」

「ま、待って、待って。記憶を持ったまま転生するってことは、何か使命みたいなものがあるんですか?」

「使命、ですか。うーん……」



なんだか難しい顔をして、眉間にしわをよせ考えてる。

おいおい、ここでテンプレのごとく、まおーを倒せとか、世界を救えとか言われたら、超強力な魔法のひとつでも貰っとかないと……


「特にありませんね」

「ないの?!」


何とも拍子抜けだけど、じゃあ何をすれば良いんだよ。


「しかたありませんね。では私の使徒にでもなって、世界の発展に僅かながらでも寄与して貰いましょうか」


使徒キター。まあ、色々無理も聞いて貰ったし、そのくらいでよければ。


「では使徒として、私の祝福を贈りましょう」

「祝福?」

「はい」

「それってどういう……」


またもや、目をつぶってなにかをもにゃもにゃと唱えるシールス様。それにあわせて、俺の体が微かな光に包まれる。


「これで私の祝福が……祝福?」


どうした?


「ああ! しまった。祝福じゃなくて加護でした!!」


え?


「はあ……困りましたね。でも黙ってればバレないですよね!」

「まて。バレないって何が……」


なにか間違えたような顔をしてぶつぶつ言っているのを、ジト目で見られていることに気がついたシールス様は。


「あ、もう時間ですね。ではそういうことで~」



突然足元から、バンっと大きな音が聞こえたと思ったら、床がなくなっていた。


というわけで、一度くらいは王道転生内政物を書いてみたくて始めてみました。

ぼちぼち進めていきますので、長い目で見ていただければ。



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