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【人類滅亡まであと43日】 中村紀洋 「内村ああああッ! オマエえええ今日の盗塁ッ!」

飲み会で目についたのは、まあ中村君かな。



「内村! オマエ今日の盗塁ッ!」


「ハッ!

ウロチョロしてスミマセンでした!!!」























































「…あれ、積極的で良かったで(ニッコリ)♪ 」


「あ、ありがとうございます!」


「ただな? ランナーが塁に張り付いててくれた方が一二塁間は広くなる。

オマエをホームに返す為にもオレはヒットを打ちたい(ニッコリ)。」


「中村さあん!」


「オマエの折角の出塁を無駄にする訳にはイカンから…

口うるさい事ばっかり言ってゴメンな(ニッコリ)♪」


「中村さああん!!!!!」



キヨシも高田GMも見かけ程酔っていなかったのか、遠目からこの遣り取りを見ていた。



「ワイさん! 流石は中村選手ですね!  

バッティングフォームだけじゃなくて心まで綺麗です!」


『ああ、そうやな。

オマエ、フォームを重視するタイプか?』


「ええ。 フォームが綺麗だから成績が上がる訳でもないんでしょうけど…

大選手はみんな美しいフォームです。」


『一理あるな。

オマエの言う通り≪加護≫はフォームの美しい選手に使うべきや。』


「ですよね!

あ、でも中村選手に加護を与えるのは確定として…

残りの一人は誰にしますか?」


『ワイもオマエと価値観が似てるかも知らんな。

プレイスタイルと精神性が美しい選手に加護を与える。

幸い、ここにはスタメン全員揃っとるしな。』


「はい! まさか飲み会に参加できるなんて思ってませんでした!

あ、ワイさん!  番長居ますよ!  あっちに番長居ますよ!

デュエット相手探してるみたいです!」



『行って来い。

ワイは選手の様子を見てくる。』



「え、でも…

他にも女の人がいっぱいいますし…」



『アホ。

あんなスナックの姉ちゃんなんかより…

オマエの方が100万倍いい女や。』


「わ、ワイさん///」


『明日から、いや日付の上では今日やな。

今日からはずっと休む間のない修羅場や。

今くらい楽しんどけ。』


「はい!  じゃあ番長のところ行ってきます!」





ワイが選手を眺めていると、バルディリスが声を掛けてきた。


「シャチョサン ノミマスカ?」


「おお、バルさん!  阪神の頃から見とったよ!」


「アリガトゴザイマス!」


「ワイ、西宮市民やから。 バルさんも何回か見かけとるよ♪」


「Oh, ¿no es local!  ワタシニシノミヤダイスキデス!」



こんなに陽気なバルディリスはオリックス時代以来や。

チームの雰囲気が好転してるのが上手く伝わってくれてるか。



バルディスの注いでくれたビールを半分だけ飲む。




アルコールは原則的に摂取しない…

一秒でも長く頭脳を動かしておく必要があるからな。


おつまみ系で栄養のありそうなものをよく咀嚼して飲み込む。

トマト…  高級店だけあって物は悪くない。

セロリやパセリも食べておく。


長丁場や。

栄養の欠乏による思考力低下だけは避けたい。


石川がやや飲み過ぎていたようなので、ホステスにフォローするように頼んでおいた。

店のママと雑談の機会が持てたので、アルコールを残させないように持っていくように指示を出す。

ママはイントネーションから地元民と判断。

スパイの可能性も疑うが、今の横浜に対してどうこう工作する気はなさそうである。



今日の試合開始まで、あと17時間。

選手たちには仮眠以上の睡眠を取らせる必要がある。


ただ、高田GMが何人かのスタッフに小声で指示を飛ばしている所を見る限り。

ワイの出る幕はなさそうである。



午前3時。

キヨシは赤ら顔であったが理性を全く失ってない。

ママと何事かを小声で話し合っている。


選手時代はそこまで指揮官に向いたタイプの男やとは思わんかったが…

呉下の阿蒙とは良く言ったもんや。

…いや、違うな。

キヨシは健全に年齢相応のものを積み重ねてきただけ。

ワイが大人になれてへんだけやねん…



「ワイさん、今日はありがとうね。」



突然、背後から名前を呼ばれる。

このソフトで紳士的な口調!?



『た、高田GM!  部外者がお邪魔しております!』


「ははは。 今日はいいじゃないですか、『今日』は。」


何故、この男がワイの名前を?

いや、勿論南場オーナーや球団関係者から聞いたのやろうが

それにしても!

【ワイ】とフルネームで名前を記憶しているとは…



『以後はお邪魔致しませんので!』


「ははは。  邪魔だとは思ってませんよ。」


『いえ、恐縮です。』




数秒、無言で見つめあう。




「ワイさんは…

我々を何としても勝たせたい…  

でも横浜ファンではない。」



『贔屓は阪急ブレーブスと心に決めておりますので。』



「ははは、義理堅い人だww

その分だと、阪神にも肩入れしてないでしょww

西宮の人なのにww」



『子供の頃から、変わり者やと…

みんなから言われて来ました。』



「ははは。

お互い変わり者は肩身が狭いですな。



で?

そのワイさんが、我々横浜に肩入れしてくれている…


喜んでいいんですかね?」



『いえ。

ワイは…  

元々は中畑監督個人を応援しておりました。

今は、事情があって横浜さんの日本一を後押しする立場にあります。』



「…。」



『申し訳ございません。』



「空中戦はやめて下さいね?

私はスポーツはクリーンであるべきだと考えております。」



『GMの仰る通りです。

以後は極力態度を改めます。』




「…。

わかりました、もう止めて下さいね?」



『…。』



「ワイさん、あなた…

誰かに脅されている?

いや違うな…  あなたってそういうタイプじゃあない。

こういう義理の果たし方をするタイプの人でもない。」



『…。』



「なるほど。  理解しました。

現時点では、ワイさんは何も言えない。

ということですな?」



『ありがとうございます。』



「もしも事情が変わったら御相談下さい。

流石に私は動けませんが、弁護士の知人は多いので。」



『お気遣いありがとうございます!』



「それではワイさん、私はこれで。

今日のお気遣いには感謝致します。


それでは!」



ワイは無言で高田GMの背中に頭を下げる。



アカン、切れ者やとは知っとったが…

ここまでとは…

GM相手の駆け引きは、ワイ如きでは絶対に不可能や。

あの男、わずかなヒントでワイの策を完全に見破っていた…


本当はこの後中日潰しの作戦を展開する予定やったが…

当然、保留や。

今後、空中戦を仕掛けた場合…

高田GMを真正面から敵に回すことになる。

幾ら勝つ為とはいえ、ワイもそこまでアホやない。




その後、ワイとキチガイは広島駅側の東横インで仮眠を取った。



『加護は使い切った。』


「う~  眠いです~」


『おい、このペンライトは返さんでええんか?』


「ルール変更に備えてワイさんが持ってて下さい~

あ~、お酒ってこんなに後から来るんですね~」


『何や?  オマエ酒がダメな人か?』


「体質的には行けると思うんですけど…

本当は20兆歳になるまで飲んじゃだめなんです~」


『なんかゴメンな。』


「いえ。

私が調子に乗っちゃっただけなんで…」



その後、キチガイに水を飲ませて寝かせる。

この様子じゃ、明日は使い物にならない可能性が高いな。





そしてワイはキチガイの台詞を何度も頭の中で繰り返す。


【ルール変更に備えてワイさんが持ってて下さい~】


この一言を聞き出せたのが、今日の最大の収穫や。

ルールは、ワイにとって不利なタイミングで途中変更される可能性が高い。


再認識。


ルールは最悪のタイミングで捻じ曲がる。

いや、あのオッサンは最悪のタイミングを見計らって動く。


それは確実…


もっとも、今のワイに必要なのは…

あのオッサンが本性を剥き出す所まで勝ち続けることだけやが…





結局、キチガイの目が覚めたのは15時過ぎ。


「あれ!? ワイさん待ってくれたんですか!」


『ああ。 置いていくのは可哀想やからな。』


「ワイさん///」


コイツとは、戦略構想を共有しておく必要がある。

それはコイツが味方を貫くとしても、敵方のスパイだったとしても

どのみち打って置かなければならん布石や。



チケットは「TOSHIBAシート 正面砂かぶり」の最前列(8000円)を二枚購入。

ええ席や。

しばらくは無いとは思うが、広島が優勝に絡むような状況になれば…

とてもじゃないが、この席には入れんかったやろうな。




「先発は三浦・ジョンソンですね。」


『ああ。 ローテ通りではあるな。

どうや?  横浜ベンチは昨日の酒、残ってそうか?』


「筒香選手、内村選手がやや苦しそうです!」


『そら、昨日あれだけ飲んでたらな…』


「ところで、もう一人は誰にしたんですか?」


『ん?』


「加護ですよ!  

中村選手には昨日加護を付与出来ましたけど

もう一人は誰にしたんですか?」


『ああ、心配せんでも

今、その男が出てくるよ。』




その時、スタジアムに怒号が響いた。

奇跡の始まりは、いつやって驚愕からや…

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