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【人類滅亡まであと45日】 闘将・中畑清静かなる復活 「横浜DeNAベイスターズは絶好調です!」  不屈の横浜軍団は首位巨人の背中を僅か24.5ゲーム先に捉えていた!

軍資金は500万円。

キチガイに部屋の掃除をさせてる間に用意した。

これ以上の金額を捻出することは、ワイには不可能や。


「…ワイさん。

このお金は…  

失礼ながら、ワイさんにとっては相当な大金だと思いますが。」



『安心せえ。

悪いことして稼いだ訳やない。

合法の金や。』



「それは、このお金がクリーンであると断言出来る…

ということでしょうか?」



『合法や。

出所もヤクザ絡みではない。』



「私はクリーンな手段であるか否かと質問しています。」



『…合法的に取得した金や。

支払い元は、暴力団やそれに準ずる組織ではない、と断言する。』



「それにしても半日で500万円は…

流石に…

私の持つ資料には日本の平均年収は408万円だと記載されています。

ワイさんは半日で一年分の労働者賃金を上回る金額を用意されたことになりますよね?」



『なるな。』



「疑義が生じるのは当然ではありませんか?

せめて、お金の出所を教えて下さい。」



『言えない。』



「それは人には言えないような手段を用いた、と解釈して宜しいのでしょうか?」



『契約上、現時点では他言出来へん。』



「…。」



『疑う気持ちはわかる。

倫理ではなく仁義の問題やと解釈して欲しい。』



「…わかりました。

暫定的にワイさんを信頼することにします。」



『ありがとう。 そう言ってくれて嬉しい。』



「…。」



『このうち100万は…

明子、オマエが持っとれ。』



「あんたぁ!!  お金なんかいいんだよぉ!!!

もう危ない橋を渡るのはやめてよぉ!!」



「あの、ワイさん。

この女性は?」



『ワイの元嫁や。

安心せえ、ちゃんと籍は抜いてある。』



「また3人で一緒にくらそ!!

それでええやん!!!

ね!?」



『ユタカ、母さんをちゃんと守ってやるんやぞ。』



「お父さん…  

また、何かやるの?」



『そうならへんように持っていくつもりではいる…

ええな?  オマエが母さんを守るんやぞ?』



「おとう…

はい!」



『誰かに何かを聞かれても、ワイの事は知らんって答えろ。

ええな?』



「あんたあ!!

そんなのやだよお!!!」



『これは命令や。

そうせえ。』


「うわあああああああああ!!!!!!!」



これでええ。

これで家族は…



『ユタカ…  パソコンは解るか?』



「え? うん、学校の授業でもやったし。」



『そうか、じゃあ家に帰ったらこのメモに書いたページを登録しといてくれ。


おい、登録すること何て言うんやったけ?』



「ワイさん、ブックマークです。」



『おう、それそれ。

ええか、家に帰ったら必ずその紙に書いたページをブック… せえ。』



「わかったよ、お父さん。」


『オマエの分だけやなく、母さんの分も頼む。』


「え? 

…いや、わかった。

そうする。」


『いつもスマンな。

その登録が終わったら、周りの奴らにも登録させろ。

オマエが助けたい相手だけでええ。』


「何? これ、またヤバい話なの?」


『ヤクザ絡みではない。 

ええな。

オマエの救いたい奴に一人でも多く声を掛けろ。

実際に登録するかせえへんかは、そいつの勝手や。』


「…わかった。」


『アホな親父でごめんな。

オマエはちゃんと幸せになってくれ。』


「…お父さんも。」


『ははは。  ワイはいらんてww

もう、そんな歳でもないしな。』




そして。

明子がぐずるので、ユタカに持って帰らせた。

もう会うこともないやろ。









「その…  ワイさん。」


『さあ、ここから本番や。』


「…はい。」


『その前にオマエに質問がある。』


「わ、私にですか?」


『オマエは何で人間の肩を持つ?』


「…人が幾ら罪深いとは言え

滅ぼされる程のものだとは思わないからです。」


『そうか。

まあ、それが本音なんやろうな。


ワイは今、あのオッサンと勝負をしとる訳やけど…

オマエが中立を守ってくると信じてええか?』


「…いえ、それは出来ません。」


やはり、そこまではムシが良すぎるか…






















































「私はワイさんの味方ですから!

人類を守ろうとするワイさんに味方します!」








『…。



それは。

オマエもあのオッサンの敵に回るということやぞ?』



「覚悟の上です!

私は自らの意志で神に背きます!」



『…そうか。』



旅支度を整える事に集中するフリをしながら、ワイはキチガイの意志を慎重に確認する。


修羅場では…

それも最後の最後の土壇場では…

100%の味方でないものは全て敵となる。

背中から斬られる怖さはワイが一番知っとる。



「ワイさん。 行先は広島ですか?」


『いや、横浜や。』


「まだ広島でのビジター戦が2試合残ってますが…」


『キヨシが復活せんことには何ともならん…』


「しかしDeNAからは、次は即刑事告訴と釘を刺されてます!」


『当然、向こうはそう言うやろうな。

せやから、少し搦め手から行く。』


「そんな、搦め手って…」


『普通のやり方では横浜を日本一には出来へん。』


「ワイさん、ひょっとして!」


『安心せえ。 犯罪行為は行わへんし、ヤクザも使わへん。

それは約束する。 』


「…はい。

ワイさんを信じます。」



その足で電話を復活させに行く。

キチガイが強く勧めたので機種変先にはスマホを選ぶ。

プランは無制限。



「設定完了しました!

これで【小説家になろう】に投稿出来ます!」


『…オマエ器用やな。』


「まだまだ14兆歳ですから!」


『そうか。』



思い返せば、ワイはその頃から不器用やった。

もしも、ワイにコイツの半分の愛想や要領があれば…


「…ワイさん?」


『いや、何でもない。

ここからは勝つことだけに集中させてくれ。』


「はい!

頑張りましょう!」



新幹線に乗る前に公民館に行ってオバちゃんと連絡先を交換させて貰う。

この人は信用できる、とワイは最初から知っていたからや。


少なくとも、味方を増やす努力をしない者は絶対に勝てない。

これは真理や。

オマエらもワイを見とったらそれは解るやろ?





結局、新大阪を出たのは15時。

記者会見にはギリギリ間に合う計算や。



新幹線内では座席に座らず通路に腰掛ける。



「あのどうして席に座らないんですか?」


『オマエの能力をちゃんと聞いておく為や。』


「別に座席でも…」


『いや、一応落ち着いて話したいからな』


「そうですか? 

まあ、ワイさんがそう仰るなら…」



これから球界が大荒れする事は確定している。

下手をすると2日後からパニックが始まる…

そんなタイミングで、不特定多数の前で不用意な会話を晒したくない。



「私の能力は〈加護〉です。

この加護ライトで照らされた人間は、本人が持つ力を最大値まで発揮することが可能となります。」



そう言って、キチガイは小さなペンライトのようなものを取り出した。



『ふむ。

それはリミッター外せるということか?』


「いえ。  流石にそれは人道上出来ませんが。

対象者はフルコンディション状態になります。」


人道か…

キチガイは黙ってペンライトをワイに渡した。


『ワイが使ってええんか?』


「私は野球にそこまで詳しくありませんので。

気を付けて下さい。

〈加護〉が使えるのは2人だけですよ。」



そう。

今朝の時点でブックマークは2つだけ。


いや、コイツの能力がこの勝負に異常なまでマッチしてることを考えれば…

2人でもありがた過ぎる位や。

あのオッサンが警戒する気持ちも理解出来る。



「それと、この能力は神様も2人分使用してきます。」


『あのオッサンが2人で留めると思うか?』


「いや… それは…  

天界での評判にも関連することなので…」



コイツのこの発言で確信する。

ワイが勝ち切る直前までは、あのオッサンも2人にしか〈加護〉を使って来ない。



「誰に使いますか?

やはり中村選手でしょうか?」



中村紀洋。

悪くはない。

この能力の使用対象としては適任やろうな。

渋谷時代の主人公補正にシドニー五輪時代の攻守無双状態が加われば…

爆発的な原動力になるやろうな

何より、バッティングフォームを模倣する程に監督・中畑清をリスペクトしている点も好ましい。

(例えそれが上司へのリップサービスやったとしても、上司にそこまで配慮する意思はあるということや。)



『そうやな。

中村君は素晴らしい選手や。

彼が居らんかったら横浜日本一は難しいやろうな。』


「…。」


『心配するな。

まずはキヨシを激励するのが先や。』


「滅亡の話は…」


『いや、それは今回の勝負にとって反則やな。

あのオッサンも、ワイが野球という枠組みからはみ出さへんことを前提に勝負を受けた筈や。』


「…確かに。  

ワイさんの仰る通りだと思います。」




言ってる間に、やっと静岡に入る。

ここからが長いので食事を腹に貯めておく。


キチガイはたまごサンドを一枚だけ口にする。

ワイに遠慮してるんか?


横浜に着くまで、スマホの使い方を練習しておく。

なるほど、要するにこれは携帯電話とパソコンをくっつけたような道具やねんな?


「カメラ機能もあります。」


そう言って、キチガイは写真や動画の撮り方を教えてくれる。



『今時の子は器用やなあ。』


「えへへ、13兆歳になった時に親におねだりして買って貰ったんです!」


『そうか。

親御さんのこと、大事にしてやってくれな。』


「はい!」


明子、ユタカ…

ワイは最後まで人並みのことしてやれんかったな。




横浜に着く頃には、スマホの使い方は大雑把には理解出来ていた。


特に『音声を録音する手段』を獲得出来たことは大きい。

経験上、これが一番の武器になる。



中畑清の会見は後30分で始まる。





2度目のDeNA球団本社。

ワイはわざと警備員の前に体を晒す。



「あ!  あの男は!  

おい、本部に連絡だ!!」



予想通り、警備員は警戒態勢に入る。



「ワイさん!

どうして表玄関から来ちゃったんですか!

搦め手って言ったじゃないですか!!!

警備の人に見つかっちゃいましたよ!」



『いや…

見つけてくれんかったら、入れなかったやろうな…』



警備員がワイを睨みながら無線機に叫んでいる。

上の階から増員が二人…



「ワイさん!  大事になってますよ!」



気が付けば通行人が輪になってワイらを囲み。

本社ビルの全ての窓から視線が寄せられていた。



「ああ、もう無理ですぅ…」



いや、逆やな。

この状況になれば、恐らく…










「あらあら、お久しぶりですね。」




おはD。




『御無沙汰しておりました。』




ワイは深く頭を下げる。




「こちらこそ、あんなに話が大きくなってしまって…

ずっと心苦しく思ってたんですよ。」




勿論、目は笑ってない。

口先の詫び言で騙されるような女なら、この場所には居ないだろう。




「そちらの方は娘さんですか?」



『いえ、知人の子供です。』



「あらあら、ごめんなさいね♪

仲が宜しいように見えたから。」



『いえ、恐縮です。』



「弊社の中畑とお話をされたがっていると伺っておりますが。」



「南場社長!  ワイさんはこの前もお土産を持ってきただけなんですよ!

それをいきなり警察沙汰なんかにして!!」



キチガイが騒ぐので、手で合図して制する。



『失礼しました。

まだ子供なので。』


「いえ、行き違いとは言え心苦しく感じております。」



言葉や表情とは裏腹に…

南場オーナーの気配が、警戒を主体としたものに変わる。


そらそうやろ。

もうこの段階で通行人の関心は南場オーナーに移っていたんやから。

警備員の静止を無視して皆がオーナーを無遠慮に撮影しだす。

ワイの若い頃はカメラマンなんて堅気の商売やなかったんやけどな…

まあ、ここまでは計算通りや。

勿論、オーナーにはワイの思考を全て読まれている。




『お願いできた義理ではないのですが…』



「どうぞ。」



オーナーが警備員に何かを指示しながらワイらを招く。



『申し訳ありません。』



ワイは周囲の警備員に対して深く頭を下げる。

よく見れば、見覚えのある顔だった。

間違いない、この間ワイと揉み合った男や。



『この間は大丈夫やったですか?』


「今になって筋肉痛が来てます。」


ワイがこっそり話しかけると男はそう答えた。

表情は崩さないものの、出来る限り優しい回答をしようと気を使ってくれている様に見えた。


背中を向けて歩いている南場オーナーはワイらの様子を玄関ガラスの反射ごしに静かに観察している。

なるほど、確かに卓絶している。

この人が男に生まれていれば、意外に野球選手になっていたのではないか、と思った。



ワイは警備員に対して免許証を預ける。

向こうも少し迷ったようやが、「畏まりました」とのみ答えてくれた。

本当に、ありがたい。



エレベーターの中では他愛もない話をされた。

子育てがどうとか、結婚生活はどうとか…

いや、違うな。

他愛はあったんやろう。


そして、恐らくは一定の合格点を与えられた。







…だから、ワイは記者会見会場に入れて貰っている。


ワイの前後両脇には屈強の警備員5人。

それも5人全員が柔道出身であろうパワー要員。


記者がチラチラとこっちを見るも、オーナーが通ると一斉にお辞儀を始めた。

何事もなかったように、南場オーナーは記者達と親しげに挨拶を交わしていく。


そして、前方。

ワイの立っている地点から10メートルの場所に。

高田GMに付き添われて中畑清が現れる。

記者達が、疲れ切った表情を見て「あっ」と声を出した程やった。

多分、殆ど眠れてないんやろう。



記者会見と言っても実際は謝罪会見やった。

キヨシは退場処分を詫び、次いで連敗の監督責任を詫びた。

テレビなどで見るような謝罪会見と違って、あまり厳しい突っ込みはなかった。

ただ、余程気まずいのか記者達の言葉数が異様に少なく、それが却って雰囲気を暗くした。




「現在のチーム状況を監督はどうお考えですか。」




一人の記者がやや攻撃的な口調にキヨシに食い下がっていた。

どうも地元の記者がエスカレートしてるみたいやった。


中畑も高田GMも唇を硬く噛んで言葉に詰まる。





「絶好調や。」





気が付くと、ワイはそう呟いていた。

勿論、大声を出したつもりはなかったが、たまたま場が静まったタイミングやったから

結果として、会場中に言葉が響いた。


警備員が無言でワイの腕を掴み、記者達は一斉にこちらを振り返りかけた。




「絶好調です。」




力強い一言に振り向きかけた記者達が慌てて前を向いた。




「横浜DeNAベイスターズは絶好調です!」




そう宣言したキヨシの目には、どこまでも力強さがあった。

一瞬驚いた高田繁GMだったが、すぐに温和な表情となり静かにキヨシの肩に手を置いた。


南場オーナーが優しく微笑みながら拍手を始めた。

何秒かオーナー一人が拍手をしていたが、気が付けば会場全員が…


熱狂的な歓声を挙げていた…。






この日生まれた、このエネルギーを

皆は奇跡と呼んだ。







1、人類滅亡まであと45日(但し、横浜以外のチームがリーグ優勝を果たした瞬間人類滅亡)

2、転生可能なろう民2人。

3、横浜ベイスターズ首位まで24.5ゲーム差

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