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【人類滅亡まであと40日】 激突!!  ワイVS立浪和義

バッターボックスにはユニフォーム姿の立浪和義。

スペシャルサプライズっちゅー話やったが…

どうやら私設応援団は知っていたらしい。

観客席には 『次期監督 立浪さん和義さん』の横断幕も見える。

拍手が鳴りやまない。



それにしても…

久しぶりのマウンドや…


…固いな。

ワイ、こんな所からボール投げとったんか。

我がことながら信じられへんわ。



立浪和義がバッターボックスに入った瞬間。

拍手は鳴りやみ、立浪応援歌メドレーが演奏される。

まずは『ガラスの十代(光GENJI)』からや。

ワイ、この曲ずっと立浪のオリジナルソングやと思ってたけど…

これ元ネタジャニーズやってんな。

初めて知った時驚いた記憶がある。




現役時代と違って…

今のワイが投げれる球は一球だけ。



自ずから選択肢は限られてくる。

問題は投球練習無しで、『それ』を出来るかどうかや…



ワイは大きく振りかぶる。

投球フォームは当然、山口高志リスペクトや。

ああ、懐かしいなあ。

最初は山田のアンダースロー真似しようとして、諦めたんやったけ…

リトルの監督に色々言われたなあ…


体は勝手に動く。

そらそうやろ、子供の頃に何万回もなぞったフォームや。

例えワイが忘れても、あの頃のワイは絶対に忘れへん。



立浪和義、表情は一見リラックスしているが…

全身のバネは全開状態。

恐らく、小一時間体を温めてからそこに立っている。

この男にとって、それだけこの打席は大事なモンなんやろ。



ああ、懐かしいなこの動き。


そうや、そうや。

山口は背が低かったから、こんな風に腕を地面に叩き付けるように…


あ、そうかワイあの頃チビで悩んどったから山口とかもっさんとかに憧れとったんや…


野球やめてから急に背が伸びたんやったな。


立浪、オマエはそんな背丈で偉いなあ。


そして、ワイは腕を地面に叩き付けるかのように振り切る!


みんな、ごめん。


























































ボールは当然、立浪の頭部に向かう。


最も躱し辛く、とっさに反応出来ない箇所。


相手が素人やったら普通に殺せる。


球速もそれなりには出て…




















だが立浪和義、流石に超人。

大きく足を引いてスウェーの体勢から手の力だけでボールを弾き返す。


ワイは振り返らない。

あの弾道ならセカンドの頭上を上手く越してセンター前。



見事や。

君こそミスタードラゴンズの名に相応しい男や。



ワイへのブーイングが起こりそうになるが、立浪が球場を片手で抑える。



立浪和義、表情に感情は無い。

ただ、さっきの微笑みが残っている。

恐らく、ワイはもっと無表情なんやろう。



しばらく。

と言っても数秒間だけやったんやろうが、ワイと立浪和義は見つめ合っていた。


球場のざわつきが大きくなってきたのが合図となって…

ワイは最期のマウンドを降り。

立浪和義は何事も無かったように、にこやかな表情でインタビューを受けに行った。










「おーう!

ワイよ~wwww

オマエは本当に空気読めない男だのーwww

白井君の立場も考えてやれよーwwww」






『白井オーナー、申し訳ありませんでした。』



「いやいや、こちらが急にお願いしてしまったことですから。

ワイさんはピッチャーやられたんですか?」



『はい。

ああ、と言っても子供の頃の話です。』



「ははは、どうりで気丈な訳だ。」



『いえ、我が強いだけです。

この歳になって、やっとそれが弱さやと気づきました。』



「ふふふ。

まだまだワイさん若いじゃないですか。

これからですよ。」



『オーナーにそう言って頂けて…

ありがとうございます。』



そんなやりとりがあった後、皆で試合を観戦した。



ここはナゴドのVIPルーム。

噂には聞いていたが、野球場にこんな空間があるとは…

ワイ、野球って貧民だけが見るスポーツやと思ってたけど、金持ちはこんな環境で試合見てるんやな。

まるでホテルの一室みたいや。


ガラス張りの椅子から下で動く選手や観客を眺めると…

まるで自分が偉くなったような錯覚に陥る。



しばらく、ボーっと選手が動くのを眺めていた。

ここから見える選手達は、どれも同じ大きさの駒に過ぎず…

大柄なキヨシや中村君の姿も他の選手と大差のない存在やった。

それどころか、観客席を歩いている売り子もエリートたる出場選手も、ここから見れば…

まるで…




「ワイよ。

ワシがオマエをここに連れて来た理由が解ったみたいだな。」



『ああ。  

ワイはアホやけど、オマエの言いたいことは何となく、な。』



「たかがナゴヤドームのVIP席でこの風景だぜ?

全ての世界の上に君臨するワシの気持ちも少しはわかるだろ~?」



『オマエ、結構気さくな奴やねんな。』



「そうよ~。

ワシ、かなりフランクよ~。


オマエみたいな貧乏人の部屋にも遊びに行ってやったし…



若手新聞記者のショボい飲み会ともにも顔出したこともあるしね~。

なあ、白井!」



「はい、あの時の思い出は今でも渡邉オーナーと大切にさせて頂いております。」



「あの時の小僧二人が… 

今やセリーグのオーナー様だもんなwww

当時の連中が見たらたまげるだろwww」



「未だに古い馴染みからは、『ブンヤ』と呼ばれております。」



「まあ、そう言って貰えるうちが華だよww」



「はい、神様の仰る通りです。

記者時代の私や渡邉さんを知っている方は、あまり残っておりませんから。」



「あの白井君が今や90前のジジーだからなぁ。」




若き日の白井オーナーには神との面識があったらしく、思い出話で盛り上がっている。

ワイは邪魔をしないように、そっとその場を離れた。



点差は5対2.

横浜が3点のビハインドを背負っている。

回は6回。


何とか危機感を持とうとしてるんやが…

ここは空調も快適やし、おまけにキチガイが冷えたビールを持ってきた。



「ワイさん。

さっきはお疲れ様でした。


ボールぶつけようとしたのはダメですけど。


でも、フォームは格好良かったです。


はい、頑張った御褒美です♪」




『ああ。


いや…


あ、うん。


じゃあ、一杯だけ貰うわ。』







ワイは無言でビールの泡を見つめる。



ワイは頑張っとる。



かなり苦労をしとる。



体も張っとる。



自腹も切っとる。



危ない橋も渡っとる。



かすり傷とは言え、昨日は鉄砲で撃たれた。



それも、人様の為や。



断じてワイの私利私欲ではない。



だから、ワイにはこれを飲む権利が…























































ワイは黙ってビールをキチガイに返した。


皆は密かにこちらを観察していたらしく、一気に座が静まり返る。




「わ、ワイさん。

何か他の飲み物を…」



『ああ、勘違いせんとってくれ。

オマエやこの部屋に文句はない。

むしろ、感謝しとる位や。』




ワイは神と白井オーナーの前まで歩み寄り一礼した。



『オーナー。

この様な部屋に招いて下さりありがとうございました。』



「ワイさん、それは当然の…」



『ですが。


ワイは今、試合途中です。』



「…それでは。

やはり あなたは神様と…」



『ありがとうございました。』




去り際に一瞬神と目が合う。

相変わらず読めない表情やったが、口元が笑ってるように見えなくも無かった。




横浜の逆転勝利を知ったのは、東京に向かう新幹線の中やった。

8回に中畑・中村・筒香・バルディリスが競い合うようにホームランを炸裂させ。

更には9回にも併殺崩れで1点を加えて押し切った。


但し、巨人も勝利を収めた為、首位とのゲーム差は変わらない。

勝因は高橋由伸の攻守に渡る奮闘。

そして、ベンチの空気作りに腐心している原監督の功績も大きい。

この二人の強力なリーダーが居る限り、巨人がこれ以上大崩れすることはないやろな…


そう、この二人が居る限りは、や。





1、人類滅亡まであと40日(但し、横浜以外のチームがリーグ優勝を果たした瞬間人類滅亡)

2、転生可能なろう民8人。

3、横浜ベイスターズ首位まで21.5ゲーム差

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