track4
「何度も言って申し訳ないけど、その仰々しい敬語はやめてもらえると……」
「まさか! 神様とお話しさせていただけるというこの身に余る光栄を受けながら……この程度ではむしろ足りないほどです!」
目を輝かせながらそう言う美青年。ま、眩しい。彼の言うところによると、彼の使った召喚魔法が暴走し予定に無い高位の神を呼び出してしまった――その証拠として普段より多くの魔力が使われ、それで彼は気絶してしまった――そして、私こそがその召喚された神である、とのこと。というか高位の神ってなんだ?
「だから、私は神なんかじゃ……」
「これも神様であるか否かを見極めよ、という試練なのですね! いえ、おっしゃられなくても分かっておりますとも!」
もうずっとこの調子だ。さっきも魔法の存在を疑った私に何やら嬉しそうに指先から炎を出して見せつけてきた。盛大なドッキリか映画撮影では無いかという現実を受け入れまいとする気持ちはどこかにあった。しかし、どうやら本当に私の知る地球ではないどこかに来てしまった、という事を認めざるを得ないようである。私は異世界から来た、と彼に話してみたが、異世界の神を召喚した! と余計興奮させてしまうだけだった。ただ、驚くことに他の世界からこの世界を訪れる者は数は少ないものの他にもいるようで、この世界で日本語が使われているのも昔私と同じように日本からこの世界に来た人物が広めたためらしい。
しかし、美青年に崇め奉られるというこの初めての経験、恥ずかしいけれど……ちょっと、いい気分になってしまいそう。
その時だった。
「探しましたぞ! 殿下!」
声に驚いた私が周囲を見渡すと、トラックはいつの間にか剣を携えた集団に取り囲まれていた。5人、死角に更にいるのだろう。皆整った揃いの服装に身を包んでいる、いや、一人だけ他より豪華な帽子を被った男が一歩前に出た。どうやら彼が先ほどの声の主の様だ。
「やべっ!? 爺のやつもう気づいたのか!」
隣から聞こえてくる声。なんだ、普通に喋れたんだ。
「早くその奇怪な箱からお出になって大人しくお城にお戻りくだされ!」
「ま、待て! 先ほど異世界の神を召喚する事に成功し……」
「言い訳は後で御父上にたっぷりとおっしゃるのですな。さあ! 殿下!」
さっきまでの芝居がかった様子とは一転して焦っている青年が可笑しくて、思わず笑みがこぼれてしまう。
「……やっと笑ってくれたか」
青年はそう言って、私の方へと向き直る。
「名乗り遅れて申し訳ない。私は……俺はクリストフ・ウェーゼルトン。この国の王子だ」
えっ!?
「さっきは助けてくれて本当にありがとう。お礼と言ってはなんだけど、これから一緒に俺の城に来てくれないだろうか?」
えーっ!?