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track2

「数が多すぎる」


男は自分に言い聞かせるようにそう呟く。

たかが魔物数匹と油断し深追いした彼が、それらが仲間を呼ぶタイプのモンスターであるという事に気が付いたのは、既に彼が敵の群れに囲まれた後の事であった。


「しかたない。出来ればこれは使いたくなかったけど」


男の手から放たれた閃光に周りの一瞬魔物たちがたじろぐ。その隙を突き、彼が唱えるは召喚魔法。


「……我に力を貸せ。太陽の戦車≪チャリオット・オブ・サン≫!」


詠唱が終わると同時に空間に歪みが生じ、向こう側に見える光景がずれていき、音にならない音と共にそこに穴が開く。


そして、それは現れた。


「え?」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


やってしまった。

世界の狭間の出口らしいトンネルを出て、その勢いのまま明るさに目が慣れる前にやってしまった。

「何か」を……轢いてしまった。


≪レベルが上がりました!≫


ファンファーレと共にカーナビ様の声で何かが聞こえてくるがそんなことを気にしている余裕はない。


「と、止まれー!!!!」


考えるだけで動かせる、と言われたが無意識に声に出してしまう。


ありがたいことにその願いが通じたのか急ブレーキがかかり、シートに押し付けられていた私の身体が前へと投げ出される。私はとっさに目の前のハンドルを握る。


そして「何か」がぶつかる音が聞こえ、衝突の衝撃と、段差のような「何か」を乗り越える感覚がする。それらが数回繰り返され、トラックは止まった。


≪レベルが上がりました!≫


「ふぅ……ちゃんと……聞いてくれた……」


 何時の間にか閉じていた目を開けて周りを見る。青い空、白い雲、見渡す限りの平原、二足歩行で人間サイズのトカゲ、その他謎の生物諸々。……うん、動物に詳しくない私でも彼らが地球上の生物ではないことぐらい分かる。少なくとも昔行った動物園にいなかったのは確かだ。思わず出かかった叫び声を抑えて周囲に気を配り続ける。謎の動物たちは動揺しているのか動く様子はない。


その時、視界の隅で何かが光った。


 硬直していた動物たちがそれに合わせるように声を上げ……散り散りに逃げ出した。そして混乱した群れの間を縫うように何かがこちらへと近づいてくる。速い。あれは……人間だ! その人間、いや、青年が通りぬけた後で動物たちが倒れていく。その青年の手には剣が握られていた。


 近づくにつれてようやくそれと分かった眼にもとまらぬ剣技に、私は無意識の内に見惚れてしまっていたのかもしれない。気が付くと青年はトラックのすぐ目の前にまで迫っていた。私が反射的にその場から離れるようにトラックに命じかけたその時だった。


「お待ちください!」


凛、と声が響く。青年は既に剣を収めていた。


日本語だ。


「貴方様は、貴方様は何れの神におわせられまするか!」


そう言い終わると、青年はその場に崩れ落ちた。

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