平和の終結
チャンスを作り出してくれた護衛の87式と別れた後も自分たちは追われていた。さっき出会った生き物と同じ外見のヤツや外見が違うヤツなどありとあらゆる怪物が町のいたるところにいたのだ。そいつらはトラックに乗った人を見つけるとよだれを垂らしながら向かってくるのだ。
「やはり、俺達が狙いだな」
「どうしてこんなことになっているの?お願いだから帰して!」
避難民の誰かが叫ぶ。
「護衛班、射撃用意・・・・撃て!」
一人の隊長らしい自衛官が叫ぶと一斉に追ってくる怪物達に凄まじい轟音と共に銃弾の嵐が襲いかかる。しかしそうは言ってもこちらの武装は自衛官達が持っている64式小銃とトラック二台に一つずつついている12.7mm重機関銃とほんの少しの手榴弾しかないのだ。
ダダダダダダダダダダ
しかしいくら撃っても少しも減らない。
「うわー」
「助けてー」
「どうしてこんなことになっているんだ」
ただその銃撃戦を見守ることしか、できない彼らはまるで許しを願うかのように
口々に悲鳴を上げた。
「くそ、埒が明かない手榴弾投擲用意!」
隊員の一人が手榴弾を投げた。怪物の集団に爆発が起こり、少しだけ穴ができるがすぐに埋まってしまう。しかもまるで「これは俺の獲物だから邪魔をするな」
と言わんばかりに仲間が倒れているのにもかかわらずその死体を踏み越えてやってくる。
「彼らはそこまでしてでも俺達を・・・・・狂ってる!」
湊はその光景に驚きながらも思わず口にしていた。
ついに重機関銃の弾も尽きかけて、もう少しで怪物の手が届こうとした時、事態は好転した。空からの轟音と共に怪物の集団が爆散した。何事と思い空を見渡す
と航空自衛隊のF-15Jだった。それを見つけた途端歓声が起こった。
「いいぞ、もっとやれ!」
「あいつらなんか蹴散らしてやって!」
しばらくするまで護衛についてくれてたが急に離れていった。
「どうしたんだ?」
答えはすぐに出たいったいどこからこんな数が出てきたんだと言わんばかりの翼竜に似た外見の怪物が出てきた。
F-15Jと翼竜は激しいドックファイトで自衛隊側は十匹は落としたが旋回に入った隙に翼に取りつかれいっしょに落ちていった。さすがに分が悪いと感じたのかもう一機は撤退した。しかしさらに悪いことにトラックを見つけると一斉に飛びかかった。
「うそだろ」
「しゃべる暇があったら撃て!」
必死の防戦虚しくトラックの一台に飛びつき、トラックが横転した。湊の視界が暗転してそのまま気絶した。次に気が付いた時には視界いっぱい地獄になっていた。翼竜に食われる者。他の生物に踏みつぶされなれる者などあまりの光景に吐きそうになった。護衛が応戦しているが逆に倒すどころかやられる者が出ていた。その時
「おい、君大丈夫か」
後ろから声がした。後ろを見るとあの若い自衛官だった。
「よかった。まだ生存者がいて」
「伏せていろ。支援を要請したからここは木端微塵だ」
その宣言通り、2発の地対空ミサイルが飛んできていた。
「これでやつらもお終いだ」
だがその予想は大きく外れた。ミサイルが空中で爆発した。何事かと思うとまた声がした。
「どうやらこれのせいでさっきからみんな追いかけていたんですね。」
怪物達の真ん中に一人、人が居た。
「危ない」
小さな声で言ったが少し違和感があった。誰も襲わないのだ、しかも目は赤かったこんな人はいなかった。
そして疑問が解消されるまでにこう言った。
「まぁさっき飛んできたヤツからも守れてよかったです」
つまりミサイルを撃ち落としたということになる言動に落ち着きがあるのにも湊と自衛官は驚いた。
「どういうことでしょう」
「わからんだが彼が味方でないことは確かだ」
「どうします?」
「彼らが気を取られている今がチャンスだ。私が援護するから行け!」
「わかりました」
「では3、2、1でいくぞ、3、2、1行け!」
全力で走ろうとした時、声がした。
「何をするんですか?」
心臓が止まりかけた。振り返ろうとした時、すごい勢いで自衛官が吹っ飛んできた。
「手出しは無用、何もしないのなら見逃そうと思いましたがこれで終わりです」
湊は迷ったどうすればいい、どうすればこの状況が変わる?
少年が持っている日本刀みたいな刀がゆっくりと持ち上がり、自衛官の首筋にあたる。そこで湊は見つけた自衛官が落とした64式小銃をゆっくり持ち上げたずっしりと重かった。FPCゲームをしていたので銃床を肩に担ぎゆっくりと引き金を絞った。
ダダダダダダダ
撃ったが余りの反動にひっくり返ってしまった。
だが彼は無傷だった。いや当たっているが再生していた。しかし彼はこちらを見て驚いていた。
「あなた、やりますね名前は?」
湊はの顔を見て驚いた。夢に出てきた顔と同じだったがどこか感じが違ったが聞かれたので言った。
「小林 湊」
「ミナトね、ぼくは名前が無いから1(ワン)だよろしくお願いします」
「今回は見逃します。またいつかお会いしましょう」
「まって、あなたは何者なんですか?」
「じきに分かりますよそれじゃ」
去った後、若い自衛官が駆け寄ってきた。とてもつらい顔をしている。
「彼はどこに行った?いやそれよりも落ち着いて聞いてくれ君と私以外生存者はいなかった・・・・・」
「そんな・・・・」
俺は泣いた。トラックの中でも自衛官、松岡 重信さんだったか付き添われて泣いていた。母親を失いながら、避難所に着き「おおすみ」に重信といっしょに乗り、甲板からみた光景は一生忘れないだろう。
あれから八か月後、日本を含めた各国は拒否反応を彼らが示すダイヤに黒曜石を混ぜた鉱石で壁をつくり、入れないようにした。
この瞬間、人類はヤツラに負けたのだった。