避難所
12月 24日 町入口付近
「良し、我々は手分けして探して行こう」
「了解です」
「作戦はこうだ、我々は少女が言っていた場所に残りの生存者達を保護しに行くから、湊班は彼女と一緒にその「避難所」まで行くんだ」
「わかりましたが集合場所は?」
「後から我々もそちらに行くから待っていてくれ」
「はい、待っています」
「では、解散!」
こうしてせっかくまた会えたのにまた離れることなってしまったのである。
12月 24日 重信班から別れて40分後 町はずれにて
「この先でいいの?」
「うん、いいよ」
「この道を真っ直ぐ行って、少し行ったら右だね」
「それでいいよ」
そういう会話を続けていたがなんか息苦しくなったので話題を変えて気分転換をすることにした。
「君はなんて名前なの?」
「水本 美奈だよ」
と元気に返してくれる。湊は少し安心して続けて話しかけた。
「美奈ちゃんは将来は何になりたいの?」
「多すぎて、まだ決めてない」
「そうなんだ」
湊は子供らしいと思った。
「お兄さん達は乱暴しないよね」
「大丈夫だから、安心して自分達は自衛隊だから」
そう言ったときに森を抜けたが次に強烈な光を受けることになった。
湊達が森を抜ける 5分前
「今日も異常はありません」
「ごくろうだがまだ帰ってきていないのか」
「それが連絡もつかなくなり、今はどこにいるのかも不明です」
そう言って話しているのはここの「避難所」の警備責任をしている小泉だった。
「一体、どこにいったのかな」
「まぁ、よく無線機をなくすか壊す子なのですぐに戻ってくるでしょう」
「そうだといいんだけどね」
小泉は心配していたのだ。
「ここ最近はカテゴリーの活発化しているからね」
「大丈夫です 気をつけてますから」
心配しながら、話をしていると後ろで自分を呼ぶ声がした。
「小泉さん、大変です!」
「何があったんだ」
「不審な車両が近いてきます」
「トラックか?」
「いえ、それが自衛隊の車両でして」
「偽装の可能性があるから、警戒を!」
次々と警備についていた者たちが拳銃やAKー47を森に向ける。
この銃は小泉が以前やっていた仕事場から持って来たり、自衛隊や警官の装備をあの戦いの後に探索した時に見つけて持ってきたものだ。
「ライト準備!出てきたら浴びせて」
そう命令して、静かにしていると車のエンジン音がはっきりと聞こえて来て息を飲む。次の瞬間、車が現れた。
「照らせ!」
そうしてさっきの謎の光に繋がるのである。
「避難所」北門前 湊班
「いったい何が起こっているんだ」
「落ち着ついて、俺がこれから見てきますから皆さんはここで待機しといてください」
「分かりました」
湊は少しでも警戒を解こうと9mm拳銃以外は全て置いて行った。
避難所にて
「誰か降りてきそうだ」
ライトが当たっているせいか、車内の乗員がどんな姿なのかが見えなかった。
「自衛隊が救助に来てくれたのかな?」
「馬鹿か、そんなんだったらなんで2台しか連れて来ていないんだ。どうせまた物資を漁りに来た盗賊野郎達だ」
口々に警備兵が話している。そのただならる空気を感じたのか他の民間人まで野次馬として見に来ている。
やがてドアが開き、中から人が出てくる、全員がグッと身構える。しかし中から出てきたのは若い自衛官だった。
「話がしたいのですが」
その青年が話しかけてくる。周囲はドッと騒ぎ始める。
「お前は自衛官か」
「はい、そうです」
「ならば証明してみろ」
小泉はまだ疑っていた。装備をまねしただけで盗賊かもしれない、だいたい自衛隊にあんな若い隊員がいるわけがないと思っていたのだ。
(さぁ、証明してみろ。まぁ、そんなことはできないだろうな)
だが小泉の予想は外れた。
「自分は陸上自衛隊中部方面隊所属の小林 湊陸士長と言います」
これに関してだけは小泉を含む周りの者たちも驚きを隠せなかった。
「わ、わかったとりあえず中に入るんだ」
そう言うと門が開いて、素早く車両を入れるとすぐに門はしまった。
すると城壁から二人、人が降りてきた。どちらかここの責任者だろう。
「すまなかった」
「いえ、仕方ないですから」
「そうだな、まずは紹介から行こう、私は小泉 佳代だ」
「私はもう紹介しましたから、この人たちを紹介します。こちらは白河二等陸士と村田二等陸士です」
紹介されると二人は敬礼をする。
「私はここの避難所の警備責任者の小泉と言うものだ、そしてこっちは私の部下である・・・」
「白本と申します」
「よろしくお願いします」
「それでどうしてこの場所を?」
「実はこの子を助けたら、ここに来てと言われまして」
美奈がひょこりと顔を出す。
「美奈!無事だったのね」
「ごめんなさい」
「いいのよ、さぁ向こうでご飯食べてきなさい」
その再開を笑顔で見ていると小泉が話しかけてきた。
「さっそくですまないが隊長が君達に会いたいと言っているのだが私はこれから用事があるのでこの白本君が案内してくれるから連いていってくれ」
「分かりました」
「じゃあ、また会おう」
そう言って小泉という男は去って行ってしまう。
「案内しますから連いて来てください」
そう言われ、湊達は白本に連いていった。
「へぇ、かなりの設備が整っているな」
村田隊員の言うように少し古いが通信機器や機材が置かれているし、土地の余っている部分を畑に使っている。
「どこからこんな機材を?」
「それ以外にもありますよ」
白河が指を指した場所を見てみると三人は「あ!」と驚いてしまった。
「どうして、退役した61式戦車が・・・」
「気付きましたか、実はここは70年前に放棄された駐屯地らしく私たちがここに逃げて探索した時に見つけたものです」
「でも動かなかったのでは?」
「そうなんですけど、腕利きでしかももと自衛官だったエンジニアさんがおられてあっという間に治してしまったんです」
「弾薬は?」
「同じく置いていました」
それを聞いたとき全員が思った。
(大丈夫か?それ」
確かに61式は動いているし、他にも60式自走106mm無反動砲や60式装甲車などの骨董品も動いていた。
滅多に見ない光景をじっと見ているとすぐに目的の場所に着いた。
「ではこちらです」
入る瞬間に外では雨がぽつぽつと降り始めた。
「危ない、危ない」
そう言いながら、振り向くと湊達に銃口が突き付けられたのである。