073.失恋男とゆかりん
All土田目線
3時間目のチャイムが鳴る。だけど、俺は授業には行かず、屋上にいた。同じクラスの友達に保健室に行ってると先生に言うように頼んだから大丈夫だ。国語を一時間サボったとこをで、そうテストに支障は出ない。だって国語は皆のお休みタイムだから。国語なんてそんなもん。俺は地べたに座り、伸びをして、ゴロンと仰向けに寝転んだ。そして空をボーっと見る。冬だから寒い。だが、終わってしまった恋を冷やすにはこれでも足りない。だって、彼女は最後まで俺好みだったのだから。
「本当に、好みだったんだけどなぁ。」
誰もいないはずの屋上。そう、誰もいないはずだ。
「ね、ゆかりん。」
ゆかりんが屋上の入り口から顔を出した。
「どうせだったら、こっちに来て慰めてよ。」
「・・・・・やだ。」
「何、それとも、失恋男を眺めてたいの?」
「うん。」
即答。
「ゆ、ゆかりん?そんな趣味、あったの?」
「今できた。」
「今!?」
「うん、今」
「・・・・。」
な、何て返したらいいの?でもこれだけは言える。絶対にフラグは立っていない。だって、ゆかりんだから!!
「哀愁漂う感じが、いつものとのギャップがあって、いいかんじ。」
「そこかぁ・・・・・・・・・。」
まぁ、オタクとしては重要だよねギャップ萌は。だから見てたのか・・・・・・。
「じゃあ、近くで見ていいよ。」
「やだ。」
「ゆかりん・・・・・・。」
「これは、少し離れて見るのがいいの。儚さがプラスされるから。」
「真夜ちゃん手作りのシフォンケーキがあっても?」
と、言うと、ゆかりんは素早く俺の隣に来た。白状者め!!俺はシフォンケーキのラッピングわ開けながらゆかりんに問う。
「ゆかりん、授業は?」
「芸術。私は美術選択だから、今日は野外スケッチなの。」
ちなみに、俺が大好きな特進眼鏡2人組みは音楽選択だ。絶対、10割眼鏡っ子が3割眼鏡っ子に合わせたのだろう。時々ストーカーだと疑いたくなる。
「ちょうどいいから描かせてもらった。」
そういい、ゆかりんはスケッチを見せてきた。描かれていたのはさっきまでの俺の姿。相当お気に召したようだ。上手く描かれている。て、まだ授業始まってから10分経ってないよ!
「課題終わったし、40分間暇だなー。」
「課題って・・・・・・、これ先生に提出したら、俺が授業サボってたこと、ばれちゃうじゃん!!」
「じゃあ、これを出したときに変な顔をされたら、これは土田君のそっくりさんです、って言っとく。」
「実際の俺はもっとイケメンだしね!」
「うん、そうだね(棒)。そういうこと自分で言っちゃうような性格だからフラレルんだよ。イケメンでも。」
「っう・・・・・・、今のすごく刺さった・・・・・。」
シフォンケーキのラッピングが開け終わった。て、これ、丸々ワンホール入ってるよ。親切に使い捨てプラスチックフォークまで付いてるよ。しかも2本。イヤー、ゆかりんと食べるには2本あってよかったよかった。て・・・・・・・・
「何で2本あるのーーーー!!?」
「多分、土田君が私に泣きつくのを見越してたんだよ。実際そうだし。」
ゆかりんは1本のフォークを持ち、ケーキを1:2に切る。そして、その〝1" の方をケーキのふたに乗せ食べ始めた。
「半分ずっこじゃなくていいの?ゆかりん。」
「男の子なんだからいっぱい食べなよ。もらったのは土田君で私はただおすすわけしてもらってるだけだし。」
「ゆかりんは刺さるけど優しいね。」
俺はケーキを食べ始める。逆にゆかりんは食べる手を止めた。そして目をぱちくりさせてる。
「ん?どうしたの?」
「・・・・・・、私のこと優しいなんて言う人、まやみん以外にいたんだ・・・・・。」
「あぁ、そうだね。ゆかりんはなんだかんだ言って慰めてくれるから。それにゆかりんに慰めてもらってるのなんて俺くらいだし。他の人にもそんなにグサグサ言ってるなら言われないね。でも、真夜ちゃんには普通に優しいよね。どうして?」
「好みだから。」
「・・・・・・、っえ?」
まさか、百合?
「は、言いすぎかな。だって、ほら、まやみんってキャラ立ってるし、人のフラグをすぐ立てるし。」
「キャラが立ってるって・・・・・・。」
「うん、そう。」
「「天然ドジッ子キャラ」」
「・・・・・・・、だよね、やっぱ。」
「「・・・・・・・・。」」
「ねぇ、ゆかりん。」
「慰めないよ。」
「いや、そうじゃなくて・・・・・・、暇なら失恋男の話を聞いてくれない?」
「いいよ。」
「そこは軽いね!」
「おもしろそうだから。」
ゆかりーん・・・・・・・・・・。