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070.卵焼き

すみません!!タイトルが間違ってました!


All風天目線

 今日も情報交換と称して、真夜と生徒会質でお昼を一緒に食べる。1週間前の前回から、本当に楽しみで仕方なかった。俺が生徒会室に着くと、彼女はもうすでにいた。1年生の教室のほうが近いので先に着いたようだ。

「ゴメン、待たせちゃって。」

「いえ、私も今着いたばかりなので。」

俺が気にしないようにと、彼女は笑顔で言った。あぁ、なんて優しい子なんだ。そしてかわいい。

休憩用のソファーに座っていた彼女の隣に俺が座ると、彼女はお弁当等を空けはじめた。俺のお昼は購買のパンなので、俺はパンの袋を開けてパンを食べる。俺が2口くらいパンを食べると、彼女のお弁当が完全に開かれたので、彼女のお弁当をチラリ見る。ちょっとした話題探しのためだ。

「いつもと違うな、卵焼き。」

彼女のお弁当にいつも入っている卵焼きは、砂糖で味付けされた少し形の崩れた卵焼き。だけど、今回は形はすごくきれいだし、なんか中にチーズらしき物が入っているのが見える。

「あぁ、分かります?今日のは私が作ったんです。いつもはお母さんが作ってるんですけど、お姉ちゃんが、急に私に作ってほしいっておねだりしてきたんです。で、お姉ちゃんがチーズ入りのが好きだから作ったんです。そうしたら、何を間違えたのかすごい量を作ってしまって、おかずの半分か卵焼きに。お姉ちゃんと瞬君のなんておかずの全部が卵焼きです。」

「それは・・・・、朝から大変だったな。」

(真夜の手作りかぁ。いいなぁ・・・・・・。)

そう思いながら卵焼きを見てると、

「ちょっと、食べますか?」

と聞かれた。ヤバイ、顔の出てたかなぁ。

「いいの?」

「はい。卵焼きばかり食べてると飽きてしまうので、少しでも消費していただけるとうれしいです。」

「じゃあ、もらおうかな。」

にやけないように気を付けながらいう。

「はい、どうぞ。・・・・・って、先輩、お箸ありませんよね・・・・・。」

はじめは俺にお弁当箱を差し出し俺につまませようとしたが、俺がパンであることを思い出したらしい。あー、お弁当にしてくればよかった・・・・・・!「手でつまむからいいよ。」

と、俺が言おうとすると彼女は、自分の箸を逆向きにし、一切れの卵焼きを半分にして1口サイズにした。そして、その1口サイズになった卵焼きを箸を逆向きにしたまま箸でつまみ俺に差し出しながら、

「・・・・・、今度こそ。はい、先輩。」

と彼女は言った。それに体は固まる。だが頭は無駄なまでにフル回転していた。

(いや、だって、これは、あ、あれだろ・・・・・・?真夜がよくやられてる、あれだろ・・・・・?)

彼女がやられてるのには違和感はないが(いや、それもそれで問題だろ)、彼女がやってるのには何か違和感が・・・・・・。いや、嫌なわけでは無いんだぞ!むしろうれしいくらいなんだよ、そのー・・・・、俗に言う〝あーん" なんて。ただ、いきなりこんな幸せな状況、ありか?ありなのか?

「あのー・・・・・、先輩?」

彼女が心配そうな顔をする。

「あぁぁぁぁ、ご、ゴメン!」

俺はあわてた勢いで、差し出された卵焼きを口の中に入れる。美味しい。見た目通りふんわりできている。美味しいし、(あーんしてもらって)うれしいからすごく幸せ。欲を出して言うならば、出来立てのアツアツのやつが食べたかった。チーズがトッロとしていて卵はもっとふんわりしていて美味しいんだろうな。もっと言うならば、作っているところも見たかった。一生懸命作る彼女の姿はさぞかしかわいいことだろう。抱きしめたくなるのが我慢できないほどに。

「美味しい・・・・・。」

「本当ですか・・・・・・!」

彼女はうれしそうに笑う。あぁ、なんてかわいいんだ!彼女の、単純で真っ直ぐなところも大好きだ。

「もっといります?」

と聞かれたので俺は即座にうなずいた。彼女は、もう半分の卵焼きをつまみ俺に差し出してきた。今度は遠慮無く口に入れようとしたら、

「真夜ちゃーん!!ライラ」

「「っあ」」

土田が生徒会室の扉を開けていた。俺たちは思わず固まる。すると雷瀬が顔をひょっこり出して、

「ゴメン!月影!!じゃました!」

「ライライ」

「用件は放課後でいいから。」

「で、でも・・・・・・」

彼女が困っているのに気づいた雷瀬は、ため息をついた後、

「・・・・・・分かった。終わるまで外で待ってるから。土田と水原は邪魔だから帰らせる。」

と、言って入り口でフリーズしていた土田をどけ、雷瀬は扉を閉めた。外がギャーギャーとうるさくなり静まる。どうやら、雷瀬は土田と違って空気が読めるようだ。いや、土田の場合読めないんじゃなくてあえて読んでないからなぁ。って・・・・・・、水原もいたのか・・・・・・、放課後(後で)睨まれそう・・・・・・・・。

「お、終わったらって・・・・・・・!」

彼女は自分かやってたことを今頃自覚したようで顔を真っ赤にさせていた。どうしよう。どうせ、やりかけ、・・・・・もらいかけていたものだしいただきたい。雷瀬の気遣いも無駄にしてはいけないよな、うん(言い訳)!

「真夜」

「!!」

「くれないか?卵焼き。」

催促してみる。じゃないと、無かったことにされて出て行かれそう。

「早くしないと、雷瀬待たせちゃうよ。」

さらに催促。真夜の目をしっかり見て。彼女は覚悟を決めるように目をぎゅっと閉じてから開き、真っ赤になり恥ずかしがりながら俺に卵焼きを差し出す。俺は不自然じゃないぎりぎりの遅さで卵焼きを口に入れる。俺は卵焼きをモグモグと噛み、飲み込んだ後、

「ありがとう、真夜。・・・・・行っておいで。」

彼女のかわいさで思わず微笑みながら言った。彼女はこくりとうなずいた後、あわてて外に出た。

 じゃまされたと思ったが、これはこれでなかなかいい思いをした。なんというか・・・・・、二度美味しかった。1口目は、いつもの柔らかい笑顔の真夜。2口目は、恥ずかしがる真夜。どちらも、こうが付けがたい。だが、どちらにも当てはまることはとてもかわいかったことだ。

(あぁ・・・・・、また、もっと好きになっちゃった・・・・・・・。)

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