059.へタレ
途中から最後まで風天目線
私は帰宅してすぐにベットにダイブし、掛け布団を頭まですっぽりかぶり丸くなる。これは病院生活と言う、ベット=Houseの生活をしていた佐野真弓のときからのクセである。乙女ゲームをplayして、萌orトキメいてキャーキャーと言いたくなったときや、お耳のイターイ話をされたときや、恥ずかしくなったときにやる。布団にもぐれば布が音を吸収するので、キャーキャーの声が多少は小さくなり、音がくぐもることによって多少低く聞え多少はましになる。かつ、顔も隠せて、一石二鳥だ。
そして私は今日のことをフラッシュバックさせる。まず、・・・・・・・・はしゃぎすぎた。子供化というくらいに・・・・・、動物で。あのモフモフを見るとテンションが上がらずにはいられない。先輩の様子から言ってドンびいてはいなかったけど、恥ずかしい。そういえば、先輩よくボーっとしてたなぁ。あたふたをよくしてたし。それに・・・・・、抱きしめられたし・・・・・。それを思い出し、またキャーキャーと布団の中で言う。
(結局、言えなかったなぁ・・・・・・。)
家に帰って1人で反省する。何回か、言わなくちゃ、と思ったが、彼女の顔を見るといえなくなってしまった。そういうときに笑顔を向けられてしまうと、あ、これは絶対そういう意味でとってくれないな、と思ってしまい言えなかった。
(へタレだ・・・・・・、俺ってヘタレだ・・・・・・。)
思わず頭を抱えた。で、でも、仕方ないだろ、・・・・・・・初恋、なんだから・・・・・・・・。告白する以前に、告白したいと思ったのも初めてだし、それくらい人を好きになったのも初めてなんだよ。この年(て言っていいくらい生きてないけど)になって、初めてだらけだ。
バッテリー切れになった受験生がいないかどうか巡回していたあの日。俺が歩いていると、足元がふらついていて明様に該当者である少女が前方から歩いてきた。声をかけて保健室まで連れて行こうと判断した。寝てれば魔力なんて回復するから。そうおもって近づこうとしたら、少女の足が急にガクッと勢いよくよろけ、受け止めようとした俺までもがその勢いに負け背中から倒れてしまった。少女は自分が重かったからだと言っていたが、そんなことはない。むしろ軽いと思ったくらいだ。少女は小さく俺の胸にすっぽりっと収まりそうなくらいだった。少女はあわてて俺の上からどいて、恥ずかしがりながら謝罪してきた。確かに元々見た目がかわいのもあるが、何より、そのしぐさと表情がかわいかった。そのかわいさに初対面でありながら抱きしめたくなった。少女はバッテリー切れであるにもかかわらず、俺の治癒魔法をかけるといってきた。俺は、なんて優しい子なんだろう、と思いながらそれをやめさせた。
俺にしては珍しく(いや、今まで1度もなかったけど)、置手紙をしてまで話してみたいと思った。入学試験明けの登校日に養護の先生に少女は無事に帰宅したかと聞いたら、あの少女が天下の月影風紀委員長の妹だと告げられ、とても驚いた。だって(おもに性格が)違いすぎる。見た目も光の加減で藍色に見える黒髪と黒い目の色は同じでも、あの無駄に美人な月影先輩と違って少女かわいらしくあいらしい見た目であった。小顔で少し丸気味の輪郭、彼女のホワホワとした性格を現したような口元、やや低めの背丈、全体的に彼女の性格をそのまま現したようなかわいらしい見た目だが、スタイルはいい。性格と言う観点からも見た目と言う観点からも月影先輩と一致しない。ちなみに、弟とはそっくりだそうだ。
彼女が入学してからも、少しでも仲良くなりたい一心で、俺にしては積極的に話しかけたりした。そのたびに彼女が見せてくれる表情で俺はどんどん彼女のことが好きになっていった。嬉時にはよく笑う。特に、おやつを食べているときは幸せそうに笑う。時々、俺が知る限りでは俺にしか向けない笑顔を向けてくる。頬を染めてうれしそうに。その顔を見るたびに自惚れたくなる。彼女と俺は同じ気持ちなんだって。勘違いするのはよくないと思うんだけど勘違いしたくなる。でも正直、もたもたしてる時間はないだろう。だって、どんな意味だとしてもみんな彼女のことが大好きなのだから。彼女は、懐かれる天才であると同時に愛される天才なのだ。現に、土田に先を越されたし・・・・・・。
(あれ・・・・・・・・?そういば、どうなったんだろう・・・・・・?)
そうじゃなくても、彼女のことを噂している人はけっこういる。ちなみに、本気、冗談に関わらず、彼女が好きだとか告白しようかなとか言うと現役風紀委員のどちらかに制裁を食らう。いくら彼女の保護者だからって、過保護すぎるだろ・・・・・・・・・。彼女のことが好きだと睦にばれたとき、いくら親友の俺でもあれだけ過保護な(自称)お兄ちゃんなら、制裁を加えてくると思ったが、そんなことはなかった。むしろ、応援してくれている。と言うことは、お兄ちゃん公認か・・・・・・・・・。
次の日。朝っぱらから、睦と慧が俺の家に押しかけてきて、昨日はどうだったかと聞いてきた。話さないと、(主に慧が)脅してまではかせるので、そのまんま昨日のことを話したら、へタレだと罵られた。
やっぱり、俺はへタレなんだ・・・・・・・。