057-1.初回のフラグポイントを回避
「では、まずこれを見てください。」
机の上に置かれたのは調査書。
「これなんですー?」
土田君が質問する。
「これは新しい総務会メンバー候補の調査書です。とは言っても、3枚ぴったりしかないのですが・・・・・・。」
「・・・・・・って、イブにお仕事ー?何かすごく悲しぃ・・・・・・・・。」
確かに、日にちがリアルタイムで進むタイプのゲームにイブはクリスマス当日への重要な日だ。特に、リアルタイムで時間が進むタイプの乙女ゲームやギャルゲーにとっては。正直、私もその点で悲しんでいる。早く帰って、乙女ゲームをしたい・・・・・。
「ただ、ケーキを食べてお茶を飲むためだけに学校に集まるはずがないじゃないですか。」
「あのー、金島先輩。」
「何ですか?月影さん。」
「・・・・・、なぜ3枚ぴったりだといけないんでしょうか・・・・?」
さっきの金島先輩の口調から言って問題があるようだが・・・・・・・。
「いけないわけではないのですが・・・・・。まぁ、まず一人ずつ説明していきましょうか。」
3枚のうち、1枚をさしながら言う。
「まず、1人目。植幸優。植物を操る能力を持っています。書類上では問題ありません。」
別の1枚に変える。
「2人目、時栄賢。ありとあらゆるものを修復する能力があります。ただし、1つ問題が、家庭の事情により彼が現れるのは6月からであること。」
最後の1枚。
「問題は3人目。日陽百合恵」
お、来たヒロイン!!
「能力をコピーする能力を持っています。」
皆さん、何に問題があるのか分からないようだ。
「彼女の年齢を見てください。」
「あー、俺と一緒だー。」
土田君が言う。つまり、19期生ではなく18期生である。まぁ、私と瞬君は知っていたがな。
「新入生に総務会に入るに値する能力の持ち主が入学してこなかったんです。しかし、元々在籍していた生徒を入れると他の委員会などに支障が出るため転校生を採用することになったのです。」
それでだったのか。ゲームにでてこない設定だ。
「3人とも、入学試験は他の19期生候補者と一緒に行います。なので、面接見学も例年通りに行います。」
面接試験という名の能力実技試験の見学。現役総務会メンバーの中から一人が新総務会候補の実技試験を隠れて見学する。ちなみに、他の現役総務会メンバーは、去年の風天先輩のように巡回する。
「今年は誰がやりますか・・・・・?」
「「「「「・・・・・・・・・・。」」」」」
この時点からラブマジのストーリー分岐が始まっている。この、面接試験を見ていた人物が一番最初に話しかけてきて、少しだが好感度が上がる。
「まぁ、正直見たからって何もありませんけどね。」
攻略対象には何もなくても、playerにとっては大有りだ。さぁ、ヒロインと最初にお話しするラッキー(?)な人は誰だ!
「・・・・・・真夜。」
火室が口を開いた。おお、あんたがいきますか!
「何ですか?」
あれ?でも何で私に振る?・・・・・・、ま、まさか・・・・・・、
「お前がやれ。」
ま、マジスかー!?
「え、ちょ、ちょ」
おいおい、攻略対象キャラ!何、(ヒロインとの)フラグ回避しようとしてるの!?
「確かに・・・・、月影さんを巡回させてもしょうがないですし・・・・・・。」
な、何で!?何でしょうがないの!?金島先輩!
「人を助ける能力なのに、助けられるの専門だもんね、真夜ちゃんは。」
土田、思ってても言うな!!
「うん、俺も危険な予感がする・・・・。」
風天先輩に言われると誰に言われるよりダメージが・・・・・。
「僕も真夜ちゃんでいと思います。」
瞬君!?・・・・・・・・・は、フラグ回避するか・・・・・。
「でも、私が見たって・・・・・・・」
しょうがない。私は攻略対象キャラじゃない。
「大丈夫ですよ。事故にあった衝撃でなんのまいぶれもなかったのに、いきなり精霊魔法を使えるようになった人ぐらいの規格外人物が現れない限り、そんなに重要なことではありませんから。」
あれ?それってどこかで聞いたような・・・・・・・・。って・・・・・・・。
「私って・・・・・・、規格外人物・・・・・・?」
全員に「今更何言ってる!?」と言う顔をされた。まぁ、女神様の力は規格外か・・・・・。というか、攻略対象キャラ自らがフラグを回避したって、あり・・・・・・?
本日、私、1歳老けました。おめでとう自分。