056.凶器
いきなり時期は吹っ飛び、冬休どころかクリスマスイブ前日。私はケーキを作っていた。何故か明日に総務会の集まりがあるので、まぁ、せっかくイブだしクリスマスではないけれどお茶菓子に振舞おうかと思って作成中。何回も作るのはめんどくさいので家族(半居候の瞬君も含む)でクリスマスに食べるケーキもまとめて作る。めんどくさいけど、お姉ちゃんがどーしても私が作ったやつが食べたいようで、毎年一週間前くらいになるとおねだりされる。あ、お姉ちゃんの誕生日のときもだけど。私だって、すごく美人なmy sisterに頼まれてしまったら断れない。それに、4月になったらお姉ちゃんは大学の寮に入ったしまう。だから、このおねだりも今年で最後。来年からはめんどくさいので気が向かない限り作らない。
で、次の日。
「月影さんは器用ですね、・・・・・・・月影先輩と違って。」
と金島先輩が言う。
「本当に先輩と血がつながってるのか・・・・・・・・?」
と火室先輩。ちなみに今の質問はよく言われる。
「いや・・・・・、ある意味先輩は器用だよ・・・・・・・。」
と風天先輩。
「人に恐怖を植え付ける達人ですからね・・・・・・・・。」
と瞬君。何でこんな会話になったかと言うと、ケーキをお食べる際に私が、お姉ちゃんにおねだりされたついでに作ったと言ったからだ。
「その反応・・・・・・、先輩たちも食べたことあるんですか・・・・・・・・。あの凶器を・・・・・・。」
瞬君が「ご愁傷様です」という顔をしながら言うと、先輩たちは、「あぁ、そっちもな・・・・・。」と言う顔をする。それに対して私は、
「すみません。すみません。姉がご迷惑をかけて、本当にすみません!」
と頭を下げ続けるしかなかった。
「っえ?凶器って何!?」
土田君だけが分かっていない。
「・・・・・・、そっか・・・・、土田君はあの凶器を食べたことなかったんだっけ・・・・・・・・・・・。」
「だから、凶器って何なの!?瞬ちゃん!」
「それは、不平等だな・・・・・。」
「だから、何なの!?火室先輩!」
「アレは一度食べておいたほうがいいですよ・・・・・・。どんなものを食べても動じなくなりますから・・・・・・。」
「その言葉だくで恐ろしさが伝わってきたけど、凶器って何なの!?金島先輩!」
私達目を合わせため息をついた後、
「「「月影先輩の手作り料理」」」
「真美さんの手作り料理」
「お姉ちゃんの手作り料理」
と土田君以外でハモル。
「あれは、とんでもない物だ・・・・。」
風天先輩が話し始める。
「俺たち3人がはじめてあの凶器を口にしたのは1年のときのバレンタインディーの義理チョコだった。月影先輩がくれると言った時点でおぞましいものを感じたんだけど・・・・、それを聞くと、その場にいた前野先輩と山田先輩が顔を真っ青にしてがくがくと震えだしたんだ。」
なんかもう、怪談話みたいだ。寒い!凍える!!
「・・・・・・、本当は逃げたかった。だけど逃げたらもっと酷いめに会うから、とりあえず受け取ることにしたんだ。幸い小分け包装になっていたからもって帰ったら家で捨てればいいと判断したから。だ、だけど・・・・・・・、あの人はこの場で食べることを要求してきたんだ!でも、言うことを聞かないと恐ろしいから、言われたとおりにしたんだ。味は・・・・、想像通りこの世のものと思えないほどまずい味で・・・・・・、もう、吐きげを抑えるのが大変で・・・・・・・・、思い出しただけでも・・・・・・」
と顔を青ざめながらお茶を一気飲みした。それも3杯も。
「私はその場で気を失いました。」
金島先輩の顔色もよくない。
「俺なんて人格崩壊しかけたぞ・・・・・。」
火室先輩は頭を抱えている。
「僕は去年ので近所の溝に頭を突っ込みかけたよ。」
瞬君は毎年被害にあっている。多分、2ヵ月後も被害にあうだろう。
「と、言うわけで土田君も同じ苦しみを味わってね。」
瞬君がどす黒い笑みで言う。
「え、ええ?しゅ、瞬ちゃん?」
「もしかすると食べた衝撃で馬鹿が治るかもよ?」
私敵は馬鹿より変態が治ってほしいんだけど・・・・・。
「うーん、じゃあ、お姉ちゃんが義理チョコを作るといったら、土田君のだけ作るように言うね。他の人のは私が作るからって。」
今からすごく楽しみだ。