053.弟
前半水原目線、後半第三者目線
真夜ちゃんがリビングを出た後。何か空気が、重い!何か、居心地が悪い!!と言うわけで、夕食を作ると言う名目でリビングから台所へ避難。
「瞬ちゃん、何するのー?」
おいおい、土田君。君がここに来ちゃったら、リビングには火室先輩とマコ君だけになってしまうではないか。何とカオスな!!
「・・・・・・・、夕飯を作るんだよ・・・・・。」
「瞬ちゃんが!?うっそー!!料理できるの!?」
「まぁ・・・・・・、一般的な家庭料理なら・・・・・・。」
「おー、人ん家の掃除して、ご飯作って、瞬ちゃんって家政婦さんみたいだねー!!」
「土田君・・・・・、馬鹿にしたいだけなら出て行ってもらえる・・・・・・・・・?」
「怒っちゃいヤーン。」
「(イラッ)」
めんどくさいので土田君は無視して、冷蔵庫の中を見る。多分、後勝さんはともかく、土田君と火室先輩は夕食まで居座る気満々なんだろうな・・・・・・・。はぁ、よりによって夕食の当番が僕の日にこんなことになったんだろう・・・・・・。そのせいでこの人達居座る気が満々なんだよ。そんな僕が料理するのがおかしいのだろうか。僕だって多分普通に自宅で生活するような生活をしていたらこんなスキルもっていなかっただろう。ただ僕は、真夜ちゃんの負担を減らすためにやっているだけであり見世物でもなんでもない。月影家で料理スキルを待ってるのは月影母と真夜ちゃんだけ。多分、覚えればマコ君もできそうだけど。だから、母がいないときはいつも真夜ちゃんが料理をする。そのたびに、「めんどくさーい、めんどくさいよ~。」と言うので頑張って僕も覚えた。このことから分かるように、僕は真夜ちゃんのためだったら何でもできる。何でもやる。(自分で言うのも何なんだけど)ここまでしてるのに、どうして親友としか見られないんだろう。悲しい、悲しすぎる。
そういえば、カオスな空間の方はどうなってるんだろう・・・・・・・・・?
水原と土田がキッチンへと逃げた後のリビング。残されたのはアホな火室と真夜と瓜二つな女顔である真琴のみである。そこには、真琴が勉強をして出しているいる鉛筆の書く音のみが響く。火室はただその姿を無言で見つめていた。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」
静かである。
しばらく経つと、真琴の勉強に一区切りが付いたようで、真琴が一回鉛筆をテーブルに置く。それを見計らって火室が動き、真琴の隣に座る。そして、ごそごそと持っていたレジ袋をあさる。でてきたのは、駄菓子だった。さっき、商店街で買ったものの一つだ。火室はそのお菓子を、
「やる。」
と言って、真琴に差し出した。
「・・・・・・・・・・。」
真琴はそのお菓子を観察するようにジーっと見る。
「・・・・・・・、別に変なものは入っていない。ただの駄菓子だ。」
火室は真琴が怪しんでいるのを感じ取ってそういう。真琴は火室の目をジーと見てからお菓子を受け取りあけた。そして食べる。
「・・・・・・・・・!!」
美味しかったようで真琴は目を見開く。それを見た火室が
「・・・・・同じだ。」
と小声でつぶやき、真琴が
「?」
となると、ごまかすように真琴の頭を雑になでた。いつも真夜にするのと同じなで方だ。真琴はすっかり警戒心を解いた用でお菓子をハムハムと食べる。その姿は真夜のようだった。
(あ・・・・・・、この顔・・・・、真夜ちゃんといるときと同じだ・・・・・・。)
水原はそう思った。妹にしかしない、火室の兄としての優しい顔だ。土田も同意見だったようで
「へえー。」
と言う。水原は野菜の皮剥きをしながら再び火室と真琴のやり取りを見る。
「・・・・・・・・、美味しかったです。ありがとうございます。」
真琴が食べ終わったようで火室に礼を言う。
「あと、姉を家まで運んでいただきありがとうございました。」
再び礼をする。
「・・・・・・・一応はじめまして。」
一応が付くのは火室がここに来るときに時々顔をあわせていたからだ。だが、話すのは今が初めてだ。
「真美と真夜の弟にあたります。月影真琴です。姉達がいつもお世話になってます。」
「火室睦だ。・・・・・・、俺がお前より年上だからってそんなに硬くならなくていい。お前は俺の妹である真夜の弟なんだからお前は俺の弟だ。」
真琴は火室が今言った言葉を解釈する。
(マヤねーの兄で、僕の兄だから・・・・・・・・)
至った結論はひとつ。
「らんぼぅ・・・・・・、ふつつかものの姉ですがマミねーをよろしくお願いします。」
真琴はそう言い、深々と頭を下げた。
「姉弟そろって、同じ勘違いをするな・・・・・・・。」
「っえ?」
「月影先輩はただの恐ろしい上司なだけであって、このことには一切関係はない!」
「???」
「はいはーい、そこまでそこまでぇ。」
すれ違っていく2人の会話に土田という第三者がstopをかけた。
「火室先輩の言ってることは基本わけが分からないから深く考えないで言ってたことだけそうなんだーって思っておけばいいよ。裏の意味は全くないから。」
「おい、つち」
「ちょうどいいから、俺にも自己紹介させてね。俺は土田光。将来は真夜ちゃんとけっこ」
土田が全てを言い切る前に
「土田!!!」
「ッイテ!!」
火室が一発げん骨を入れた。
「いたいよー、火室先輩!」
「マコ!こいつのことは気にするな!こいつは、ただの馬鹿な変態だ!!」
「ひどいよセンパーイ。俺、真夜ちゃん以外の人に殴られる趣味もののしられる趣味もないんだけどー!」
「聞いたか、マコ!これが生の変態だ!!分かったか!?」
真琴が無言で刻々とうなずく。
「ちなみに、真夜は実のであって、こいつと真夜がどうこうなることは絶対に無い!俺が全力で阻止するからな!!」
「先輩!俺になんの恨みが!?」
「お前に恨みは無いが、兄として、真夜を馬鹿な変態にやるわけにはいかん!!」
いつまでも揉めていそうだと判断した水原が土田を回収した。
もう一度書きますが、裏・学園ラブアンドファンタジーをやってみたin乙女ゲームもぜひ読んでください。