046.妹
11月上旬のある日。今日は風天先輩の誕生日である。もちろん、誕生日プレゼントも用意した。好きな人にプレゼントを渡すなんて初めてだ。それでも、喜んでくれたらいいな、と思っている。
が、現実はそんなに甘くない。相手が喜ぶ喜ばない以前に、渡すタイミングがつかめない。だって、他の人がいると渡しづらいんだもん。よし、放課後こそはちゃんと渡すぞ!と決意した。そして今日もまた昼休みに火室が現れた。なぜ今日も来るんだ・・・・・。
「・・・・・・・、今日は何の御用ですか?」
まぁ、特に大した事はないと思うがな。だが火室はそれに答えずお菓子のパッケージを開けて、
「食うか?」
と言い、その箱を私に差し出してきた。
(食べないと文句言うくせに・・・・・・・・。)
なら聞くな。
この人がお兄ちゃん発言をしたこからろだろうか、昼休みにこうやって私のところに来るたびに餌付け・・・・・、お菓子をくれる。このお菓子の出所は、まだいる火室の取り巻き(女子のみw)が持ってきた、火室への貢ぎ物である。なので、けして私が口にしてもいい物ではない。本人言うには多すぎて処理しきれないから手伝えということだが、金島先輩から聞いた(というかからかいたかったみたいで勝ってにしゃべってくれた)ところ貢ぎ物にお菓子があるたびに私のところにもって来るそうだ。私に餌付けして何が楽しいんだろうか・・・・・・・・・。でも、全般的にいいものが多く美味しいので思わず食べてしまうし、食べているとほほの肉が緩んでしまう。いや、それ以前に・・・・、貢ぎ物がこんなことに使われていると取り巻きさんたちが知ったらさぞかし(私に)殺意が芽ば・・・・・・、悲しむだろう。私が総務会の人間じゃなかったら殺人が決行され・・・・・、さぞかし恨まれるであろう。こんな相手にするのがめんどくさい人間でも、(乙女ゲームの攻略対象キャラになるくらい)顔がよく、金持ちであればもてるのだよ。まぁ、私だったらごめんだけどな。世の中玉の輿狙いの人は多いくらいだろし、それが普通なのかもしれない。
今日の貢ぎ物の処理の手伝いが用件かな、と思っていると火室先輩が口を開く。
「・・・・・・・・・・、渡せてないのか・・・・・・?」
「へ?」
何のことじゃ。
「渡せてないのか?実に、誕生日プレゼント。」
「な、何で知ってるんですか!?」
「・・・・・・・・、渡せてないのか・・・・・・・。」
いいから、何で知っているのか答えろ!!
「・・・・・・・・・、ほかのやつとかがいたら渡しづらかったりするのか?」
「はい。・・・・・・・て、だから、何で知ってるんですか!?」
はよ答えろ!!と思っていると火室先輩は悔しそうな顔をしながら、
「・・・・・・・ぁとし・・・・・・・。」
「?」
「慧・・・・、の推測だ・・・・・・・。」
とやっと答えてくれた。それなら納得だ。でもどうして悔しそうな顔をするんだろうか。私がどうしたらいいか分からず、黙り込んでいると、お頭に手が置かれる。そしてそのまま髪をグジャグジャに・・・・、頭をなでてきた。
「ゴメンな・・・・・・・・。俺はお前の兄なのに、気づいてやれなくて・・・・・・・・、ゴメンな・・・・。」
何でこの人はこうやってしおれるんだろう。本当は私の弱点に気づいてるんじゃ無いだろうかと時々疑いたくなるんだけど、多分そういうことじゃ無いとなんとなく思う。というか、ゲームでのキャラとあまりに違うんですかど・・・・・・・・・これがリアルとゲームのギャップというものなんだろうか。本来こっちの・・・・・・、いや、無い無い。だってそんなの想像できないし、そうだったら疑問に思ったりもしない。じゃあ、何が違うんだろうか。ふとあることが思いつき納得した。――――妹。この人にとって私が妹だからだ。ヒロインは決してそんなものになった事はない。だから、これが答えなんだ。先輩にとって妹は、弱音や本音を言ったり、餌付けをしたりするものなんだ。
「お兄ちゃん・・・・・・・・・。」
先輩の手がピタッと止まる。
「お兄ちゃんが気にすることではないです。でも、・・・・・・ありがとう。」
先輩は驚いた顔をしてから、かなり喜びが勝った苦笑をして再び私の頭を雑になでる。
「ほかのやつらは、俺と慧が何とかしておくから、帰りに渡してやれ。」
「うん。」
私が返事をすると先輩は私の頭から手を離し帰っていった。