041.私の弱点
「で、雪菜って誰だ?」
「・・・・・・ゲームのキャラじゃないですか?」
気にするとこはそこか!?
現在昼休み、(私)vs(?)火室in教室前の廊下。
「それがどうしたんですか?」
「あと、何なんだ、あの吐きげの出るような甘いセリフは!」
「乙女ゲームなんでフツーです。」
いあや、あんたも主人公キャラが出てきたら吐くんだぞ、その吐きげの出るような甘いセリフを。と言いたかった。それ以前に、乙女ゲームのキャラが乙女ゲームに文句言ってるし。つまり、自分で自分を貶してるよねこの人。ププー、ウケルゥ。瞬君に後で言おう。そう思うくらいおもろい。
「乙女ゲーム?何だ、それは・・・・・・?」
「えーとですね・・・・・・・・、主人公キャラを操作して異性のキャラを落とすゲームです。主人公キャラが女の子だと乙女ゲーム、男の子だとギャルゲーになるんです。」
「楽しいいのか?」
「・・・・・・・まぁ、私にとっては。」
「じゃあ、貸せ。」
「っえ!?乙女ゲームをですか!?」
「そうだ。」
乙女ゲームのキャラが乙女ゲームをplay!?マジ!?マジで!?正気ですか!?・・・・・・・って、正気とかじゃなくて一般常識が無いだけだったこの人。
「いやいや、先輩は男性なんですからギャルゲーのほうがいいのでは?」
ちなみにギャルゲーも何個か所持している。
「真夜が好きなのはそっちなんだろう?なら、そっちだ!」
ダメだ、この人・・・・・・・・。何言っても無駄だこりゃぁ。
「・・・・・・・分かりました。ゲーム機かパソコンはありますか?」
「パソコンならある。」
「なら、CD-Rのやつを持ってきます。」
「あぁ、明日もってこい。」
話は終わったかなぁ、と思っていると先輩は再び話し始めた。
「なぁ、真夜。」
「?何ですか?」
「兄とかほしくないか?」
「はい?何言ってるんですか、いきな」
「俺がなってやる。」
「へぇ?」
思わず間抜けな声が出た。
「今日からお前は俺の妹だ!」
「な・・・・・・、何言ってるんですか!?」
アホだアホだと常々思っていたがまさかついに頭のねじが吹っ飛ぶとは!!
「ま、まさか実はお姉ちゃんのこと狙っていてどう頑張ってもダメだから、その家族から埋める作戦に出たんですか!?」
「違う!!」
お姉ちゃんは確かに美人だし・・・・・、と思ったら即答で否定された。
「じゃあ、なんで・・・・。」
「と、とりあえず、妹としてかわいがってやるから喜べ!!」
いや、正直お断りさせていただきたいのですが・・・・・・・・・・・。
「『お兄ちゃん』って呼んでいいぞ。」
いや、あんたの場合呼べてことだよね!?
「・・・・・・嫌です。」
それはさすがに却下。仮にそう呼んだとして、そのことについて他の人に突っ込まれたらどうする。どう返したらいのか私にはさっぱりである。とは言っても・・・・・・・、あんまりにもはっきりいちゃったし怒られるか?と思って恐る恐る先輩の反応を見ると、そこには拗ねた表情があった。
(こ、これは・・・・・・、ラブマジでも見たこと無い・・・・・・・・!)
この人が拗ねてるのはじめて見たよ!全ルート全パターン1回はクリアーしてる真弓でもはじめて見るよ!激レアもんだよ!(何○レ)珍百景だよ!まぁ、萌えはしないけどな。だって私だから。それどころか、
(ちょとつっついてみるかな・・・・・・♪)
悪ふざけしか思いつかなかった。この人相手だとそんなもん。
「もう、そんなに拗ねないでくださいよ。」
「っー・・・・・・、す、拗ねてなんか無い!」
「でも顔によーく出てますよ?」
「つ~~~~~!!」
いつも通りからかわれて少し顔を赤くする火室先輩。
(もしかして、コレが妹の特権なのか!?)
だから、他の人がしたら怒りそうなことしても怒られないのか?だとしたら納得もんだ。どこら辺まで〝特権" は有効なんだろうか。少し試してみる。私は爪先立ちをし、先輩の頬を突く。
「先輩は少し素直になったほうがいいです。ツンデレだってある程度の素直さは大切です。デレがなくてはツンデレではないです。」
このことは先輩のためにも言ったほうがいいことだが、これはさすがに怒るかなと思った。が、
「・・・・・・・分かってはいるんだよ・・・・・。」
先輩は以外にも素直に認めた。
「だけど、昔っからこうだから・・・・・・、直せ無くてな・・・・・。」
昔からって・・・・・、親の教育が行き届いてなさすぎでしょ!
「って・・・・・・・、なんか、らしくないな・・・・・・・・俺。・・・・・・でも、俺がこんなこと言えるの、真夜くらいなんだよ・・・・・・・・・。」
な、何か、いきなりしおれたー!!確かにらしくないよあんた!!そのせいで私の頭はあんたの感情についていってないよ、ついていけないよ!
「だからお前は俺の妹なんだよ・・・・・・、真夜。俺の本心を分かってるのはお前くらいなんだよ。」
先輩は悲しそうな顔をしながらそういった。まぁ、あんたは典型的な乙女ゲームにいる俺様キャラだからな。乙女ゲームマスターをなめるな。だが、今のあんたは何!?誰!?っていいたいくらいおかしいよ!!でもなんか、かわいそうに思えてきた・・・・・。何かこうもキャラ変されると困る。
「・・・・・・・・2人のときだけですよ。」
「え?」
あぁ、ダメだな私。
「2人のときだけ『お兄ちゃん』って呼びます、先輩のこと。」
キャラ変されたからって自分の意志を曲げちゃうなんて。いや、キャラ変が原因ではない。悲しそうな表情のせいだ。私は前世では病弱でそのことを真弓の両親は自分たちの(遺伝子)のせいだと真弓にばれないように嘆き悲しんだ。死ぬときも防護服越しに手を握りぽろぽろと涙を流しながらそのことを私に謝った真弓の両親。私は人に悲しい顔をされるとそのことをついつい思い出してしまう。そして、妥協してしまうのだ。本当に厄介なものだ。でも妥協した後に、うれしそうな顔をされてしまうとまたそうしたくなる。――――今の先輩みたいに。先輩はうれしそうな顔をしながら私の髪をくしゃくしゃにするように、悪く言えば雑に私の頭をなでて、
「はじっめからそういえばいいんだよ、真夜。」
と言った。あぁ、なんか弱みをみぎられた気分だ。実際その様なものだか本人が気付いていないのが唯一の救いだ。