039-2.盗聴して分かったこと
All風天視点
「みんな来て~!」
と月影先輩が言う。スピーカーからガチャリとドアが開く音がする。どうやら水原が月影家へ帰宅(?)したようだ。
『真夜ちゃん、調子はどう?』
水原に声だ。
『っあ!!・・・・・・瞬君かぁ。びっくりしたー。』
真夜の声となんかチャンチャカ音が聞こえてくる。何なんだろう、この音・・・・・?
『って・・・・・、また乙女ゲームやってたの・・・・・。』
あぁ、この音はゲームの音だったのか。
『いやー、ほら、今まで家に私しかいなかったからこそこそしないでやってたんだよ。やっぱ、イヤホンなしでplayできるチャンスを逃すわけにいかないよね!テレビのスピーカーのほうが高音質だから声優さんのイケボのグレードが上がるからね!』
『ま、まぁ、元気そうでよかったよ・・・・・。』
水原が少しあきれている。少しなのはいつものことだからなのだろう。馴れというのはすごい。
『あ、はい。コーヒー。コーヒー対牛乳、1:10でお砂糖2杯入れたやつ。』
『ありがとー!!』
聞こえてくるのがゲームの音だけになる。多分、一生懸命コーヒーを飲んでいるのだろう。
「お、乙女ゲームって何だ・・・・・?」
睦が俺も疑問に思っていたことをつぶやく。
「乙女ゲームって言うのは、えーと・・・・、よく分からない♪」
つ、月影先輩・・・・・・。分からないなら答えようとするな・・・・・。
「でもなんか、乙女ゲームやってると真夜って、『フラグが立ったー!!』とか『萌ー!!』とか『マジ、イケボ!』とかよく言ってるわよ。」
「「「・・・・・・・・。」」」
どう反応したらいいものか・・・・・・・。
『・・・・・・・で、真夜ちゃん、何があったの?』
『・・・・・。』
どうやら、コーヒーを飲み終えたようだ。
『あのとき・・・・・・、僕が真美さんを抑えるためにいなかったから、・・・・・・・なのかあったんでしょ・・・・・?』
『・・・・・・・・・・・・・。』
『言って。ひどいことされたなら代わりに仕返ししとくから、言って。』
『ち、違う、違うよ!そういうのじゃないの。ただ、そのー・・・・・、ぞ、俗に言う・・・・・告白というものをーされまして、えー・・・』
『「「「「!!?」」」」』
『で、でで、ま、まま、まま真夜ちゃんはどうしたの!?』
『と、とりあえず落ち着いて瞬君。えーと・・・・、「ごめんなさい、お付き合いはできません。このまま、友達でいよう。」って、言おうとしたら言わせてもらえなくて・・・・・・。強制保留にさせられちゃったの・・・・・・・。』
『強制保留って・・・・・?』
『私に好きな人ができるまで保留なんだって。それまではオタ友のままでいるの。』
『どうするの?それ。』
『うーん・・・・・・、私も困ってて・・・・。』
『ま、まさか、めんどくさいからって一度付き合ってみるとか言わないよね!?』
『言わないよ!どんだけ、私のことめんどくさがりだと思ってるの!?て、・・・・・実際かなりめんどくさがりなんだけど・・・・・。さすがにそこはめんどくさいけどそうだとは言わないよ!』
いや、もう言ってるのと同じだよ、真夜・・・・・・。
『それに、断る気満々だし、断る方向以外考えようとも思わなかったよ。』
それはひどくないか・・・・・。まぁ、正直その方が安心だとかは、考えなかったことにしておこう。
『っあ、そっかー・・・・・・。うん、そうだよね・・・・・。』
『そだよー、もう。私が困ってるのは、いくらオタ友のままでいいって言われてもどう接したらいいかってこと。・・・・・・・こんなのだったら、早く断わっちゃった方が楽だもん。白黒はっきりしないのはモヤモヤするもん。』
言ってることが子供っぽいが真夜らしいといえばそうだ。
『・・・・・・・、まぁ、とりあえずいつも通りでいいんじゃないかな・・・・・。変によそよそしくされるほうが向こうもいやだと思うよ。』
『で、でも、生徒会室で本気で一発殴っちゃったし・・・・・・・・!』
『あぁ、アレはすごかったね・・・・。』
確かにすごかった・・・・・。
『だ、だって・・・・・・、土田君あのときみんなの前でこのこと暴露しようとしたんだよ!だから、とめようと思って・・・・・・。』
ゴメン、真夜。もう手遅れだ・・・・・・。
『で、土田君を行動不能にしたわけね・・・・・。だからって、強化魔法使わなくても・・・・・・・。』
『っう・・・・・、だって、おねえちゃんが・・・・・、「男を殴るときは本気かつ全力でしなさい。それで立てないような男は男じゃないわ!!」っていっつも言ってたから・・・・・・・。』
そ、それはとてつもなく恐ろしい教えだな!!月影先輩ならではすぎる・・・・・・・。
『・・・・・・・・・。だからって本当に実行しちゃダメだよ・・・・・。下手したら、冗談抜きで死んじゃうよ・・・・・・・・・。』
『・・・・・・・・・以後気をつけまーす・・・・・・・・・。』
頼む、本当に洒落になってないから。
『あ、そうだ!見てみてー、瞬君。新しい精霊増えちゃったー♪地蔵さんこと地じぃ。』
『はぁ・・・・・・、何やってるの、もう・・・・・・』
『あと、ねぇ。このキャラの声優さんいい声してると思わない?』
「好きだよ、雪菜・・・」という、水原でももちろん真夜でもない声が聞こえる。
『ほーら、ね!』
『真夜ちゃん・・・・・・・。』