038.2つの好き
All風天目線
(あいつらに、何があったんだ・・・・・・・・?)
一応、手は動いているものの劇の小道具作りには全く集中できない。
「・・・・・・・・・、気になりますか?実。」
「うわぁ!!って・・・・・・・・・、慧か・・・・・・・・。」
いきなり耳元で声がしたので思えあずのけぞってしまった。さらに、俺はそのままバランスを崩してしまい、倒れる。床に頭があったたら痛い!と思っていたら頭が当たったのは床ではなく、
「イテ!!」
人の背中だった。
「おい!実!!」
「ゴ、ゴメン!ゴメンな、睦。」
床にぶつかるよりは痛くないが勢いが強かったため痛い。いや、多分、背中に頭が当たった睦のほうがダメージが大きい。本当に、すみません・・・・・・・・。
「どうしたんだ・・・・・?珍しくボーっとして・・・・。」
痛かったはずなのに睦は俺を心配してくれた。睦は、大体の人には目に見えるように優しくしてくれないが仲間だと認識した人間には表面的にも優しい。その仲間には今のところ親友の俺と慧しかいないのだが、そろそろ増えそうな気がする。そして、慧がクスクスと笑いながら睦の質問に答える。
「どうやら実は、月影さんと土田さんに何があったのか気になって作業に集中できないそうなんです。」
ちなみに真夜は心配だからと月影先輩命令で強制的に帰宅させられた。土田は真夜に一発入れられたのがかなり効いたらしくみんなで保健室へと連行した。今頃はお腹を抱えてなかなか治らない痛みにと戦っていることだろう。強化魔法って恐ろしい。真夜が初めて俺たちの前で強化魔法を使用し人を殴った。そのことにより俺たちは初めて真夜と月影先輩の血の流れを感じ恐ろしいと思った。だって、優しくめんどくさがりだけど世話焼きな真夜からは全く月影先輩を感じなかったから。それは俺以外の人も同じように思っていただろう。
「あぁ、あれか。確かに何があったのか気になる。」
「おや、睦もですか?」
え?俺は、驚きだ。慧はそこまで驚いてはいない。
「やっぱり、睦も月影さんのことが好きなのですか?」
慧は〝も" を強調していったが、別に該当しているのが慧自身ではない。って、えーーーーーー!!り、睦!?
「意外とあっさりしてますね。どこの誰かさんと違って。」
「どこの誰かって、誰だ?」
「さぁ、誰でしょうね?」
慧は楽しそうに言った。慧、俺を見るな俺を。
「で、睦はいつ告白するんです?」
おいおい、慧!な、なんか今日はやけに直球だな!!どうした!?・・・・・・って、面白がってるだけか・・・・・・。うん、それしか答えが無い。
「はぁ?告白って・・・・・・・、何か勘違いしてないか?」
「????」
「ではどんなので?」
「・・・・・そうだなぁ・・・・・・、孫」
((孫!?))
「は、・・・・・違うな・・・・・。娘・・・・・・・?うーん、何と言うかもっとこう・・・・、身近でなぁ・・・・・」
「も、もしかして妹とか・・・・・?」
「あ!!それだそれ!」
俺の答えの予想に睦は同意した。あぁ、そういう好きもあるのか。
「なぁ、睦」
「ん?」
「〝その好き" と〝勘違いしてた方の好き" って、どう区別がつくんだ・・・・・?」
1人っ子の俺にはわからない。・・・・・・いや、睦も慧も一人っ子だった・・・・・・。
「・・・・・そうだなぁ、なんていうかこぅ・・・・・・、好きだけど、甘くも苦くも無い。」
「???」
「重くなくて軽い。束縛したいんじゃなくて自由にしいてやりたい。」
「???????」
だめだ、さっぱり分からない。聞く相手を間違えたかなぁ・・・・・?いや、それ以前に、睦にしては珍しく真面目な答えが返ってきた。そのことが、真夜のことを妹として好きであることが偽りでないことが分かる。
「妹ですか・・・・・。なら、睦は月影先輩の弟と言うことになりますね。」
ちょ、ちょ、さ、慧、それは面白すぎる。ある意味そうであってほしい。
「あぁ、それとも月影先輩の夫ですか?それなら月影さんは睦の義妹になりますよ?」
慧、完全に面白がってるだろ。満面の笑みで言ってるんもんな。
「ない!それだけは無いぞ!!俺の人生を勝手に終わらせる気か!!」
「あら、睦、死んじゃうの?」
(((月影先輩!!)))
まずい人が会話に参戦して来た。
「月影先輩、どこから聞いていらしたんですか?」
慧が聞く。
「えーと・・・・・、全部、かしら・・・・・?」
「「「!!?」」」
「睦って意外とロマンチストなのねぇ!っあ、そうだ!睦、真夜に言ったら?」
(?)
「『お兄ちゃんって呼んでください。』って。」
こ、この人正気か!?・・・・・って、いつものことだった・・・・・。
「・・・・・・悪くないな。」
睦がぼっそり小声で言う。睦、正気か!?・・・・・まぁ、睦も人とずれてるところ、あるもんなぁ・・・・・。
「あ、そうそう。さっき、真夜と光に何があったのかって話してたわよね。なら、いい方法があるわよ♪ちょうど私も知りたかったし。」
月影先輩はニコニコしながら言う。
「瞬ちゃん!瞬ちゃーん。瞬ちゃ」
「何回も連続で呼ばなくていいですよ、真美さん。」
むしろ呼ばないでくれと言う顔をしながら水原が現れた。
「で、何の御用で」
水原が言葉を言い切らずに止めたのも仕方が無い。なぜなら、いきなり月影先輩は水原の首もとを触り始めたのだから。
「・・・・よし!!瞬ちゃん行ってらっしゃい!」
「えーと・・・・・、どこに・・・・・?」
「帰って、真夜の様子見てきてぇ。鍵は持ってるでしょ?」
「まぁ・・・、はい・・・・。」
完全に怪しんでいる。だが、この人に逆らってはいけないことを水原は誰よりも知っているので、言われたとおり帰り支度をし水原は帰っていった。この人と小さいころからかかわってると大変だな、と俺たちは帰り支度をする水原に同情の目を向けた。・・・・・・・・って、持ってるんだぁ、月影家の合鍵・・・・・・。