034.地じぃ
私が目を覚ました場所は半年振りの保健室だった。別に眼鏡がなくても日常生活に支障がないていどには見えているのだが、ついつい眼鏡っ子特有の眼鏡探しをしてしまう。「眼鏡、眼鏡ー」ってやつだ。それをやりながら私は起き上がりきょろきょるする。すると、視界にベットに突っ伏している人物を発見した。――――土田君だ。うーん、どうしよう。ここの長居するわけにもいかないし、だからといってこいつを放置するのを何か悪いし・・・・。
「土田くーん・・・・・・・・・・。」
土田君のほほを突きながら、名前を言う。・・・・・・・反応が無い。ただの屍のようだ。って、違う!!ただ寝てるだけである。もう、いっそのことひっぱたくか?いやいや、土田君が悪いことをしたわけでもないのだからそれはよくないだろう。
(そういえば・・・・・・・、この人・・・・、土の魔元素魔法師だったよね・・・・・・。)
これは土の魔元素を見てみる絶好の機会なのでは!?どうせ起きなさそうだし起こすのは後回しでいいよね?私は土田君に触れていた手に魔力を集中させた。すると、きれいな黄茶色の粒が見える。その中に1人の小人老人がいた。
「こんにちは。」
私は小人老人に声をかける。なんか漫画とかに出てくる老人みたいにプルプルとしているのが面白くて小人老人に声をかけた。
『お嬢さん、この老いぼれが見えるのかい?』
精霊はちゃんと返事をしてくれた。
「うん、そうだよ。」
『まさか、消滅しそうなわしを見ることができる人間に消滅する前に出会えるとはのう。この消滅しそこないの老いぼれが見えるとは、お嬢さんは人間で言うところの魔力と言うものが高いようだのうじゃのう。』
おじいさんの言うことが本当なら力をなくし消滅に近づいている精霊ほど魔力の高い人間じゃないと見えないのか。初めて知った。
「おじいさん、消えちゃうの?」
『・・・・・・・わしは生まれてから何人もの人間と契約してきた。じゃが、ここ百年ほど前からは年のせいで力が弱りわしが見える人間に出会えなくてのう、契約を交わせずさらに力の消費がひどくなっているのじゃ。だからもう、、長くは生きられないじゃろうな。』
「それってつまり・・・・・・、契約を交わせばまた生きられるってこと?」
『少しだけ長くじゃ。おそらく・・・・・・、主がなくなればわしは消えるじゃろうな。』
「お、おじいさん!!」
『なんじゃい?お嬢さんよ。』
「わ、私と契約しよう!!」
『この老いぼれとお嬢さんが?』
私はこくりとうなずく。
「そうすれば、おじいさんにとっては少しかもしれないけど、長く生きられるんでしょ?なら、生きようよ!」
『じゃが、長く生きたところでこの老いぼれには何もできん。』
「うーん・・・、終活とか・・・・、えーと、つまり・・・・・、せめて最後にやりたいこととかして自分のために生きたらどう?心残りは少しでも少ないほうがいいし・・・・・。それに、主が死んだら消えちゃうんでしょ?それってつまり、主と一緒に死ぬってことだよね?1人でさびしくしく死ぬより、2人で死のう。おじいさんはどうだか分からないけど、私は安心できるよ。1人じゃないんだって。」
理解しててもらえたな?
『この老いぼれでいいのかの?役に立てなくとも。』
「若いからって役に立つというわけではないよ。それに年をとっているからこそ知ってることってあるでしょ?それを私に教えてくれるだけで役に立ってるよ。」
『・・・・・・・・・、お嬢さんよ、この老いぼれに名をくだされ。』
「おじいさんの名前は・・・・・・・、地蔵。地蔵さんでどう?」
『わしの名は地蔵。この老いぼれなりにマスターの役に立つことを約束しよう。』
と言って、地じぃは、黄茶色のきれいな宝石がはまったチャームとなった。私はそれを魔道具につけた。その直後、数時間前同様後ろから抱きしめられた。