033.筆箱
二学期の始業式。また校長先生の長ーい、長ーい話を聞き終了。LHR前の休み時間。
「まやみん、まやみん!」
「ん?どうしたのゆかりん?」
「あの後、どうなった?」
「え?あの後って何のことぉ」
「まっやちゃーん♪」
「っつ、土田君!?」
後ろから勢いよく抱きつかれる。何かみょーになつかれてしまった。そして、バン!という音の後、
「イテ!!」
土田君が言う。気になって振り返ってみてみると、
「ゴメン。手が滑った。」
と言いながら筆箱を拾う瞬君の姿が目に入る。投げたんだね、筆箱。
「痛いよぉー、瞬ちゃーん。」
「〝瞬ちゃん" って呼ぶな!!」
「えー、だってぇ、月影先輩はそう呼んでたでしょ?」
「あの人は特殊・・・・、異常なんだ!!」
おーい、瞬君?
「まぁ、そうかもしれないけどぉ、」
おい!土田!!
「同じ1年生同士なんだから仲良くしようよー。」
「だからって、その呼び方はなし!」
そうやって二人がぐちゃぐちゃともめている(?)間、私とその場に元々いたゆかりんは
「どっちが〝攻め" だと思う?」
「土田君だよ~。」
「だよねー。でも、もうちょっとボディータッチが多目のほうがいいよねー。」
「これじゃあ、見方によっては普通の交流に見えるもんね~。」
「あ、でも、もっと深い仲になったら瞬君のほうからいくようになるかも!」
というわけで、横にいる土田君に瞬君を指差しながら
「もっと攻めて!!」
と小声で指示を出す私。
「ま、真夜ちゃん、ひどいよー!ゆかりんはともかく、真夜ちゃんはそっちのほうは守備範囲じゃないでしょ!?」
さすが土田君、ちゃんと通じたね!
「うーん、まぁ、そうなんだけど・・・・・・・、いい組み合わせなら有りかな!」
私の中のベストペアー、風天先輩&金島先輩ペアに負けてないぞ、瞬君&土田君ペア!するとゆかりんが、
「土田君が甘えてるのに、水原君が冷たいのがいいよね!!」
おーい、ゆかりん、珍しくはじけてるぞー。とはいっても、私も同意見なので便乗する。
「そうそう。明様なのと、外面的には見えないけど実は・・・・・・・・、みたいな!」
「「ねー♪」」
「ま、真夜ちゃん・・・、やめて・・・、泣きたくなってくるからやめて・・・・・。」
と、土田君が言う。
「いやぁ、仮に私がやめたとしてもゆかりんの喜び方が半端じゃないから。それより、ほら、ちゃんと仕事しないと!!」
「だから、そういうこと言わないで!そういう趣味じゃないから、俺!ちゃんと女の子・・・・・、真夜ちゃんのことが好きだから!!」
土田君のこの言葉で教室の空気が固まる。
そのなかでも一番早く再起動したのは、瞬君だった。瞬君は手に持っていた筆箱を再び投げた。だが、それこそ手が滑り土田君ではなく私の頭にクリティカルヒット。私はそのまま気を失った。