031.5.あの子と彼
金島目線
「ありがとうごいます」
ハーブティーのお入れ方を教え、お礼を言ったあの子の笑顔を思い出したら自然と笑みがこぼれた。
(あんなの、意味もなしに呼び出したお詫びなのですが・・・・・・・。)
そう、彼女には意味があるように言っておいたが実はあの子にっとても、私にとっても何の意味もない。意味があるとすれば〝自分が月影さんを呼んだ" という事実。しかしこのことも、私とあの子にとっては何の意味も持たない。意味があるとすればこれから来る客人にとってだろう。
「若様、風天実様がいらっしゃいました。」
「あぁ、ではここに案内してください。」
「かしこまりました。」
元々、彼がここに来ることは決まっていた。まぁ、それもまた親友を自分の家に呼んだだけなのだが。
「よう、慧。」
「こんばんは、実。」
「・・・・・・・誰か来てたのか?」
彼は期待通りの反応を見せる。このテラスをあの子が来た時のままにしといたかいがある。
「えぇ、来ていましたよ、月影さんが。」
「つ、月影が・・・・・・・・!?」
彼が眉間にしわを寄せる。期待通りだが、動揺したせいで彼があの子と2人きりでいるときのように下の名前であの子を言わなかったことが残念だ。そうしたら、からかおうと思ったのに、本当に残念だ。まぁ、いい。機会はまだある。
「いいハーブティーが手に入ったので。」
あの子に言ったのと同じ理由を言う。そして、侍女にそのハーブティーを持ってこさせる。
「これですよ。」
「・・・・・。」
彼はハーブティーを受け取り、飲む。美味しかったようで、彼らしくなかった眉間のしわがとれいつもの彼の顔に戻る。
「月影さんもお茶が好きなようで、美味しそうに飲んでいましたよ。」
彼は、今度はムスーっとしだす。予想通りすぎて面白い。
「そういえば・・・・・・、明日、花火大会がありますねぇ。」
「・・・・・なんだよ、いきなり・・・・・・・。」
「行ってきたらどうです?あの子と。」
「だ、だから、なんで、すぐそうやって・・・・・、月影と・・・・・・・!」
「私は〝あの子" とは言いましたけど、誰とはまだ言ってませんよ?」
「!!!」
「まぁ、それであってますけどね。」
「ーーーーっ!!」
そう怒るな。面白すぎる。
「明日は月影さん、お暇なようなので誘っても断られないと思いますよ。」
あのとき、わざと自然とあの子が明日の予定を言うように会話を誘導したのはこのためだ。
「だ、だから何で月影と・・・・・・・・」
「あなたこそ、わざわざ親友に特注の魔道具を発注した相手に何もしないのですか?」
そう、あの子が現在使用している魔道具は私が実に頼まれて、私の家の会社で作ったものだ。私の家の会社は魔道具専門の会社で、会社と契約している職人のプライドが高いことからすごく大きな会社ではないのだがそこそこ名の通った会社だ。ちなみに、彼の父親は私の家の会社の重役の1人で昔からの親友だ。また、睦は会社の大きな取引先の会社の息子なので三人で仲良くやっている。
「あ、あれは・・・・・月影が誕生日だったからで・・・・・・」
「まぁ、花火大会のことはあなたの好きにしてください。」
しばらくして、彼は帰っていった。その帰る姿を部屋の窓から眺めていると、彼は携帯を取り出し少し赤くなりながら電話をかけている。少し話した後うれしそうな顔をする。多分、あの子に花火大会のお誘いをしたらよい返事が返ってきたのだろう。
あの子には礼を言いたい。あの子のおかげで彼で遊べるのだから。
親友に春が来たのは、うれしいような寂しいような。だけど、あの2人の仲のよい恋人としての姿を眺めるのは悪くないと思う。
つまり金島は風天で遊ぶために真夜を呼んだのでした。暇なのか?金島よ。