025.魔王様の仕打ち
私があわてて家に戻り、前に使っていた魔道具を持ってきた。長さを金属フックを止める位置を変えれば誰でも使えるただのシルバーの細い金属で編まれただけの男女兼用タイプ。今使っているのも長さは変えられるが、デザイン的に確実に女性用である。もらた後から気がついたんだけど、男女兼用タイプでもけっこうするのに女性用なんて・・・・・・・。これもらっちゃっていいのか!?と思った。
生徒会室に戻ると、金島先輩が小さな金属フックの付いた小さな丸い石を持っていた。なんかいろいろな色がマーブルカラーに混ざっていて変な色。
「あぁ、月影さんお疲れ様でした。」
と金島先輩が笑顔で言う。いったい魔王さぁ・・・・・・・・、先輩は何をやろうとしてるのやら・・・・・・・。怖い。そして私が何するんです?と言う顔をしながら魔道具を金島先輩に渡すと、先輩は話し始めた。
「この石の、あなたの魔法を記録します。そうすれば一時的ですが精霊魔法師以外の人間に精霊を見せることができるはずです。」
まぁ、確かに。
「私の使役している精霊のみなら見えると思います。」
と私は返す。
「それで十分です。・・・・・・・あぁ、月影さん。この石に魔力を注ぎ込んでください。」
「?」
「魔力をこの石に当てればあとは石が勝手にあなたも魔力を取る込むので。」
私は変な色の石に力を集中させる。
(・・・・・・・・なにこれ・・・・・・・、力が・・・・・・吸われる・・・・・・・。)
体の中にある力が吸われる感覚。そして石がパッと光、力が吸われる感覚が無くなる。魔力不足のときと同じふらつきに襲われる。すると風天先輩が私に駆け寄り「大丈夫!?」と言い、背中を支えてくれたので倒れはしなかった。
「ずいぶんと力をこめましたね・・・・・・・・。」
金島先輩が石を持ち上げ見ながら言う。石はさっきの変な色ではなく、夜空に輝く月のようなきれいな薄い黄色になっていた。
「もしかして、これを使うのは初めてでしたか?」
「・・・・・はい。その石を見るのも初めてです・・・・・・・。」
「この石は人の魔法を記録する石です。動力源に魔法を記録した人の魔力を使用し、そのために記録する際に記録した人がこめた分の魔力を吸収します。その吸収した魔力が尽きると元の色に戻りリセットされます。なので、記録すると言うよりかは、魔力をためておくと言ったほうがいいかもしれませんね。厳密には記録をしているのですが。そして、記録した魔法はこの石を見につけたほかのものにその魔法を使用させることができます。」
金島先輩は石を眺めながら話を続ける。
「この石は記録した魔法の性質をを色で表します。月のような優しい輝きをしていますね。あなたの魔法はそういう魔法なのですよ。」
「?」
よく分からないと言う感想が顔に出てたらしい。しかし、金島先輩はそのことについては説明せず、いつもの(正直胡散臭い)笑顔を私に向けただけだった。そして、石を私が前に使っていた魔道具につけた。
「月影さん、睦に見せる精霊はどれですか?」
と言われ、私は火奈ちゃんチャームを金島先輩に渡した。金島先輩はチャームを石と同様に魔道具につけ、火室先輩に目で手を出せと要求。やはり、笑ってるはずなのに怖い!
「や、やめろ!!」
といい火室先輩が後ずさる。火室先輩にとって火奈ちゃんと四六時中一緒とはさぞかしつらいことだろうよ。嫌がるのは当たり前。だが、金島先輩は引くどころか優勢である。金島先輩は(かなり怖い)笑顔で火室先輩を追い詰めていく。ついに、火室先輩が自分の背中が壁についたとき口を開いた。
「おい、真夜!お前だって、精霊がいないと困るだろ!いいのか!!」
と、遠まわしに助けろと要求。だがあいにく、石に魔力を吸われ魔力不足である私に助ける力などありゃしない。それ以前に魔王様モードの金島先輩に逆らえるものなどお姉ちゃんくらいしかいない。
「大丈夫ですよ、月影さん。精霊は、主が呼べばいつでも飛んできますから。」
と言う。精霊魔法師としても先輩である金島先輩が言うのだから間違えない。なら、火奈ちゃんは確実に喜んでいるだろうし喜んで火奈ちゃんを送り出そうではないか。金島先輩は私が了承したと判断し、もう逃げ道の無い火室先輩の手をがっしっとつかみ、手首を引っ張り出す。そして火室先輩に魔道具を装着し、魔道具の金属フックのところに白い紙を当てるとその紙は道具に吸い込まれる。火室先輩はあわてて魔道具をとろうとするが取れない。
「あぁ、その魔道具は私にしか取れないようにしましたから。」
と楽しそうな笑顔で金島先輩は言う。あの白い紙は道具だったんだー。
「あとこれは・・・・・・・・」
と言って金島先輩が持っていたのは火室先輩が持っていた遊園地のチケットだ。いつ奪い取ったんだか・・・・・・・。
「はい。行ってらっしゃい。」
と言い、笑顔で私と風天先輩に渡した。
「「「!!?」」」