188.合宿(?)09~〝皆のおかん〟=〝ボケられたらツッコム〟!~
タオルを取りに戻った後、
(上手く誤魔化せた・・・・・・・!)
テンションが上がっていた。一緒にいたのが実先輩だったというのが成功の鍵だったと思う。
実先輩は相当怪しくない限りは人を怪しまない人だ。もし、瞬君とか魔王とか魔王の犬だったら確実に怪しんでいたことだろう。
(あとは、私が1人で何とかすれば良い。)
百合ちゃんはヒロインだからともかくとして、関係の無いゆかりんが巻き込まれてしまうのは非常に申し訳ないのだが、私が傷1つ無い状態で助け出せば良い話なので謝るのは保留にしておこう。でも、今度なんか奢ろう。それかBL小説の1冊でも買ってやるかぁ。
私は、女湯の脱衣所に入った。そこで、服を脱ぐわけでも無くスタスタと歩いてゆく。向かう先は女湯の露天風呂。歩きながら、魔道具・アルテミスをハンドガンへと変形させて、小声で自分の全使役精霊を召喚した。
(あとは中にいる人を・・・・・・・!)
私は風呂に入ろうとした。が、
ガタン!!
私はその辺に落ちていた桶につまずいた。そのせいで大きな音を立ててしまった。
(ま、マズイ!!)
しかもそれだけではなく、転んだ体制、うつ伏せ状態のままスライディングして風呂場にGOした。
「!!う、動くな!!」
1人の女性の声が私に向かって飛んできた。
「あ・・・・・・・。」
私は顔を上げた。どうやら、ハンドガンを見られてしまったらしい。だって、2人の女性が各自ゆかりんと百合ちゃんを拘束し、百合ちゃんを拘束している女性は私に、ゆかりんを拘束している女性はゆかりんの頭に、それぞれ銃を向けているんだもん。私が敵認定された証拠だよね!私なんてパッと見ただの(中学生じゃなくて)女子高生(に見えると良いな♪)だし、敵認定された理由なんてハンドガンぐらいしかないもん。
(だ、大ピーンチ!)
2人(いや、主にゆかりん)が人質にとられちゃったし。・・・・・・・て、動くなって、私うつ伏せ状態のままですか・・・・・・!?
私に銃を向けた女性が、そのままトリガーを引こうとしている。え!?私、言われたとおりに動いてないよ!?
「み、水姫姉さん!!」
召喚していた水姫姉さんに助けを求めた。水姫姉さんは私の頭の中の指示を読み、それに従った。お風呂のお湯を凍らせて壁を作ったのだ。その後、氷に実弾が当たった音がした。あ、危ない・・・・・・・・・・・・。しかもその際に大きな水飛沫が上がった。あ・・・・・・・、バレタなこりゃ・・・・・・・・・・・。もう、いろいろなことが終わった感じがした。いや、実際終わったと思う。氷の壁に隠れたまんま、数秒間放心状態になっていると、
「月影!!」
ライライの声が降ってきてハッとした。
(ライライキターー!!)
「覗き!?へ、変態!!」
私は自分の失態を誤魔化すため変なボケをかました。
「くだらないボケをかましてる場合じゃないだろ!!」
とつっこまれてしまった。〝変〟どころか"くだらない〟だったかぁ、このボケ。
「っう・・・・・・・・。」
しかし、流石は〝皆のおかん〟の異名を持つ男。突っ込みの機会は逃さないね!
とりあえず、うつ伏せ状態から起き上がることにした。
「どういう状況だ?これ。」
とライライが質問してきた。
「敵は女の人が2人。それぞれが、ゆかりん・百合ちゃんを拘束してて、ゆかりんが銃を突きつけられてる。私を撃ってきたのは百合ちゃんを拘束してた方の女性。」
「ッチ・・・・・・・・。めんどくさいな。」
ライライが舌打ちをした。
「あの2人じゃ自力で脱出できないもんね。私じゃあるまいし。」
「いや、あんたはできてもするな。」
すごく睨まれながら言われた。
「えぇ~~。」
「『えぇー』じゃねぇ!駄々こねるな!」
「ライライ、そういうところがライライはおかんなんだよ?分かってるかい?」
「あんた、後でお説教決定だな。」
「えー、ヤダー。ライライのお説教長いんだもん。寝ちゃうよー。」
「寝るという点では大丈夫だ。俺のと同時に、魔王からの恐怖の説教を食らうのも決定だから。」
「ヒィィーーー!!」
今からもうすでに寒気がする。ライライはざまぁみろという顔をしてる。クソッ!
「ところで月影。」
「ん?」
「・・・・・・・・1つ案がある。」
「え?何々ー?」
「俺の能力を使う。」
「え!?ライライのって・・・・・・、雷?」
「あぁ、そうだ。」
雷の魔法。正式には雷の魔分子魔法だ。魔分子は複数の種類の魔元素を複雑な比率で合成した粒子のこと。
考え方としては、化学元素にとても近い。魔元素は基本、風・水・火・土、の4種類がある。この4種を四大魔元素と言い、この世の粒子系を扱う魔法の粒子の殆どはこの四大魔元素をありとあらゆる比率と組み合わせてできている。化学で言うならば、
2H2+O2→2H2O
、と同じ感覚。魔分子魔法はこの合成を瞬時に本能で行い、その合成した魔分子を操って物質を生成したりする魔法。ライライの場合は雷の魔分子を合成し、雷・電気を生成し操る魔法。自然界に存在する電気や雷に自分の使役可能な魔分子を埋め込めば自然界にある雷・電気を操ることも可能。基本的に魔元素魔法も魔分子魔法も原理が少し違うだけでできることは殆ど一緒。まぁ、ライライの雷魔法はオプションで静電気のあのビリッてなるのを食らわないっていうのがるんだけどね。『電気は友達怖くない、怖くないよ』ということ。冬場のドアノブはライライに空けてもらおう♪
「でも、あれじゃあ、ゆかりんと百合ちゃんも危険じゃない?」
雷の魔法は1回落とせば広範囲に攻撃することが可能。だけど、静電気でお分かりだと思うが、電気は触れたものに伝わっていってしまう。犯人さん達がゆかりん達に触れている今、有効ではないはずだ。
(も、もしかして・・・・・・、我慢大会とか!?ライライの鬼おかーん!!)
「んなはずあるか!!」
「え!?今の何に対するツッコミ!!?」
「あんたの心中のボケに対するツッコミだ。」
「嘘!!筒抜けだった!?」
「あんたはいつもそうだろ。いい加減学習しろ。」
「うん。分かってる♪」
「分かってねぇだろ!・・・・・・・・・て、こんな漫才してる場合じゃない!!」
「いやー、ゴメンゴメン。ライライいるとちゃんとつっこんでくれるから、ついボケたくなるんだよねぇ。」
「時と場合を考えろ。」
と言ってるライライもツッコミを止める気無いよね。まぁ、ライライの場合〝ボケられたらツッコム〟が本能と化してるんだろうけどさ。〝皆のおかん〟だから。
次話は明後日、21日木曜日午前7時にup