017.火奈ちゃん
「もしかして、あなたの仕業なの?この熱。」
私は治癒魔法を止め、精霊に問う。日の魔元素がその精霊に向かってきて、そのあと精霊に取り込まれている。つまり、精霊が力を使っている。
『・・・・・・・・・・。』
「どうしてこんなことしたの?」
『こ、こやつが・・・・・・、ほかの女子ばかりつるんでおるから・・・・・・・・。』
「・・・・・・・・・・・?」
『妾というものがありながら・・・・・・・・、こいつは・・・・・・。』
えーと、つまり・・・・・・・・
「あなた、火室先輩のことが好きなの?」
『・・・・・・・!!』
精霊が顔を真っ赤にさせる。あー、恋する乙女のやきもちと言うやつですか。
「熱を出せば先輩がおとなしくなると思ったのね?」
「・・・・・・・・・・・。」
少しの沈黙の後、精霊は素直にこくんとうなずく。
「でも、こんなに高い熱を出させちゃったら死んじゃうよ。
『・・・・・・!!』
まぁ、精霊に死ぬと言う概念はないからね。魔元素の固まりだし・・・・・。〝死ぬ" というか〝消える" とか〝自然に帰る" って感じだって水姫姉さんがいってた。
『でも・・・・・・・・・。』
「うん。分かってる。」
私はうなずく。
「先輩、今の聞いてましたか?」
先輩はうなずく。
『!!見えるのか!?こいつにも、妾が!?』
「うん。私の能力でね。・・・・・・・で、先輩、風邪じゃないみたいですよ。どしますか?」
これは私がどうにかできることではないので、当事者に投げる。
「おい・・・・・、精霊・・・・・・・、熱を解け・・・・・・・・。」
先輩は自分のほほから私の手を離し、手を繋いだままおろす。触れてないと見えないからね。
『・・・・・・いやじゃ。』
精霊は火室先輩の顔の高さのところでフヨフヨと浮いて先輩と向き合っている。
「・・・・・・・・さっきこいつが言っていた通り、死ぬぞ・・・・・・・。」
『・・・・・・。』
私は2人が話している間に風太君を召喚し先輩に涼しい風を送る。そして、空いているほうの手でポケットからハンカチを取り出し、そのハンカチで先輩の汗を拭く。
『だったら、その女癖を直せ・・・・・・・。』
うん、先輩の将来のためにもそうしたほうがいいと思う。だが正直、無理だと思う。それが、火室睦と言う人だし・・・・・。先輩は少し悩む。
「・・・・・・・・分かった」
っえ!?
「・・・・・・少し自重する。」
すごく〝少し" を強調した!!
「それで・・・・・・、どうだ・・・・・?」
『・・・・・・・・。』
「なだったら、こいつに見張らせる。」
っえ!?私!?
(勝手に、私を巻き込むなー!!)
と言うわけで、少し口を挟ませていただく。
「だ、大丈夫!私のお姉ちゃんが先輩の上司だから!お、お姉ちゃんが見張ってくれるから!!」
「な、なんだと!?」
先輩がギョッとし、青い顔をする。そんなに恐れられてるの、お姉ちゃん・・・・・・・・。
『・・・・・・・分かった。』
精霊がそう言うと、力の流れが止まって、先輩の顔が穏やかになる。
『おい!!・・・・・・・・そなたじゃ、そなた。』
「っえ!?私!?」
まだ何か!?
『そうじゃ。・・・・・・・妾に名を与えよ。』
あー、私に使役されて先輩を監視するつもりね・・・・・・・。
「うーん・・・・・・・、じゃあ・・・・・・、火奈。火奈ちゃんなんてどう?」
『うむ!妾は火奈。マスターの役に立つことを約束するぞ!!』
そう言って、火奈ちゃんは赤い宝石のはまったチャームになった。それに驚いた先輩が私と繋いでいた手を離す。風太君にチャームに戻ってもらい、2つのチャームを魔道具につける。火室先輩は私がその辺に放り投げた先輩の汗を拭いたハンカチを持っていってしまった。まぁ、能力上こうやって人を助けることが多いのでハンカチはいつも4,5枚は持っているので持っていかれたところでどうってことはない。しかもその中で気に入って言ってないほうの部類に入るハンカチだからな。