016.火室睦
私は校内にある自動販売機に行くために廊下を歩いていた。すると、後ろから足音がする。気になって振り返ってみるとそこにいたのは、風紀を乱す不付記委員ちょぅ・・・・・・、じゃなくて風紀委員の火室睦先輩であった。しかし足取りがフラフラしている。顔が赤いし息が上がっている。これは誰がどう見ても風邪。ではなぜ、保健室とは反対の方向となるここにいるのだろう。すると後ろから「睦ー。」と何人かの女の人達の声がした。どうやら、その人達から逃げているようだ。どうせ何人もはべらせて、手に負えなくなったのだろう?・・・・・・・・いや、違う。私はそう判断した。
(たぶんゲーム通りのキャラっぽいから、この人。)
そうならば、助けたほうがいいと思った。近くに空き教室もある。よし!!
「火室先輩!!」
私は、声をかけた。
「・・・・・・・・つ、・・・・・・・月影妹か・・・・・・・・。」
よく覚えてましたね、えらいえらい(W)。火室睦と言うキャラは人も名前を覚えるのが苦手。なにしろ、何人もの女をはべらせてるから覚え切れないんだよ。ラブマジでは、まず名前を覚えてもらうまでに苦労をする。あー、すんごくめんどくさかった。
「先輩、あそこの空き教室まで歩けますか?その後は私がごまかしておくので。」
「あぁ」
と返事をした後、先輩はフラフラした足取りで教室に入り教卓の後ろに身を隠した。それを見届けた後、私は大声で、
「っあ!火室先輩だー。職員室のほうにいちゃったー。」
と言った。ちょー棒読みだけどな。棒読みにもかかわらず、女子生徒たちは私の言葉をうのみにし職員室のほうまで行ってしまた。そして私は、火室先輩がいる空き教室に入り先輩の斜め前にしゃがみこみ先輩に声をかける。
「もう大丈夫ですよ。職員室のほうに走らせておきましたから。。」
最悪、廊下を走るなと怒られるだろう。
「・・・・・・・・・熱、あるのにあいつら・・・・・・・・。」
「うつしちゃうと大変ですもんね。」
「!!!」
「うつしちゃいたくなかったんですよね。それで、『来るな!!』とか言ったらむこうはあおられて、追いかけられてしまったんですよね?」
「・・・・・・・・・。」
無言の肯定。確かに火室睦と言うキャラは表面的には、女ったらしの俺様やろうと言う乙女ゲームの王道キャラである。しかし、実は結構優しかったりする。すごく分かりにくいのだかな。ツンデレぎみなんだよ。ラブマジの火室派の人達にはそこがたまらなかったみたい(ネット情報)。風天先輩派の私には全く理解できん。
「先輩、ちょっとおでこ触りますよ。」
一声かけて私は熱を測るため火室先輩の額に触る。先輩も、熱を測るためだと理解したようで無抵抗だ。
「っあ!!」
思わず声を上げてしまうくらい熱い。死んじゃうんじゃない!?と思ったほどだ。熱くて条件反射で離した手を火室先輩につかまれそのまま
「冷たい・・・・・。」
火室先輩は自分のほほに私の手を自分で当てそうつぶやく。別に私が冷え性なわけではない。ただ、人並みの温度である私の手を冷たいと思えるほどに火室先輩の熱は高かったのだ。
「先輩(ちょうどいいので)治癒魔法かけますよ。」
「あぁ。」
了解があったので、私は先輩に治癒魔法をかける。別に治癒魔法をかける最対象者に触れる必要はないのだが近いほうが私の負担がない。どうせ話せと言ったところで話さないのでこのことを有効活用させてもらう。先輩に触れている手に私は力を集中させた。
「・・・・・・・・・?」
(あれ・・・・・・・・・・?)
全く効いてない。人間という生き物は風邪をひくと免疫ができる。なので、できるだけ自分の力で風邪は治したほうがのだ。そのたて、軽く熱を下げる程度の効果のみを狙って魔法をかけた。つまり、手加減をしたのだがそれでも全く効かないのはおかしい話である。そしてもうひとつ。現在、火の魔元素魔法師である火室先輩に触れているため、赤いきれいな粒―――――火の魔元素だと思われるものが見えているのだが、なぜかそれは先輩に向かって集まってきている。その向かっている点を見ると先輩の方に幼い小人の女の子がいた。精霊だ。