149.体育祭練習2
「「・・・・・・。」」
体育祭練習3日目。
体育祭練習参加禁止令が出された者がもう1人出た。植幸君である。植幸君もこけるのオンパレードで植幸君の足は傷だらけだ。1日目は植幸君の種目が無かったのだが、2日目にこけまくり私と一緒にいるという現状に至る。
人気者と化さなくなった実先輩は人に見せ付けたいようで積極的にイチャイチャしようとしてくる。まぁ、私もなんかんだ言ってイチャイチャしたいんだけどさ。
で、本日。ブラコン兼シスコンであるお兄ちゃんも加わって、そのせいで金島先輩も増え、ギャラリーが増量した。金島先輩、確実にギャラリーを増やして精神的ダメージを食らわせようとしてるよね、主に私に。魔王はいつだって人をおもちゃにすんるんだよ。
「睦、お菓子頂戴。」
実先輩にそう言われたお兄ちゃんはポケットから小さな紙箱を取り出し、
「ほれ」
と言って、実先輩に投げた。実先輩はちゃんとキャッチした。おおー、50%ぐらいでしか成功しないのに!ちなみに、あとの50%は実先輩がドジを踏んで失敗する確立だ。
実先輩は箱を開けた。中身はクッキーだった。香りからして、柑橘類の味なんだと思う。実先輩はクッキーを箱から出して、
「はい、真夜。」
私に、あーん、を仕掛ける。当然、、実先輩+お菓子、のコンボに完敗し、そのままあーんを受ける。
(甘いんだけど、干したオレンジの皮の酸味でしつこさが消えていくらでも食べられちゃうー!!)
ギャラリーの存在もすっかり忘れて、口の中のものを楽しむ。
そう、ギャラリーの人々がそんな私を写メっていたことも、その中の1人に写メをくれと彼氏が交渉していたことも、その交渉が成立し、彼氏がその写真をしばらく携帯の壁紙にしていたことにも気付かず口の中のものを楽しんでいた。
口の中のものが食道に降りるベストタイミングで、実先輩がクッキーを差し出してきた。タイミングが絶妙だ。お兄ちゃんの、自分の好きなタイミングで問答無用に口の中に詰められるのに慣れてるから、すごく変な感じがする。
お菓子の美味しさでギャラリーの存在をすっかりぽんと忘れている私は、箱からクッキーを取り出し、
「実先輩も、はい。」
あーんを仕返す。先輩はすごく驚いた顔をした後、すごーく嬉しそうな顔をし、私の指に摘まれたクッキーを私の指先1cmぐらいまでと一緒に自分の口の中に含んだ。
「!!?」
こ、これは、だ、大胆、すぎやしませんか!?ギャラリーの人々や植幸君達も気付いてないと思うが、口に含んだ指先を1回舐められたから、確実に確信犯だ。
先輩が私の指を解放した。あまりの衝撃的な行動に、私はあーんの体制から固まったままだった。先輩はクッキーを飲み込んだあと、
「うん、美味しい。」
私にも分かるくらいうっとりとした表情で言う。思わず変な意味で取ってしまいそうなくらい。そんな先輩を、ポーと赤くなりながら見つめている私に、さらに止めが刺さる。
「もちろん、真夜が、だよ。」
と私が骨抜きになってしまう声で囁く実先輩。
完敗した。私はぐらりと倒れた。それを慌てて実先輩が受け止める。多分、あと数秒で意識を失う。
「あー、やりすぎちゃったかな・・・・・?」
(はい、やりすぎです・・・・・・・。)
私は心の中でそう返事をし意識を途切れさせた。
で、その後。私は実先輩に膝枕をされるというチョー幸せ状態になっていた。だが、ギャラリーの存在を思い出し、恥ずかしかったので、体育祭練習が終わってギャラリーが帰るまで気を失ったままであるふりをした。
次話は明後日、16日木曜日午前7時にup




