123.お嬢編07~嫉妬~
あれから2日経った。昨日は、お嬢はもちろん風天先輩にも関わることがなかった。
まぁ、しょうがないと言えばそうなんだけど、正直に言うと寂しい。私を守るために接触しないようにしているのだと分かっていても寂しいものは寂しいのだ。
(いつまで続くんだろう・・・・・・・?)
そう考えながら、飲み物を買いに校内にある自販機まで歩く。風紀委員の方に回されてから仕事がないため、瞬君としゃべるくらいしかすることがない。だから、のどが渇く。お茶なら電気ポットがあるから飲めるけど、たまにはジュースでも飲みたいんだよ。
遠くで人が胸を押さえ、苦しそうに倒れている。横には人がいる。あれは・・・・・・・・、風天先輩。と、お嬢だ(おまけ感覚w)。お嬢って、手術に成功したものの時々発作が出て苦しむんだよなぁ。などと、人事感覚でゲームの記憶を思い出す。これが、お嬢じゃなかったら自ら助けるけど、お嬢だしな。まぁ、風天先輩に頼まれたら重い腰を上げて助けますか、と自分の考えを決め、歩く。
向かう先には「おい、大丈夫か!?」と言っている風天先輩がいる。私には気付いていないようだ。お嬢のほうは分からないけど。
お嬢がゆっくり手を伸ばし、風天先輩の頬に触れる。
(ん??)
私は立ち止まった。2人のところには到達していないが、あと3mぐらのとことだ。
倒れていたお嬢は顔を上げ、そのまま自分の顔を風天先輩に寄せる。事実はどうであれ、傍から見れば2人は――――キスをしていた。
「っあ・・・・・・・・・!!」
思わず、私は声を漏らした。その声で、風天先輩が私に気付いたのと、私の目から1粒の涙がこぼれたのは同時だった。
「・・・・・・・・・!!」
そのことに私は驚いた。まぁ、当然といえば当然か。だが、このままだと、1粒どころかポタポタと何粒もこぼれてきてしまいそうだった。なので、私はそのまま後ろを向き逆走をしようとした。が、
「真」
風天先輩が私を呼ぼうと1音出した。それと同時に、
ズコ!!
私はこけた。だから、風天先輩が1音出しただけで固まったのだ。こんなときに、ドジをかましてしまった。クソッ!!私は痛かったが、強化魔法を使い素早く立ち上がり、そのまま走り出す。目指すは人がいないはずの旧校舎!体は走ることのみに集中。頭の中ではさっきのことがエンドレスリピートされている。後ろから足音がする。ただの足音なのに、風天先輩だと分かった。足音で誰だか分かるくらい、風天先輩が好き。だけど、この人は私じゃない人と・・・・・・。
さらに、涙が頬を伝う間隔が短くなってきた。正直、泣く資格すら無いというのに勝手だ、私。だって、私と風天先輩はただの先輩と後輩でしかないのだから。どんなに、私が風天先輩のことが好きでも、私がどれだけ長い、・・・・・・前世からあの人に片思いの恋をしていたとしてもこの事実は変わらない。それはとっとと告白しなかった自分が悪い。他の誰も、悪くない。大好き、大好き、大好き、風天先輩が大好き。だからポロポロと涙をこぼしている。
1人になりたかったのに、風天先輩が追いかけてくる。醜い嫉妬をして泣いている姿を世界で1番大好きな人に見られたくない。恋人になんてなれなくて良い。だから、せめて、私のことを嫌いにならないで!
そう思ったとき、ついに体が強化魔法に耐えられなくなり、またこけ
「真夜!!」
―――かけた。そう、完璧にはこけなかった。だって、いつのまにか風天先輩が私に追いついていて、後ろから抱きしめて支えてくれたから。
「放して!!・・・・・・、放してください・・・・・・、先輩。」
私はもがいた。が、先輩は抱きしめる腕に力をこめる一方だ。そして、先輩は私の髪に自分の顔を埋めた。だから、上手くもがくことができなくなった。それでももがき続けるが。
しばらくの沈黙の後、一呼吸してから先輩はこう言った。
「真夜・・・・・・、好きだよ。」
その言葉で、私の頭は真っ白になった。先輩は自分の顔の角度を変えて、
「大好きだ・・・・・・・。」
と私の耳元で言う。
私はもがくのをやめた。
次話は明日、31日日曜日の午前10時にup
この話の風天目線verを『裏・学園ラブアンドファンタジーをやってみたin乙女ゲーム』の方にupします。
6月1日月曜日、午前7時にup予約をしておくのでぜひ読んでください。




