011.黒ずくめの男は本当に存在する
「っあ、入試のときはありがとうございました。」
「そうだった。そのときの話をしようと思ってたんだった。・・・・・・・・あの後大丈夫だった?」
「はい。保健室で寝てたら元気になりました。瞬君ともちゃんと合流できましたし。」
「っあ、そぉか!あのときの、水原だったのか!・・・・・・・・・仲良いのか?」
「はい。小学校に入学してからの幼馴染です。今では大親友です。」
「・・・・・・・・・。」
先輩がなんともいえない顔をする。先輩は、その後はっとし、ごまかすように明るめの声で話を切り替える。
「そういえば、あの時何を言おうとしてたんだ?」
私が頭の中であのときを模索する。
「手紙・・・・・・、気付いてくれたか?約束だただろう?」
(覚えててくれた・・・・・・・・・!!)
私は、あのときを思い出したと同時にうれしさを覚える。
「っえと・・・・・・・、それは私の能力についてで・・・・・・・・・。えーと・・・・・・・・、どこまでご存知ですか?」
「細胞活性以下魔法と精霊魔法の二つが使えて、現在は水の精霊と契約中。これだけかなぁ?っあ、ちなみに、これは新総務会役員の調査書のチェックのときに得た情報。・・・・・・・そういえばあの時、自分の魔法の応用って言ってたよな。」
「・・・・・・・・ざっくり言うとそういうことなんです。細胞活性化魔法で目の細胞を活性化し、魔元素や精霊が見えるようになるんです。でもそれには条件があるんです。」
「条件?」
「その条件は魔元素魔法師に触れることなんです。そうすると、お互いの能力が作用し、魔元素魔法師が使役可能な種類の魔元素や精霊を見ることができます。」
「それはすごいな・・・・・・・!!」
女神様の力だからね。すごいに決まってる。
「じゃあ、水の精霊と契約したときは水原と・・・・・・」
「手を繋いでいました。」
また先輩がなんともいえない顔をする。が、今回はすぐに直らなかった。
「ということは、あの時ふらふらしてたからって支えたのは逆効果だったのか・・・・・・・・!!」
今度は、やってしまった!!と顔に書いてある。
「あぁぁぁぁぁぁーーーー!!気、気にしないでください!!知らなかったんですからしょうがないですよ!!」
私はあわてて先輩を励ます。
「それに、能力が目覚めたばかりだからってコントロールできなかったのは私のミスですから、ね。」
私が笑顔でそう付け加えると、先輩数秒固まる。そしてあわてて、
「あ、あああ、うん。分かったよ、うん。そ、そういうことにしておく・・・・・・・。」
と先輩は返す。私が、そんなにあわてて言わなくても、といおうとしたら、銃声が響いた。ホンとだよ。銃声。私も正直自分の耳を疑った。が、ホンとだ。
「動くな!!」
このフレーズが銃声が空耳ではないことを告げる。いかにも〝犯人です(W)" という感じの全身黒ずくめの男(男だよね?)の人が拳銃を持ている。
「警察を呼べ!!」
私は小声で、
「身代金要求ですかね?」
と小声で先輩に聞く。
「だろうな・・・・・・・。」
先輩は少し考えてから、
「その前に・・・・・・・、なんとかするか・・・・・・。・・・・・・・真夜。」
「は、はい。」
「・・・・・・・、君の力を貸してくれ。」
と席を立ち私に手を差し出しながら言う。つまり、魔元素を見えるようにしろと。
「はい!!」
先輩のお役に立てるなら、という気持ちをこめて返事をし、先輩の手を取り魔力を開放する。すると、あの時と同じように、黄緑色のきれいな粒が見える。
「〝我が力に従い魔元素よ、わが意思を読み従え!!" 」
おぉ!!ラブマジでよく聞いたセリフが生で!!ラブマジファンとして感動もんです。
そして、いくつかの魔元素が犯人に向かって飛んでいく。しかし、魔元素は犯人の近くではじかれる。
「防魔法魔道具か・・・・・・・・!!」
防魔法魔道具はその名の通り、魔道具の一種で魔法を防ぐ魔道具である。しかし、魔道具は万能ではない。何人かの力お合わせたりして力で押し切れば、魔法は効く。
「・・・・・・・・なら!!」
「・・・・・・・・・っ!!」
いきなり、銃のトリガーにひっかがっていた犯人の指が動かなくなる。ほかの人達からしてみれば、何が起きたのか分からないけど魔元素かばっちり見えている私たちには分かる。風の魔元素でトリガーの周りにある風、つまり空気を固定して動かないようにしたのだ。そうすれば犯人が銃を使うことはなくなる。防魔法魔道具がなければこんな少しの面積に魔法うを使うことぐらい朝飯前な魔力を持っている先輩が、防魔法魔道具のせいでかなりの魔力を消費し苦しそうだ。正直ほかのことには手が回らないだろう。
ちなみに犯人はかなりパニックに陥っている。たぶん他の人が逃げるのは今しかないと思った私は、
「今のうちに早く逃げてください!!」
という。ほかの人達は、私たちの制服を見て聖魔高校の生徒、つまり魔法を専門に勉強している魔法のプロだと判断し私たちを放置し逃げる。この店にいるのは、私と先輩と犯人だけ。これで被害は小さくなった。ある意味冷静になったのか、それともさらにパニックに陥ったのか分からないが、犯人はわなわなと震え腰の辺りを銃を持っていないほうの手で探り、短剣を出してきた。これはまずい。そして、その短剣を振り上げ先輩の方へ。全力で魔力を使っている先輩に回避する余地なし。
(どうしよう。どうにかしなきゃ。この人を助けなきゃ。)
そう思ったとき、時が止まり頭の中に声が響く。その声は・・・・、――――女神様のものだった。