095.熊鍋
最後風天目線。
お姉ちゃんが通う、能力応用格闘学部多種格闘科のある聖魔大○○山キャンパス。すでにお姉ちゃんはここで天下統一を果たしていた。流石だ。
今日の宿舎は寮を貸してもらえることになった。学部が学部だけに、常に定員割れをしていて寮の部屋は余っている。なので聖魔高校生だと言ったら貸してもらえたのだ。部屋は余っているのだがお姉ちゃんがどうしても私と寝たいとのことで、私はお姉ちゃんと同室だ。
今は食堂に一角を使ってお姉ちゃんが狩ってきた熊で作った熊鍋を食べている。メンツとしては私、お姉ちゃん、風天先輩だ。熊鍋を出したら風天先輩が青い顔をしていた。
「せ、先輩、顔色が悪いですよ。大丈夫ですか?」
「ぐ、具合が悪いわけじゃなくて・・・・・・・・、鍋に入ってる熊ってさっきの熊だよな・・・・・・。」
「はい。」
「さっき、先輩が熊を解剖してただろう。それに俺もつき合わされて・・・・・・、目の前で内蔵とか見たんだ。だから・・・・・・・・。」
「そ、それは・・・・・・・、食べたくなくなりますね・・・・・・・・。」
先輩、ご愁傷様です。
「あ、なら、別のものを用意しますね。何がいいですか?」
「と、とりあえず熊以外で・・・・・・・。」
「分かりました。と、なると白米くらいしかないのでおにぎりでもいいですか?」
「うん。ありがとう。」
熊鍋は私とお姉ちゃんで美味しくいただいた。
お風呂も入って、部屋の電気を消して布団に入った。
「・・・・・・・ねぇ、真夜。」
「何?お姉ちゃん。」
「真夜は実と結婚するの?」
「お、お姉ちゃん・・・・・・・・・、付き合ってもいない男女が2週間でそうなるはずないでしょ・・・・・。それに風天先輩に失礼だよ。」
常識を持て、わが姉よ。それに私なんかを早急にもらおうとする奇特な人なんていやしない。
「えー、てっきり挨拶しに来たのかと。」
「来た理由は来る前に電話で説明したでしょ!」
今更何いってるの!
「あー、そういえば・・・・・・・、そうだったわね♪」
今、思い出したんかい。
「・・・・・・・、でも、真夜は実のこと好きなのよね?」
何で知ってるの!?
「・・・・・・、うん。そうだよ。」
ここで秘密とか言うと、お姉ちゃんが色んな人に聞きまわった結果みんなが知ってしまったと言う事態は避けたかったので素直にうなずいておくことにした。
「今、2人で旅行してて、楽しい?」
「楽しいと言うか・・・・・・・・、一緒にいれて幸せだな、とは思ってるよ。」
「そう。」
これ以上は何も言ってこなかった。
寝れない。彼女がかわいい声で言ってくれる「おやすみなさい」がないからなのか、勝手に自分の中で恒例化している彼女の寝顔を眺める時間がないからか、彼女の安らかな寝息が聞こえてこないからなのか。・・・・・・、多分、全部だろう。彼女が足りない分、俺の頭の中は彼女のことでいっぱいだった。
「真夜・・・・・・・。」
彼女どころか俺以外誰もいない部屋の中で彼女の名をつぶやく。この旅行が終わったらこれが普通になる。いやむしろ、彼女が寝るときにいた昨日と一昨日が異常なのだ。これが普通。だから寝れないのは極めておかしな話なのだ。そう、俺はおかしい。彼女に恋をしてから狂ってしまった。
下心とかは今までもていなかったのに、彼女にはわいてしまう。彼女にだけキュンてしたりドキドキしたりして、そのたびに抱きしめたくなる。全部、彼女にだけだ。
彼女のことが、好きで好きで好きで好きでたまらない。告白しても、こんな思い気持ちなんて受け取ってもらえないと自分で思うくらい彼女のことが好き。一緒にいる時間が1秒でも1瞬でも長ければ長いほど募っていき、彼女がそばにいないときに痛感するこの思い。
「真夜・・・・・・・、好きだ・・・・・・・、大好きだよ。」
彼女が眠っているとき同様、つぶやいてみた。こうすると心が少し軽くなるからだ。
俺の心を唯一満たせる人。俺は君の恋人になりたい。