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アザとーが自分で編み出した方法なので、我流であり、邪道ですよ?
ってか、そろそろ誰か正しい日本語のできる人、突っ込みいれてくれ!
どんな長編にしろ、短編にしろ、物語をもっとも簡潔な形にまとめろと言われたら……アザとーの回答はこうである。
「存在した」
対象が何者であるのか、どんな文体を作るのかによって「ある・居る・暮らしている」など、多様に変化することはあるだろう。
だが、いずれにしても存在を意味する言葉にかわりない。そこに世界が存在し、主人公が存在し、行動原理が存在するからこそ、ドラマは紡がれるのだ!
う~ん、今回は哲学ちっく♪
まあともかく、何がどう存在するかを書かないと小説とは言えないわけで……
『その男は、湖のほとりの番小屋に住んでいた。
眼光の鋭さは傭兵崩れであるが故だろうか。漆黒の髪の下で暗光を湛えるその瞳は、バケモノを思わせる暗さで、子供心に恐ろしかった。
さて、この男、左腕がない。戦場で切り落とされたのだという。
失った肉体のバランスが崩れ、いつもよろよろと歩いている姿は、哀れなほどに滑稽であった。』
……という『存在』を作り出してみましたが、実はこの文章、無駄が多い。
もちろん究極まで削って「男が居た」にしてしまっては、意味は通じても面白みはない。
さて、例によって、実際にやってみようかね。
アザとーが用意するのは『文字カウント機能』と電卓。もちろん、電卓機能で良いのですが、わざわざ百均で買った電卓を愛用しているのはアザとーの趣味です。
まず文字数をカウントします。この一編は、空白含めず152文字でした。
ここから1割は絶対に削るのです。
1割……さすがの俺も電卓いらねぇぞ。15・2だ。端数は切り上げて、16文字削りましょう。これは絶対なのです。
こうして数字で目安を決めたことにより『箱』が生まれます。元の文章はこの箱よりも大きいのですから、全ては収まりません。当然、必要なものを優先的に詰めていかなくてはならない。これがアザとー式推敲。
実は16文字ぐらいなら、不要な単語を選び出すのは簡単です。今回はわざと組み込んだし?
まずは言葉の重複、不要なこそあどを探し、削る。それだけで文章は引き締まるのです。
言葉の重複とは「火災が燃えている」「不審火か?」などの、意味の重なりを整理するということです。火災は燃えるのが当たり前だし、不審火は理由がわからない出火なのだから疑問符は要らないのです。
ただし、アザとーは表現的な手法として意識的に言葉を重ねることが多いので、全部を削ってしまうと表現としては少々寂しい。
『まだ明けぬ宵闇は漆黒深く、一寸先も見えぬほどに暗い。』
という一文を整理して、
『夜明け前なので暗い』
にしてしまったら、味気ないでしょ?
でもちょっとくどいから、文節一つくらい削るのはアリだなあ。どれを残すかによって読感が変わってしまうので、そこは前後の状況との兼ね合いなのですが……
次にこそあど。
文章のリズムが取りやすくなるので、不要に使いがちですね。
『この男』と書くとカッコいいけれど、本当に必要なのか。短く『男』や、『彼』に置き換えてはいけない理由が存在するのか。それを精査すると、かなりの数のこそあどが削れるのです。
その見直しだけで文章を削ることなど簡単なのですが、それは最終的に整文するための小手先テクニック。
これだけ短い例文の中にも明らかに不要な部分がごっそりと固まって一文を為しています。それを削ってみましょう。