13話 キレ者達から、うまく逃げる技
今回は、ちょっと長くなってしまいました。
「それで、伊阿はなんでここに?」
う~ん、やっぱり言われましたか・・・だってエレベーターの真ん前だもんね。なにしたいの?って感じだよね。この言い訳は玲にも協力してもらって・・・
「・・・・・」
あれ?玲君?なにやってんの?ものすごい目つき・・・いや、鬼の形相で、生徒会のこと睨んでるんですけど!?ここで捕まると面倒なんですけど!
もういいっ!お腹空いたけど、我慢、我慢。
よ~し、久々にがんばっちゃうよ~!え?なにをって?「演技」的なものです!誘導作戦みたいな感じの。この、おばあ様と、お母様に鍛えられた、この演技力!得と味わうがいい!
「はい、今度空君とお茶会するときに、お菓子はなにがいいかなって思って、参考に購買に来たんです」
演技に大切な事、その1。『表情』。まず、コレがなってなきゃ、相手も騙せないしね!んで、今回は、相手を油断させるために、にっこにこの笑顔をする。
「実は俺、料理とか得意なんですよ。今度、皆さんにもおすそわけしますよ。そうだ!空君の好きなお菓子ってなに?俺、大体のやつは作れるから!お茶会のときに作ってくるからさ!」
演技に大切な事、その2。相手に違う話題を持ちかける。てか、これ演技とかじゃないね。これは改名して『キレ者達から、うまく逃げる技』にしよう!
「好き嫌いはしない!しいて言うなら『和菓子』だな!でも、流石に和菓子は作れないよな~」
「できるよ」
「「「「は!?」」」」
キレ者達から、うまく逃げる技、その3。ここで全員の意識を別の話題に向けさせる。
「以外だな~。空君が和菓子好きなんてさ。あ!でも、それじゃあ、紅茶に合わないしな~。日本茶とか和菓子に合いそうな物の方がいいよね・・・それから・・・」
「ストップ!伊阿、ストップ!勝手に話を進めるな!
まず、俺の質問に答えてくれ!」
「うん」
「お前は、ほんと~~に、和菓子が作れるのか!?」
「だから、作れるって」
「なんで!?職人技じゃねーの!?桐夜も難しいって言ってたのに!?」
「俺の祖父と祖母の知り合いに、和菓子屋さんの職人がいて、そこの和菓子が好きで教えてもらったんです。すごく、お願いしてですけどね」
「すげ―――――」
「伊阿の料理の腕は、本当にすごいんですよ」
よしっ!玲が違う世界から帰ってきた!後は、逃げ切るだけだ!
「そうだ!空、俺もそのお茶会とやらに参加させてくれないかな?」
「べつにいーぞ!人数は多い方が楽しいしな!」
「よかったね!玲!」
「うん!」
あー、幸せそうだなー。その顔。
でも、玲の場合、ムリって言われても着いてくると思う。絶対!
「他の皆さんも、和菓子でもいいですか?」
「『他の皆さん』とは、我々のことか?」
さっきまですごい集中して俺と空君の会話を聞いて、なんも喋らなかった会長達が、いきなり話しかけられてちょっと驚いているみたい。まぁ、どうせ会話の際に不審なことがないか調べてたんだろうけど。
「会長達以外に、誰がいるんですか?」
「・・・・!」
新堂家かどうか聞かれるだろうけど、俺ががんばればいいだけだし。それに、空君が言ってた通り、人数は多い方が楽しいし!あと、やっぱり友達は、たくさん欲しいしね!
「・・・いや、空だけでいいだろう。我々も行けば、お前に迷惑がかかる」
「どうしてですか?」
せっかく、ターゲットと会話できるのに?
「我々には『親衛隊』がいてな。我々と仲良くすると、確実にいじめにあう。空だけなら大丈夫だろう。それに、今もどこかで監視しているかもしれん・・・・」
あー、わかる、わかる。自由になれないってことでしょ。でも、そんなに暗い顔することないでしょ。そりゃあ、いろいろあったかもしれないけどさ。
ていうか、親衛隊って、監視って言うより・・・
「ストーカーみたいですね!」
「ぶはっ!!」
空君が吹き出した。
「あひゃひゃひゃひゃ!」
本格的に笑い始めた。本当のこと言っただけなのに・・・でも、なんか皆、本当に笑ってる感じだな~。やっぱ、心の底から笑ってる顔って俺好きだな~。こっちまで楽しくなるし!
「友達になるのも恋人になるのも、それは自分の勝手でしょ?他人にどーこー言われる筋合いは無いですよ」
「ふっ、あはははははっ!確かにな!伊阿の言うとおりだ!せっかくの誘いだ、行こうではないか!」
会長も楽しそうでなによりだ。
「ありがとうございます!」
伊阿君のストレート発言!結構好きです。
伊阿君は、空君よりではありませんが、若干天然です。たまに、ストレート発言をしちゃいます。無意識で。