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妖艶の黒魔女

 ズドオオオオオン……。


 なにやら遠くの方から重く鈍い爆発音が聞こえた。微かに衝撃波が届いたのか、静かだった木々が揺れる。


「あら、今のはあなた達のお仲間が?」


 黒のドレスを着た妖艶な女は、「まったく、人間は見分けがつかないわね」といった様子で目の前に立っているクロ、ロートス、キークを順に眺めながら尋ねた。


「知らん。そんなことよりお前は何者だ。お前からは魔物の匂いが濃い!」


 キークは女を睨みつけながら応えた。そこにクロが割って入る。


「はい、そうですよ。俺の手下……のようなモンが、この山脈でさまよっていた宝器にトドメを刺したのでしょう」


 俺が淡々と応えると、ロートスとキークは驚嘆の目で後ろから俺を見る。


「ふぅん……。ここらの山にいた宝器は相当強力だって聞いたけど。なあんだ、その程度だったって事ね」


「そうですね。私の指定した時間きっちりですし」


「……。 まあいいわ。 せっかく来てあげたのに無駄足になっちゃった、 あなた達殺して帰りましょ」


 俺がエーテに時間稼ぎをするよう命令したのは、この目の前にいる魔物を確実におびき寄せるためであった。


 エーテが無力化させた〈エクレール〉というのは、この世界の宝器の中で非常に強力な部類に入る。

 魔物が宝器を所持できるというならば、この宝器を手に入れるべく姿を現す奴がいると踏んでいたが、正解だった。


「お前はどこから来た? どうやって国境を越えてきたんだよ……!」


 普段は余裕そうな雰囲気でいる印象のキークであったが、この時だけはそうではなかった。こいつも過去に魔物による圧倒的なトラウマを植え付けられたたちか。


「どうやってって言われても……。そのまま越えてきたのよ? 壁みたいなものがあったけど破壊して入ってきた、それだけ」


「学院長の張った障壁結界を破壊して入ってきたのか。やはり急激に魔物の力が強くなってるという報告は真実だった……」


 国境に張ってある結界だが、正式な名称は「絶対的障壁結界」で魔法名が『アブソリュートバリア』と言うらしい。これを発動し維持しているのは、この国で宝器最強の名を持つ、かの有名な〈セントラルハーツ〉である。この情報はベル調べ。


 すると女はゆっくりとした口調で喋りだした。


「んーん。違う。違うわよ。あなた達が知ってる魔物と、この私を一緒にしないでちょうだい? 至高王ちゃん達はありえないほど慎重すぎ。だから私が先に、人間を終わらせに来ちゃったのよ、お嬢ちゃん?」


 なるほど、ということはコイツは魔王の手下である至高域ではない、単体の魔物なのか。ならば、ある程度強者の可能性が高いな。いや、この国の結界を破壊して入ってきた魔物だ。強者は確定である。


「じゃあ、とりあえず」


 女はゆっくりと左手をドレスの後ろに持っていく。


「死んで。死んでもらえるかしら」


 小さくそう言うと、女の背後に妖艶なピンクのもやが集まりだした。それはだんだん形あるものに変わっていき、後ろに回した左手にワンドを出現させたのだった。

 このワンドは女の身長と比べると少し短いが、女の身長が高いだけで、ワンド自体は長めなものである。頂点には、ピンク色の一輪の花が閉じ込められた水晶玉が美しくあしらわれており、装飾のベルトが垂れている。


 女は優しく微笑み、スキルを唱えだした。


『魔物召喚』


 女の背後から覗いているワンドの水晶が紫色に光り、周辺の闇の中からスケルトンやゾンビなどの魔物が姿を現す。クロ、ロートス、キークは一瞬にして囲まれてしまった。三人は背中を合わせ、ロートスとキークは少しかがんで戦闘態勢になる。


 数は多いが低級な魔物ばかりである。宝器使いならば……。ましてや俺を入れて三人もいる。これを殲滅することは容易いはずだ。しかしどうしたものか、ロートスとキークの間から緊張の空気が伝わってくる。まさか。


「おい……。こんなもので死ぬなよ? 腐ってもお前ら宝器使いなんだろう?」


「……。」


 二人は沈黙している。こいつらまじで敗北する可能性があるのか……。


「あいにく俺は、他人を守るスキルや魔法を持ち合わせていない。お前らには自力で戦ってもらう」


 これは正確に言うと本当のことではないが、こう言えばこの二人の力の底が分かると踏んで発言してみたのだった。


「行くわよ、キーク」


「……ああ!」


 少年少女は決死の覚悟を決める。

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