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爆炎の業火―1

 討伐隊の軍から抜け出したクロとエーテ、ベル、プランタの四人は多少舗装された小道を歩き、森の奥まで進んでいた。


「ベル、ターゲットは見つけたか?」


「はい! えっと、対象は移動速度が優れている双剣の宝器で……」


「そいつの名前は?」


「エ、〈エクレール〉……っていうんだけど、知ってる?」


「そうか。ありがとな、ベル」


「まさか知ってるの!? すごいなあクロくんは!」


「……うんまあ、たまたま本で読んで知ってたんだ。そんなことより、いつも情報収集や監視の役を引き受けてくれてありがとな」


 クロは後ろを振り返りながら続けて言う。


「お前の能力はそれらの任務に適している。オマケに宝器の知識まで広く持ち合わせているじゃないか。非常に助かっているよ」


「え、あわわわ……。勿体なきお言葉!」


 ベルは目を見開き顔を赤らめた。

 ベルのクロに対する忠誠心はますます高くなる。


 四人は進んでいた足を止める。クロは前を向いたまま指示を出す。


「よし、宝器の相手はエーテに任せる。俺はコソコソ嗅ぎ回っているハイエナを駆除しよう。ベルとプランタは周辺で監視にあたれ。少しでも怪しいことがあったら連絡しろ」


「うん」


「はい!」


 ベルとプランタは返事をすると転移の魔法で消えていった。


「エーテ、今回の宝器討伐の手柄を、世間上お前のものにしてやれないことを許してくれ」


「あ? オレは外で気持ちよく暴れることができるならなんでもいいぜ」


 戦闘狂からしか出ない発言を頂き、俺はエーテにビーズの入った小さなビンを投げ渡した。


「それはずっと所持しておけ。そうだエーテ。宝器は『無力化』させるまでにしとけよ」


「……。フッハハハハハハハハ! お前それって」


 エーテは驚きと興奮の表情でクロを見る。


「つまりオレらが『宝器の魂をぶっ殺せる』ってのを知ってて言ってる、ってことでいいのか?」


 ――しばらく沈黙が流れた。


「ああ。そういうことだ」


 エーテは髪をかきあげ、額に手を当てる。


「クロ、もうそこまで知ってんのか。お前はすげえよ。気味が悪いぜ」


「……そんなに褒めんなよ」


 俺はそう言い残し、転移の魔法を発動させてその場から一瞬で消えた。


 しかし「気味が悪い」とは言ってみせたが、実際エーテにとってはどうでもよかったのだった。

 今知りたいのは、封印から解かれたオレが()()宝器相手にどこまで戦えるのか、だけである。


「さてと……」


 エーテが上を見上げると、周辺に生えている木よりも少し高い位置に、露出度高めな金髪の男が宙に浮いているのを確認した。その男は王都の方角をじっと見つめており、こちらに気づく様子はなかった。


 ****


 神官長ウルクスが率いる魔法特化の宝器討伐隊は、フーラスト山脈にある低い山の中腹に到達していた。

 馬車から降りたウルクスは、山脈を広く見渡せる崖に立つ。

 付き従う神官たちも馬車から降り、後方で背中を丸め、黙ってウルクスの様子を見ている。


「ここならば国王陛下の監視魔法も少しは届きにくい……」


 そして、紫に光る透き通った水晶玉を取り出し、目を閉じて胸の前で構える。


『パーフェクション・ロケートポジション』


 ウルクスは目を見開き、水晶玉を覗き込んだ。


「ん? なるほど、まあいい……。『ミスティックマジック・シャットアウト』」


 そうウルクスが唱えると、紫の波動が山脈へ行き渡るように広がった。


 強めの風が吹いてきた。ウルクスは歳のせいもあってか、寒さが老体に堪える。

 タイムズではここ何年か比較的暖かい気候が普通であったが、最近少し寒く感じる日が続いているのだった。

 ウルクスは早足で馬車の方に戻る。


「私の役目は果たした。帰るとしよう。それと、ここで私がおこなったことは他言無用じゃ」


 馬車の前に立っていた若い神官が返事をする。


「はい、ウルクス様」


「まったく。この国をどうなさる気なのだろうか……」


 ウルクスは小さな独り言を吐き捨て、馬車に乗り込んだ。


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