第1話「タブロイド紙を飾るプリンス」
★海外ロマンス風の小説です。セリフや設定も出来るだけソレらしくしています。
「こんな言い方はありえない」「都合が良すぎる」等、作者を叱らないで下さい。
★人物や団体・施設などの名称は、全て架空のものとご判断下さい。実在のものとは一切関係ございません。
★本作は控え目なほうですが…ハーレクイン程度のラブシーンは出てきます。苦手な方はご遠慮ください。
★サイト連載完結済み作品です。
ニューヨークタイムズ紙「アジアンプリンス~花嫁をさがして」
『二〇〇X年四月十一日午前、ジョン・F・ケネディー国際空港にアズウォルド王国王室専用機が着陸した。
我が国を訪れたのは、今日がちょうど三十歳の誕生日という、レイ・ジョセフ・ウィリアム・アズル皇太子。
アズウォルド王国は、日本とアメリカの真ん中に位置し、太平洋上に浮かぶアジア最東端の国だ。レイ皇太子の母・ルビー王太后は、元アメリカ国防大臣ルーサー・ハミルトンの次女。半分以上アメリカの血が流れるプリンス・レイは、我々にとっても非常に親しみ深い存在である。
その彼の訪米理由が「花嫁探し?」との噂がまことしやかに流れている。だが、プリンス自身の花嫁ではない。彼にはすでに、十二年も前に隣国日本から進呈されたフィアンセが存在する。今回求めているのは、彼の兄、シン・ジャコブ・ウィリアム・アズル現国王の王妃だ。シン国王は、先の王妃を不幸なテロにより亡くされており……』
デイリーニューズ紙「僕の恋人をさがして?」
『訪米中のアズウォルド王国レイ皇太子が、ハリウッド女優ローラ・ウィリアムズを伴い、州知事主催の歓迎レセプションに登場した。
今回の訪米には様々な憶測が流れているが……表向きは、ハーバード・ケネディスクール時代の友人の結婚式に出席するため。レイ皇太子は十四歳から英国パブリックスクールに入学し、その後、日本の東京大学でも学んでいる秀才だ。各国に友人・知人が男女問わずおり、我が国にも毎年非公式に訪れ、その都度、各界の美女とのツーショットが紙面を賑わしている。
その黒髪と笑顔を絶やさない温和な表情から非常に生真面目な人物に見えるが……。実際のところは、亜熱帯の島国のプリンスらしく、女性に対して非常にホットなアプローチが有名で……』
ティナは溜息とともに各社の新聞をベッドの上に放り投げた。
「なぜ? どうしてこんなことになったの?」
彼女の全く知らぬ間に、父は娘を担保のように差し出してしまったのだ。ビジネスのため、他国の王妃に。
どうやら父は、いや、妹以外の家族全員、ティナのことなど何とも思ってないことが良く判った。そうでなければ、曰くつきの国王の妃になどやりはしないだろう。これが妹のアンジーなら、何があっても反対したはずだ。
そう考えて、ティナは苦笑する。
「アンジーなら話すら持ち上がらないわね」
王妃になる、と言っても、すでに国王は四十歳を過ぎていたはずだ。
しかもここ数年、マスコミの前はおろか、国民の前にすら出てきていない王様。
今から三十数年前、同じような状況でその国に嫁いだアメリカ人女性がいた。今の王太后だ。彼女の人生は誰の目にも“幸福なプリンセス”には映らないだろう。それが判っていて、父は娘を同じ場所に追いやろうとしている。
悲しすぎて涙も出ない。
結婚などする気はなかった。一生、誰を愛するつもりもなかったのに……。いや、今もない。
タブロイド紙のトップに屈託のない笑顔で映る異国のプリンスに怒りを覚え、ティナは数枚を一気に引き裂いた。
破き始めると止まらない。部屋中に音を響かせながら、ビリビリになるまで破き続ける。だが、決してティナは涙を流さない。泣いても何も解決しないことを知っているからだ。しかし、その目は血走っており、ノックをしても返事がないので扉を開けたメイドが逆に泣きそうになっている。
「お、お嬢様……クリスティーナ様。よろしいでしょうか? 旦那様が、お呼びですが」
手にした新聞の残骸を放り出すと、目を瞑って深呼吸した。
「判ったわ。すぐに行きます」
「あの……」
「ごめんなさいね。少し……そう、不安になってしまったの。お父様たちには内緒で、片付けておいてくれるかしら?」
「はい。かしこまりました」
決して普段のティナは短気でも神経質でもない。むしろ、使用人には優しいほうだ。それが判っているので、メイドもすぐに笑顔で答えたのであった。
御堂です。ご覧いただきありがとうございます。
予約投稿をしてみたくて、サイトから転載します(爆笑)
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