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嘘をつく

夕食の時間、モリス総管の近衛はそばにいなかった。 響は忙しく動き回りながら世話をしていた。


彼は水を注ぎながら、何気なく尋ねた。

「隊長が今朝の訓示で、もうすぐふたごやまを越えると言っていました。

総管はこのあたりの地形に詳しいそうですが、あの山には何か気をつけることがあるのですか?」


モリスはやぎひげをひねりながら、笑った。「ふたごやまか、ほとんど同じ形の山が二つ並んでいて、その間に谷がある。他の場所より魔力が濃くてな、魔獣がよく現れるんだ。」


響は何度も頷いてみせた。「なるほど、だから隊長は気を引き締めろと言っていたんですね」

「ははは、子供は心配しなくていい。今回はもう先に偵察を出してある。万全だ」

その声が、不自然に高く裏返った。聞き慣れた裏声だ。


そのとき、ニコルが慌てて駆け込んできた。

「モリス総管! たった今、隊長が領主様からの信使獣を受け取りました!

双子山は通らず、回り道して領地へ戻れとの厳命です。」

「夜明け前に出発するので、総管に伝えろと。」


響とニコルは一瞬、視線を交わした。

ニコルの裏声は、さらに高いトーン。


モリスの顔色が瞬時に変わった。彼は立ち上がり、また座り直し、落ち着きなくテーブルを叩いた。

再び立ち上がったモリスは、二、三歩歩いて立ち止まり、小さく頷いた、「わかった」


彼は足早に自分のテントへと向かい、「お前たちは下がれ。私はもう休む」

またしても、裏声だった。


響は小声で言った。

「計画どおり、合図を待つ。」


夜が深まり、響は隊長のテントへと向かった。

入口の兵士が低く怒鳴る。「死にたいのか? ここがどこだか分かっているのか」


響は声を張り上げた。「隊長に、緊急の報告があります!」

兵士が鞭に手をかけたその時、テントの中から声が響いた。「入れろ」


隊長はすでに起きており、火に照らされながら護身用の短剣をもてあそんでいた。冷ややかな声が飛ぶ。「わざわざ夜中に来たんだ。相応の理由があるんだろうな」


響は片膝をつき、わずかに声を震わせながら言った。「報告いたします。先ほど草むらで用を足していた際、偶然モリス総管とその手下たちの密談を耳にしました。彼らは盗賊団と結託し、ふたごやまで我々を待ち伏せして、全員を殺し、荷物を奪う計画を立てています!」


隊長は鼻で笑い、唾を吐いた。「この奴隷め、でたらめを言うな。モリスは長年主君に仕えてきた男だ。何の恨みがある?」


響は断固として言い放った。「嘘をついておりません!」

隊長は立ち上がった。「いいだろう。ならば、その命で証明させてやる」


彼は服の中から水晶の令牌を取り出し、響に突きつけた。「もう一度、言ってみろ」


水晶が淡い紫色の光を放つ。響は拳を握りしめ、奥歯がガチガチと鳴った。

自分はこの世界の人間ではない。嘘をついても裏声にならない。

だが、胸には確かに奴隷契約の紋章が刻まれている。

この令牌が効くのかどうか――

自分でもわからない。


響は深く息を吸い、かすれた声で言った。「モリス総管と手下が言っていました。ふたごやまでで盗賊団が待ち伏せし、全員を殺して荷を奪うと。」


水晶の令牌は何の反応も示さない。

胸が焼けることもなかった。

――賭けに勝った。


テントの中が静まり返る。

隊長も兵士も、呆然としていた。

隊長は手元の令牌と響を交互に何度も見返し、突然、低く鋭い声で命じた。「すぐに副隊長を呼んでこい。誰にも気づかれるな。」


彼は響を射抜くような目で見つめた。

「お前はここにいろ。どこにも行くな。」


響はその場にへたり込み、冷や汗で服がびっしょりだった。


隊長がテントの中を苛立たしく歩き回る。やがて副隊長が駆け込んできた。

響は再び令牌の前で同じ言葉を繰り返した。

副隊長は剣を抜き放ち、歯噛みした。「奴隷は嘘をつけない。今すぐモリスを斬ってきます」


「待て」隊長が手を上げて止める。「もしモリスが内通者なら、我々の進路も戦力もすでに知られているはずだ。まず奴を呼べ。重要な相談があると言え。その隙にあいつのテントを捜索させる」

「今回、奴は何人連れてきている?」


「近衛が一人、会計が一人、用心棒が二人です」

「全員拘束しろ」

隊長の目が冷たく光る。「どんな手を使ってでも、敵の計画をすべて吐かせろ」

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