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転生

響は目を開け、ぼうぜんと空を見上げた。

紫色の空だった。


「よかった、やっと目を覚ましたぞ!」


響がその声の方へ視線を向けると、思わず目をさらに大きく見開いた 。

隣で荒い息を吐いているのは、牛の角を生やし、全身の筋肉が隆起した生き物だった――

まるで『ドラゴンボール』に出てくる牛魔王みたいだ。


「いったい何が起きた……?」

響は独り言のように呟く。

私は死んだのか? ここは天国か、それとも地獄か?


“牛魔王”は自分への質問だと勘違いしたらしく、顔を近づけて大声で答えた。

「忘れたのか?馬車が横転して、みんな川に落ちたんだ。お前は荷物の下敷きで、引き上げたときは息をしてなかったんだぞ!」

そう言って、思い切り肩を叩く。

「死んだと思ったわ!」


「……私も、死んだと思った」


響が身を起こすと、澄んだ金属のぶつかる音がした。

両手が鎖で縛られていることに気がついた。


彼は深呼吸をして、周囲を見回した。ここは広大な草原で、少し先には紫色の川が激しく流れていた。

重々しい馬車が十数台、先頭と最後尾を繋ぐように並べられ、簡易の防御陣を作っていた。

全身武装の兵士たちが散らばった荷物を数え、積み直している。


牛魔王の両手も縛られている。


「どうして僕たちは縛られているんだ?」響が聞くと、

牛魔王は眉をひそめた。「それも忘れたのか?」


少なくとも言葉は通じる。

響は頭を抱えるふりをして言った。

「急に、いろんなことを思い出せなくなってしまって。」


牛魔王は同情したように頷く。

「大丈夫大丈夫。何日かしたら戻るさ」


そして妙に元気よく、自分の鎖を持ち上げてジャラジャラ鳴らした。

「だって俺たち奴隷だからな! こういう決まりがあるんだよ!」


響は紫の空を見上げた。流れる雲は不気味な蛍光を帯びている。

この世界では、奴隷ってそんなに嬉しいものなのか?


少し離れた場所には、同じように鎖で繋がれた者たちが十数人(十数体)しゃがんでいた。人間に似た姿もいれば、牛のような姿、羊の角を持つ姿もある。皆、ぼろぼろの服で、顔色は悪く痩せ細っている。


「私は……人間なのか?」

響が聞くと、牛魔王は首を傾げた。

「お前の村じゃそう呼ぶのか? こっちじゃ“人族”って言う。俺は牛族の亜人。あっちは羊族の亜人だ」


どうやらこの世界では、奴隷に種族の区別はないらしい。


「奴隷って……身分がかなり低い階級なのか?」

牛魔王は頭をかいた。

「俺、階級とかよく分かんねぇけど、身分はたしかに最下だな。へへ」


響は思わず聞いてしまう。

「じゃあ、なんで奴隷になったんだ?」


牛魔王は明るく答えた。

「金に換えて、妹を学校に行かせるんだよ。そうだ、お前のこと、まだ聞けてなかったな。覚えてるか?」


響の脳裏に、病室で遺産を奪うため毒を注いだ“兄弟姉妹”たちの歪んだ笑顔が一瞬でよぎった。

彼は苦笑して言った。

「俺も……兄弟姉妹に金を渡すために、ここに送られた」


牛魔王は突然、響を抱きしめ、涙をぽろぽろ落とした。

「だからか!なんか気が合うと思ったんだよ。お前、いい兄貴だなぁ!」


(いい兄貴なのは、お前だろ)

響は心の中でそう返す。


兵士たちの確認が終わったようだった。精巧な鎧を着た、リーダーらしき人族が大股でやって来て、

鎖に繋がれた奴隷たちを見渡し、冷たく頷いた。

「どうやら損失は少なくて済んだようだな。」


そこへ、尖った顔つきでやぎひげを生やした人族の男が小走りで迎えに出た。

背後には、やけに整った顔立ちの若い護衛が付き従っている。

リーダーはやぎひげを見るなり、顔を曇らせた。

「モリス総管!」


モリス総管はぺこぺこと頭を下げ、媚びた笑みを貼りつける。

「レオン隊長、どうかお怒りを……お怒りを」

彼は弁明した:

「この辺りの川床はいつも一番平坦なのですが、川底にたくさんの岩があるなんて、本当に奇妙なことです。」

その声が、突然、甲高く細く裏返った。


響は眉をひそめ、総管を見つめた。


モリスは何事もなかったように続ける。

「まもなく日が暮れます。本日はここで野営を」

声は元に戻った。


「前方を偵察した兵士からの報告では——」

声がまた突然、甲高く細くなった!


響は彼をじっと見つめた。

モリスの後ろにいた若者が、突然鋭い視線を響に向けた。


響は慌てて視線を落とす。


「ここから領地に戻るまでの道のりは、非常に安全です。」

モリス総管の声は、耳に刺さるほど甲高く細かった。

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