表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/24

7話 ― 光に潜む亀裂 ―


王都 《ルミナリア》、中央議会。


そこは光族の中枢——政治と意思決定の場だった。


白く輝く大理石の床。


天井から降り注ぐ人工の光。


そのすべてが“清らかさ”を演出している。


だが——


「——境界付近での異常個体の発生、これは看過できません」


一人の男が声を上げる。


金色の長髪を後ろに流した、威圧感のある人物。


「闇族の侵入である可能性が高い」


その言葉に、ざわめきが広がる。


「証拠はあるのか?」


別の議員が問う。


「完全ではない。だが——」


男は視線を細める。


「王女が接触した闇族の存在。これが何よりの証拠だ」


その瞬間。


空気が凍りついた。



「……どういう意味ですか」


静かな声。


リミアだった。


議場の中央、王族席に立っている。


「そのままの意味です、王女」


男は冷ややかに言う。


「あなたは闇族と接触した」


「それは……」


否定できない。


「しかも、生かして帰した」


その言葉に、さらにざわめきが広がる。


「それが何を意味するか——お分かりですよね?」


疑い。


明確な、敵意。


「……私は」


リミアは拳を握る。


「敵かどうかを、自分の目で判断したかっただけです」


「甘い」


即座に切り捨てられる。


「それがどれほど危険な思想か、理解していない」


「思想……?」


「そうだ」


男は一歩踏み出す。


「光族と闇族は、相容れない存在だ」


断言だった。


「それは歴史が証明している」


その言葉に、多くの議員が頷く。


「だが——」


リミアは顔を上げる。


「それは“今”もそうだって、誰が決めたんですか?」


一瞬、沈黙。


「……何を言っている?」


「昔の争いを、そのまま続けてるだけじゃないですか!」


声が、強くなる。


「本当に、それが正しいんですか?」


その問いに——


空気が変わる。


「……危険だな」


男が低く呟く。


「王女は、“思想に汚染されている”」


ざわめきが、さらに大きくなる。


「違います!」


「違わない」


冷たい声。


「闇族と接触した者は、必ず影響を受ける」


その言葉に、リミアの胸がざわつく。


——本当に、そうなのか?


一瞬だけ、迷いが生まれる。


だが——


「……私は、間違っていません」


はっきりと言い切った。


「自分で見て、自分で決めます」


その強さに、場がわずかに揺れる。



「……もういい」


セレナの声だった。


静かだが、圧がある。


「この議論は、ここまでに」


その一言で、場が止まる。


「しかし——」


「以上です」


有無を言わせない。


議会は、強制的に打ち切られた。



廊下。


「……大丈夫ですか、リミア様」


アリシアが心配そうに覗き込む。


「うん……」


そう答えながらも、リミアの表情は晴れない。


「……怖かった?」


「ちょっとだけ」


正直に答える。


「でも、それ以上に——」


リミアは小さく息を吸う。


「悔しかった」


その瞳には、確かな意志があった。



「……随分と強くなりましたね」


後ろから、別の声。


振り向くと、一人の青年が立っていた。


柔らかな笑み。


整った顔立ち。


どこか落ち着いた雰囲気。


「エルディア」


リミアは少し安心したように笑う。


エルディア・セレスト。


王城に仕える若き魔導士。


穏やかで、誰に対しても優しい人物。


「議会、見てましたよ」


「……恥ずかしいところを」


「いいえ」


エルディアは首を振る。


「立派でした」


その言葉に、リミアは少し照れる。


「ありがとうございます」


「でも——」


ふと、エルディアの声がわずかに低くなる。


「気をつけてください」


「え?」


「この国は、思っているより……」


一瞬、言葉が止まる。


だがすぐに、いつもの笑みに戻った。


「いえ、なんでもありません」


「……?」


小さな違和感。


だが、それはすぐに流れてしまう。



その夜。


エルディアは、一人で城の外へ出ていた。


人気のない路地。


光の届かない、わずかな“影”。


「……遅かったな」


低い声。


そこにいたのは——


黒い外套をまとった人物。


顔は見えない。


「申し訳ありません」


エルディアは、静かに頭を下げる。


「王女の動きが予想以上に……」


「構わない」


短く返される。


「で、どうだ」


「……順調です」


その声は、昼間とはまるで違っていた。


冷たく、感情がない。


「内部の亀裂も、広がりつつあります」


「そうか」


満足げな気配。


「ならば——」


外套の人物は、わずかに笑う。


「次の段階へ進めるな」


その瞬間、空気が歪んだ。


「……はい」


エルディアは静かに頷く。


その瞳は——


完全に“闇”に染まっていた。



光の中に潜む影。


まだ誰も気づいていない。


その裏切りが、すべてを崩す引き金になることを。


ーーー→ continue to next story




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ