表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/24

後日譚 ― 触れた距離の、その先へ ―


夜の風は、少しだけ冷たかった。


《リヴェリア》の街は、昼とは違う静けさに包まれている。


灯りがぽつぽつと灯り、どこか落ち着いた空気。



「……こんな時間に呼び出すなんて、珍しいですね」


リミアが言う。


少しだけ不思議そうな顔。



「……別に」


夜実は壁にもたれたまま、そっけなく答える。


「用があっただけだ」


「その“用”ってなんですか?」


「……」


沈黙。



「……え、もしかして」


リミアが少しだけ身を乗り出す。


「相談ですか?」


「違う」


即答。


「じゃあ何ですか」


「……」



少しだけ、空気が止まる。



「……なんでもいいだろ」


「よくないです」


即返し。


「呼び出しておいてそれはずるいです」



そのやり取りに。


夜実は小さく息を吐く。


「……お前さ」


「はい?」


「ほんと、変わったよな」



「え?」


「前より、遠慮しない」


「それは……」


少しだけ視線を逸らす。



「ヤミア相手なら、いいかなって」



一瞬。


空気が静かになる。



「……なんでだ」


夜実が聞く。



「……信じてるから、です」



その答えは、迷いがなかった。



「……」


夜実は、何も言わない。


ただ、少しだけ目を細める。



■ 近づきすぎた距離


「……で?」


リミアが少しだけ笑う。


「結局、なんの用なんですか?」


「……」


夜実は少しだけ迷って——



「……確認」



「確認?」



「……お前が」


少しだけ言葉を選ぶ。



「ここにいるかどうか」



「……え?」


意味が分からず、リミアは目を瞬かせる。



「いなくなってないか」



その一言で。


リミアの表情が、変わる。



「……私、そんなに信用ないですか?」


少しだけ、冗談っぽく言う。



「違う」


夜実は、すぐに否定する。



「……そうじゃなくて」



一歩、近づく。



「消えるやつは、急に消える」



その言葉の裏にあるもの。


迅。


レオン。


セレナ。



「……」


リミアは何も言えなかった。



「……だから」


夜実は、視線を逸らす。



「いるうちに、確認しとく」



その不器用な言い方に。


リミアは、少しだけ笑った。



「……いますよ」



一歩、近づく。



「ここに」



距離が、近い。


さっきよりも、ずっと。



「逃げません」


はっきりと言う。



「約束します」



夜実は、少しだけ黙る。



そして。



「……ならいい」



でも、その声は少しだけ柔らかかった。



■ 名前の呼び方


「……ねえ、ヤミア」


「なんだ」



「私も確認していいですか?」



「……何を」



「ヤミアも、いなくならないですか?」



一瞬、間。



「……どうだろうな」



「ちょっと!」


即ツッコミ。


「そこはちゃんと答えてください!」



「……保証はできない」


夜実は言う。



「でも」



少しだけ、リミアを見る。



「簡単には、消えない」



その言葉に。


リミアは、少しだけ安心したように笑った。



■ 気づいてしまったこと


沈黙。


でも、嫌じゃない。



「……あの」


リミアが小さく言う。



「なんだ」



「ちょっと、いいですか」



返事を待たずに——



リミアは、一歩近づく。



夜実の胸元。



そっと、手を伸ばす。



「……っ」


夜実の体がわずかに強張る。



「ちゃんと、生きてる」



小さく呟く。



「……当たり前だろ」



「でも」


顔を上げる。



「ちゃんと触ると、安心します」



その距離。


もう、ほとんどゼロだった。



■ もう一歩


夜実は、何も言わない。



ただ——



逃げなかった。



「……お前さ」



「はい?」



「無防備すぎる」



「え?」



「こんな距離で」



少しだけ視線を逸らす。



「……何も思わないわけないだろ」



その一言で。



リミアの動きが、止まる。



「……え?」



理解が、追いつかない。



「……」


夜実は、少しだけため息をつく。



「……気づいてないなら、いい」



「待ってください」


リミアが慌てて言う。



「それ、どういう意味ですか」



「……そのままだ」



「分かりません!」



「……」



少しだけ、沈黙。



そして——



「……好きだ」



短く。



はっきりと。



「……え」



リミアの思考が、止まる。



「だから」


夜実は続ける。



「無防備に近づくなって言ってる」



その言葉に。



リミアの顔が、ゆっくり赤くなる。



■ 答え


「……あの」


声が、少し震える。



「それって……」



「どういう意味ですか」



「……今言った通りだ」



「いや、そうじゃなくて……!」



混乱している。


完全に。



「……」


夜実は、少しだけ困ったように目を逸らす。



「……お前は」



「はい……」



「どうなんだ」



その問い。



リミアは、少しだけ黙る。



考える。



今までの時間。


一緒に過ごした日々。


支えられたこと。


隣にいると、安心すること。



そして——



「……私も」



小さく言う。



「好きです」



その言葉は、確かだった。



■ 触れる手


沈黙。



でも、それは重くない。



夜実が、ゆっくりと手を伸ばす。



一瞬だけ迷って——



リミアの手を、取る。



「……っ」



少しだけ、驚く。



でも——



離さない。



リミアも、握り返す。



■ 新しい関係


「……これで」


夜実が言う。



「逃げられないな」



「逃げませんってば」


少し笑う。



「むしろ——」



少しだけ、近づく。



「離れません」



その言葉に。



夜実は、少しだけ笑った。



■ そして


夜の空。



星が、広がる。



かつては見えなかった景色。



でも今は——



ちゃんと、そこにある。



二人は並んで立つ。



手を繋いだまま。



少しだけ照れくさくて、


でも、離れたくなくて。



それが——



新しい“関係”だった。



― ワールドリバース After Story Ⅲ ― 完 ―




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ