後日譚 ― そして、二人は同じ未来を選ぶ ―
それから、数年が経った。
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世界は、完全ではない。
争いも、まだある。
価値観の違いも、消えたわけじゃない。
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それでも——
「……次の議題に移ります」
リミアの声は、以前よりずっと落ち着いていた。
王として。
そして——
“橋渡し役”として。
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光族と闇族の合同会議。
かつては考えられなかった光景。
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「この案について、闇側の意見は」
「問題ない」
短く答える声。
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霊堂 夜実。
今は、闇族の代表の一人として座っている。
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「……即答ですね」
リミアが少しだけ笑う。
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「無駄な議論は嫌いだ」
「ちゃんと考えてください」
「考えた結果だ」
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少しだけ、周囲がざわつく。
でも——
そのやり取りに、どこか安心した空気が流れていた。
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■ 変わらない距離
会議が終わる。
人がいなくなる。
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「……疲れた」
リミアが椅子にもたれかかる。
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「顔に出てるな」
夜実が言う。
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「出さないようにしてるんですけどね」
「無理だろ」
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少しだけ沈黙。
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「……でも」
リミアが小さく言う。
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「隣にいると、ちょっと楽です」
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夜実は、少しだけ目を細める。
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「……そうか」
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それだけ。
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でも、それで十分だった。
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■ 変わったもの
「……ねえ」
リミアが言う。
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「最初に会った時、覚えてます?」
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「覚えてる」
即答。
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「早いですね」
「忘れる理由がない」
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「……どんな印象でした?」
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少しだけ考えて、
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「うるさいやつ」
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「ひどい!」
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「今も変わらない」
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「変わってます!」
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そのやり取りに。
自然と笑いがこぼれる。
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■ 変わらなかったもの
夕方。
空は赤く染まっている。
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「……綺麗ですね」
リミアが言う。
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「ああ」
夜実も見る。
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昼と夜が混ざる空。
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二人が、取り戻した世界。
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「……ここまで来ましたね」
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「……ああ」
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短い返事。
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でも、その中には、全部が詰まっていた。
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■ 決意
「……あの」
リミアが、少しだけ真剣な声で言う。
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「なんだ」
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「話があるんです」
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夜実は、黙って聞く。
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「……私」
少しだけ深呼吸する。
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「これからも、この世界を支えていきたいです」
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「知ってる」
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「でも、それって」
少しだけ笑う。
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「きっと、ずっと忙しいし、大変で」
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「……」
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「それでも——」
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まっすぐに見る。
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「一人じゃなくて」
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その言葉の続きを。
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夜実は、静かに待つ。
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「……一緒に、いてくれますか」
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一瞬。
風が止まったような気がした。
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■ 答え
「……今さらだな」
夜実が言う。
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「え?」
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「もう、ずっと一緒にいるだろ」
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その言葉に。
リミアは、少しだけ笑う。
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「……そうですね」
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でも——
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「ちゃんと、言いたかったんです」
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夜実は、少しだけ目を逸らして——
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「……なら」
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ポケットに手を入れる。
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取り出したのは、小さなリング。
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「……え」
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「形式だけだ」
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そう言いながら。
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「……結婚しろ」
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ぶっきらぼうに、差し出す。
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数秒。
リミアは、固まる。
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「……それ、プロポーズですよね」
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「……そうだな」
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「言い方……!」
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思わず笑ってしまう。
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でも——
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「……はい」
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その答えは、迷いなかった。
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「よろしくお願いします」
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夜実は、少しだけ息を吐いて——
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「……ああ」
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指に、リングをはめる。
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その手は、少しだけ震えていた。
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■ 新しい関係
「……これで」
リミアが言う。
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「本当に、逃げられませんね」
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「最初からそのつもりだ」
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「ずるいです」
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少しだけ、近づく。
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「でも——」
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そのまま、肩に寄り添う。
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「嬉しいです」
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夜実は、何も言わない。
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ただ——
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そのまま、離れなかった。
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■ 未来へ
夜が来る。
星が広がる。
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かつては、存在しなかった世界。
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でも今は——
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ちゃんと、そこにある。
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「……行くか」
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「はい」
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二人は、歩き出す。
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今度は——
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夫婦として。
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同じ未来を、選びながら。
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― ワールドリバース After Story Ⅳ ― 完 ―




