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1話 ― 光の王女と、闇の少年 ―


光族領、王都 《ルミナリア》。


そこは、空すら白く輝く都市だった。


建物はすべて光を反射する素材でできており、街全体がまるで宝石のように煌めいている。人々の髪や瞳は淡く光を帯び、その姿はどこか幻想的ですらあった。


その中心——王城の庭園で、一人の少女が魔法を放っていた。


「——《リュミエール・フラッシュ》!」


白い光が弾け、空気を焼く。


だが、その制御は不安定で、光は四方へと散乱した。


「……また失敗ね」


少女は小さくため息をつく。


リミア・クレイセア。

光族の王女にして、“天才”と呼ばれる存在。


だが——


「威力は十分です。ただ、“抑えること”を覚えなさい」


背後から、落ち着いた声がかかる。


振り向いた先にいたのは、一人の女性。

銀色の長い髪を後ろでまとめ、鋭い瞳を持つ人物だった。


「師匠……また見てたんですか」


「王女の未熟な魔法が城を壊さないように監視するのが私の役目ですから」


淡々と告げるその女性は、リミアの側近であり、教育係でもある。

名を、セレナ・ヴァルシス。


厳しく、そして誰よりもリミアを気にかける存在だった。


「でも、もう少し自由にやりたいです。こう……バーンって」


「バーン、で王都が消し飛びます」


「それは困る……」


少しだけ、空気が緩む。


だがその瞬間、セレナの表情が変わった。


「……王女。今日は外出の許可が出ています」


「え?」


「視察という名目です。護衛は私がつきますが……少し、世界を見てきなさい」


その言葉に、リミアの瞳が輝いた。


「本当ですか!?」


「ええ。ただし——無茶はしないこと」


「はい!」


弾むように走り出すリミア。


その背中を見ながら、セレナはわずかに目を細めた。


「……時間が、ないのかもしれないわね」


その呟きは、誰にも聞かれることはなかった。



一方その頃。


闇族領、都市 《ノクス》。


光の届かないこの世界は、常に夜の中にあった。


だが、それは静寂ではない。


むしろ、濃密な“生”がそこにはあった。


「——遅いな」


少年は、壁にもたれながら空を見上げる。


空といっても、そこにあるのは星ではなく、ただの暗闇だった。


霊堂れいどう 夜実やみあ


闇族の政治家の家に生まれた少年。


「……来たか」


背後から気配。


振り向くよりも早く、影が伸びる。


「——《シャドウ・バインド》」


影が拘束の形を取り、夜実の動きを封じようとする。


だが——


「遅い」


一言。


次の瞬間、影が“裂けた”。


「なっ——」


驚く相手に対し、夜実は淡々と歩み寄る。


「中級魔法で奇襲は悪くない。でも、殺意が甘い」


そのまま、相手の喉元に手をかける。


「——終わりだ」


だが、その手は止まった。


「……冗談だ。殺しはしない」


相手はその場に崩れ落ちた。


夜実は興味なさげに視線を外す。


「つまらないな」


その言葉には、退屈が滲んでいた。


——強すぎるがゆえの孤独。


それが、彼の日常だった。



数日後。


光と闇の境界付近——“グレイゾーン”。


本来、両種族が近づくことはない危険地帯。


そこに、二人はいた。


偶然だった。


本当に、ただの偶然。


森の中、モンスターに追われていたリミアは、逃げ場を失っていた。


「……っ!」


背後から迫る巨大な影。


光魔法を放とうとするが、恐怖で手が震える。


その瞬間——


「しゃがめ」


低い声。


次の瞬間、黒い影がモンスターを貫いた。


一撃。


完全な殺意。


振り返った先にいたのは、一人の少年。


「……大丈夫か?」


その言葉に、リミアは一瞬だけ迷った。


——闇族。


本来なら、恐れるべき存在。


でも——


「……ありがとう」


その言葉が、先に出た。


それがすべての始まりだった。


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