後日譚 ― 二つの影、同じ空の下で ―
風が、やわらかくなっていた。
かつて“境界”と呼ばれた場所は、今では名前を変えていた。
——《リヴェリア》。
光と闇が交わる、新しい街。
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■ 再会は日常の中で
「遅い」
短い一言。
「ごめんってば!」
リミアは小走りでやってくる。
「会議が長引いて……」
「言い訳は聞き飽きた」
夜実はそっけなく言う。
だが、そのまま帰ろうとはしない。
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「……待っててくれたんですね」
「たまたまだ」
即答。
「絶対違うでしょ」
「違わない」
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軽い言い合い。
でも、それが当たり前になっていた。
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■ 少しずつ変わる距離
「……今日は、何するんですか?」
リミアが隣に並ぶ。
「別に」
夜実は空を見る。
「街の様子、見に行くだけだ」
「じゃあ一緒に行きます」
「……勝手にしろ」
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歩き出す二人。
肩は触れない距離。
でも——
前より、ずっと近い。
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「……あ、見てください」
子どもたちが遊んでいる。
光族と闇族。
混ざって。
笑っている。
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「……」
夜実は何も言わない。
ただ、少しだけ目を細めた。
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「こういうの」
リミアが小さく言う。
「増えてきましたよね」
「ああ」
短く頷く。
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「……よかった」
その一言に。
夜実は、少しだけ視線を向けた。
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■ 消えないもの
「……でも」
リミアが続ける。
「全部うまくいってるわけじゃないですよね」
遠くで、口論の声。
まだ残る“溝”。
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「当然だ」
夜実は言う。
「簡単に消えるもんじゃない」
「……はい」
リミアも分かっている。
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「でも」
少しだけ笑う。
「それでも、進んでる」
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その言葉に。
夜実は、ふっと息を吐く。
「……前より、強くなったな」
「え?」
「そういうとこ」
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「それ、褒めてます?」
「さあな」
そっぽを向く。
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■ 名前で呼ぶ距離
少しだけ沈黙。
風が吹く。
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「……ねえ、ヤミア」
リミアが言う。
「なんだ」
「私たちって」
少しだけ迷う。
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「……友達、ですよね?」
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一瞬。
空気が止まる。
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「……今さらか」
夜実が呟く。
「だって、ちゃんと言ってなかったなって」
「……」
少し考えて、
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「……まあ、そうだな」
短く答える。
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「……よかった」
リミアが、ほんの少しだけ笑う。
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■ それ以上の何か
「……でも」
夜実が言う。
「それだけじゃないだろ」
「え?」
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「共犯だ」
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その言葉に。
リミアの目が少しだけ開く。
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「世界、ひっくり返したんだぞ」
「……確かに」
少しだけ笑う。
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「……責任、取ってもらうからな」
「えぇ!?」
「逃げるなよ」
「逃げませんよ!」
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少しだけ、大きな声で笑う。
その瞬間。
本当に、“普通”みたいだった。
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■ 夕焼けの中で
気づけば、空は赤く染まっていた。
昼と夜が混ざる時間。
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「……綺麗ですね」
リミアが言う。
「ああ」
夜実も見る。
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かつては、存在しなかった景色。
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「……ねえ」
リミアが言う。
「これからも」
少しだけ言葉を選ぶ。
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「一緒に、見ていきませんか?」
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その言葉は、静かだった。
でも——
重みがあった。
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「……」
夜実は、少しだけ黙る。
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そして。
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「……ああ」
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それだけ。
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でも、その一言で十分だった。
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■ 触れない距離、でも
風が吹く。
少しだけ距離が縮まる。
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肩が、ほんの少しだけ触れる。
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どちらも、何も言わない。
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でも——離れない。
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■ 未来へ
世界は、まだ未完成だ。
争いも、痛みも、消えていない。
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でも。
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「……行こう」
「はい」
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二人は、歩き出す。
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同じ方向へ。
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― ワールドリバース After Story Ⅱ ― 完 ―




