16話 ― ワールドリバース ―
王都 《ルミナリア》は混乱していた。
レオンの死、セレナの死、そして裏切り。
光族内部の分裂は、もはや隠せるものではなかった。
「……共闘、ですか」
重苦しい会議室。
残された幹部の一人が言う。
「闇族と?」
「はい」
リミアは、はっきりと頷いた。
「このままでは、どちらも滅びます」
その言葉に、誰も反論できない。
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同時刻、闇族領 《ノクス》。
「光族と手を組むだと?」
ざわめきが広がる。
「正気か、夜実」
「正気だ」
夜実は静かに言う。
「これは、もう種族の問題じゃない」
視線を上げる。
「世界の問題だ」
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そして——
境界、《グレイゾーン》。
光と闇の代表が、対面する。
張り詰めた空気。
一触即発。
だが——
「……やりましょう」
リミアが言う。
「終わらせるために」
夜実も、静かに頷いた。
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こうして——
長き対立は、一時的に終わった。フレミシアに導かれ、二人は“最深部”へと向かう。
世界の歪みが最も強い場所。
そこに——
“それ”はいた。
「……ようやく来たか」
声。
現れたのは、一人の人物。
白でも黒でもない衣。
そして——
どこか懐かしい気配。
「……お前が」
夜実が低く言う。
「全部の元凶か」
その人物は、静かに笑った。
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「私の名は——アルト・オルディア」
それが、すべての始まり。
「この世界を“再構築”した者だ」
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「……なんで」
リミアが震える声で言う。
「こんなことを……」
「簡単だ」
アルトは答える。
「人は争う」
淡々と。
「ならば、分ければいい」
「……」
「光と闇に分け、適応させる」
「それで、争いは減るはずだった」
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「……ふざけるな」
夜実が言う。
「結果は見てるだろ」
「見ている」
アルトは頷く。
「だから——」
その目が、わずかに狂気を帯びる。
「今度は“完全に分ける”」
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空気が凍る。
「……どういう意味ですか」
「片方を消す」
あまりにも軽く言った。
「そうすれば、争いはなくなる」
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「……」
リミアの中で、何かが切れた。
「……違う」
一歩、前へ。
「それは、逃げです」
「何?」
「分けることじゃない」
強く言う。
「向き合うことから逃げてるだけです」
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「……理解できないな」
アルトは呟く。
「なぜ、そこまでして共存にこだわる」
「……決まってます」
リミアは言う。
「どっちも、生きてるからです」
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その答えに。
アルトは、初めて少しだけ目を見開いた。
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「——ならば、証明してみろ」
アルトが手を上げる。
世界が、歪む。
「お前たちの“共存”が、正しいと」
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戦いが、始まった。
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光と闇。
本来なら、相反する力。
だが——
「ヤミア!」
「分かってる!」
同時に動く。
光が道を照らし、闇がそれを切り開く。
互いの弱点を補い合う。
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「……なるほど」
アルトが呟く。
「面白い」
だが——
圧倒的。
力の差は歴然だった。
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「——っ!」
リミアが吹き飛ぶ。
「リミア!!」
夜実が駆ける。
だが——
「遅い」
アルトの一撃。
夜実も弾かれる。
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「これが、限界か」
その言葉に——
二人は、立ち上がる。
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「……違う」
夜実が言う。
「まだだ」
「……はい」
リミアも頷く。
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「——やるぞ」
「——はい」
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光が、収束する。
闇が、収束する。
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それは、今までにない“融合”。
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「——これが……」
アルトの目が揺れる。
「……答えか」
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光と闇が、交わる。
新しい力。
それは——
“均衡”。
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「——《ワールドリバース》」
二人の声が、重なる。
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その一撃は——
世界そのものを揺るがした。
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アルトの力を、貫く。
「……なるほど」
崩れながら、笑う。
「そういう……ことか……」
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「……間違っていたのは」
最後に呟く。
「分けること……そのもの……」
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その体が、光となって消える。
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同時に——
空が、動いた。
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止まっていた地球が。
ゆっくりと、回り始める。
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光と闇が、混ざる。
昼と夜が、戻る。
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世界が——
“正常”に戻っていく。
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数ヶ月後。
世界は、大きく変わっていた。
完全な平和ではない。
だが——
対話が、生まれていた。
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「……疲れましたね」
リミアが空を見上げる。
そこには、夕焼けがあった。
「……ああ」
夜実も隣に立つ。
「でも」
リミアは少し笑う。
「悪くないです」
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「……なあ」
夜実が言う。
「これから、どうする」
「そうですね……」
少し考えて、
「一緒に、見ていきませんか?」
世界を。
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「……まあ、いい」
そっけなく答える。
だが——
その声は、少しだけ柔らかかった。
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遠くで、それを見ている存在。
「……いい終わり方だね」
フレミシア・オールス。
「予想以上」
小さく笑う。
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「でも——」
その目が、わずかに細まる。
「まだ、“終わり”じゃない」
意味深に呟く。
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世界は、再び動き出した。
だがそれは——
新たな物語の、始まりでもあった
― ワールドリバース ― 完 ―




