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恋愛結婚の普及と弊害③

「それに個人の幸福についても、疑義があるようです。モートン卿、そこを頼む」

 殿下に促されて、報告を続ける。

「事件以後は、貴族の離婚が急増しました。事件以前の離婚率は一割未満でした。しかし現在の離婚率は三割を超えています。恋愛結婚に限っていえば、四割以上です。政略結婚がほとんどだった事件前と現在では事情がかなり異なるので単純比較はできませんが、恋愛結婚にもかかわらず四割を超える夫婦が破局を迎えている事実は否定できません」

 この数字には王妃陛下もショックを受けたようだ。

「世間には『恋煩(こいわずら)い』とか『恋は盲目』といった言葉がありますが、恋愛中の人間は、恋愛対象に対する判断力が低下します。その結果、結婚してから相手に失望するというケースが少なくありません。そこから関係を修復できず、離婚に至る夫婦が多いのです」

「それは各々の夫婦の問題であろう」

 王妃陛下は不都合な事実を個人の問題にすり替えて、事態を矮小化するのが常套手段なのだろうか。

「仰るとおりですが、モートン卿が指摘したのは、『恋愛結婚なら幸せは保証される』という命題は間違っているということです」

『発言』を『命題』と言い換えたのは、殿下の陛下に対する配慮だろう。

「モートン卿が申した通り単純比較はできませんから、どちらの結婚を選べば幸せになれるかという議論に結論を出すことはできないでしょう」

 政略結婚だと家同士のしがらみがあるから、本人たちの相性が最悪でも離婚できないケースも考えられる。だから離婚率だけでは結論は出せない。だが家を中心とした貴族制度と、個人主義に基づく恋愛結婚の相性が悪いのは事実だ。

「先ほども申しましたが、今の議題はそれではありません。本題に戻りましょう。モートン卿、続きを頼む」

「世襲の問題以外にも、貴族人口の減少は貴族社会に大きな影響がありました。貴族社会で働く使用人の供給です。家督を相続できない貴族の子女は家庭や王立学園で必要なスキルを身につけ、令息なら文官や武官、令嬢なら侍女や家庭教師などになって、貴族社会で働くのが通例でした。ですが子供の数の減少により、新たに職につく学園の卒業生より、必要とされる使用人の数の方が多くなってしまったのです。特別なスキルが必要ない下働きには昔から平民を雇っていましたが、高度なスキルが要求される職種にも平民を雇わざるを得なくなったのです。そのため王立学園は奨学生制度を設け、有望そうな平民にも教育を授けることになりました」

 平民の席の間には、頷く顔がいくつか見える。

「短期的には奨学生制度は有効な解決策でした。しかし、これには遅効性の問題があったのです。教育の機会の独占が崩れたのです」

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