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恋愛結婚の普及と弊害①

「ではモートン卿、続きを頼む」

 前公爵夫人が退場したところで、殿下は自分に続きを促した。

「婚約破棄事件の影響は筆頭公爵家の離脱だけにとどまりませんでした。貴族令嬢の間に上昇婚の流行(ブーム)を生み出しました」

 上昇婚という言葉に戸惑っている人もいるようだ。

「デボラ王妃陛下を見て、自分もその成功を真似しようという貴族令嬢が大勢現れたのです。家同士の利害を無視し、恋愛感情によって高位の貴族の令息と結ばれて、高い爵位を手に入れようというのです」

 自分がそう言ったら、年配の高位貴族の何名かは心当たりがあるのか、微妙に表情が変わった。

「それだけならまだよかったのですが、すでに婚約を結んでいる令息に接近(アプローチ)する令嬢まで現れました」

「そ、そのような打算と、私たちの『真実の愛』を一緒にするでない!」

 たまりかねたのか、王妃陛下が声を上げた。だが周囲の視線の温度は変わらない。自分の身分では王族に反論できないので、殿下に視線を送る。

「モートン卿は両陛下を批判しているのではありません。当時の状況を報告しているだけです。先を続けさせてもよろしいでしょうか」

 殿下の言葉に王妃陛下はそっぽを向いたが、国王陛下は頷いた。

「このような令息・令嬢たちの心理変化は、主に王立学園での行動に表れました。両陛下の出会いの場は王立学園だったのです。浅はかにも、王妃陛下の行動を模倣する令嬢が少なからずいたのです」

 原稿にはなかったが、『浅はか』という言葉を保身のために付け加えた。

「その結果、学園の風紀は乱れ、勉学は(おろそ)かになりました。学園の中で婚約破棄を宣言する令息や、妊娠を理由に退学する令嬢まで現れました」

「まるで娼館だな」

 小さな声が平民の席から漏れた。だが誰が発言したのかわからない。

「静粛に」

 議事が混乱しないよう、殿下が釘を刺す。

「教員たちは風紀の乱れを正そうとしましたが、強力な先例があったため、成功しませんでした。最終的には一つだった学舎(まなびや)を二つに分け、令息のみが通う男子校と令嬢のみが通う女子校に分離することになりました。これにより学園内の問題はいったんは解決したのですが、根本的な解決にはなりませんでした。令嬢たちの求婚活動の場が、校内から校外に移っただけでした」

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