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「つまんない。ああ、早くおおきくなれたらいいのに」
じっとお姉さまたちの綺麗な姿をみていたアイラは、口を尖らせて呟きました。
ふて腐れたようにふらふらと足を揺らし、ころんと、目の前にあった石をけってみたり。
「……っ!?」
と。
離れた所から、小さな押し殺した声が聞こえました。
アイラはびっくりして、そちらをみます。
そこには。
きらきらと、銀の月の光をあつめたような髪と、とろりと蕩けた蜜の色の目をした少年らしき精霊が、頭に手を当てながら立っていました。
きらきらと光るその髪とその容姿は、綺麗なものをみなれたアイラの目から見てもとても綺麗で――どきり、とアイラの心臓が高鳴りました。
「この石をけったのは、お前か?」
問われて、ぱちぱちとアイラは目を瞬かせます。
みると、その人の足元に転がる小石。それは確かに、さっきアイラがけった物に違いありません。
「あ……」
呆然と呟くと、その人は、おかしそうに、どこかしかたがなさそうに微笑んで、ゆっくりとアイラの元に近づいてきます。
そして。
ぽん、とアイラの頭に手を載せると、優しくなでてくれたのです。
「おてんばさん、悪戯はほどほどにね」
笑みを含んだその声は、とてもとても優しくて――アイラは、ただ、うっとりと聞きほれることしかできませんでした。
「じゃあね、ちいさなお姫様――いつかの三日月の日に、またあえることを祈ってるよ」
そう告げて去っていく彼を、アイラは、じっと、ただじっと見送りました。
――それは、小さな妖精の、初めての恋心のはじまりだったのでした。