表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月の森の物語  作者: 喜多彌耶子
三日月の夜に
9/11



「つまんない。ああ、早くおおきくなれたらいいのに」


じっとお姉さまたちの綺麗な姿をみていたアイラは、口を尖らせて呟きました。


ふて腐れたようにふらふらと足を揺らし、ころんと、目の前にあった石をけってみたり。



「……っ!?」


と。


離れた所から、小さな押し殺した声が聞こえました。


アイラはびっくりして、そちらをみます。


そこには。


きらきらと、銀の月の光をあつめたような髪と、とろりと蕩けた蜜の色の目をした少年らしき精霊が、頭に手を当てながら立っていました。


きらきらと光るその髪とその容姿は、綺麗なものをみなれたアイラの目から見てもとても綺麗で――どきり、とアイラの心臓が高鳴りました。


「この石をけったのは、お前か?」


問われて、ぱちぱちとアイラは目を瞬かせます。

みると、その人の足元に転がる小石。それは確かに、さっきアイラがけった物に違いありません。


「あ……」


呆然と呟くと、その人は、おかしそうに、どこかしかたがなさそうに微笑んで、ゆっくりとアイラの元に近づいてきます。


そして。


ぽん、とアイラの頭に手を載せると、優しくなでてくれたのです。


「おてんばさん、悪戯はほどほどにね」


笑みを含んだその声は、とてもとても優しくて――アイラは、ただ、うっとりと聞きほれることしかできませんでした。



「じゃあね、ちいさなお姫様――いつかの三日月の日に、またあえることを祈ってるよ」


そう告げて去っていく彼を、アイラは、じっと、ただじっと見送りました。


――それは、小さな妖精の、初めての恋心のはじまりだったのでした。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ