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月の森の物語  作者: 喜多彌耶子
望月の夜に
4/11

妖精の女王様は、毎月、満月の夜になると、特別な儀式として、湯浴みをするのだと、おばあさんから聞いたことがありました。


湯浴みの儀式は、美しい満月を映す鏡の湖の清らかな水と、その季節に咲き誇る美しい花びらと、そして芳しい花の香りが必要なのでした。


女王は、満月の夜になると、こうして芳しくも美しい水にて体を清め、森の穢れや厄災を払うのです。


そして月の光を浴びて、新たに力を蓄え、その美しさを磨き、森を育む力を得るのでした。


たくさんの力を蓄えた女王のいる森は、花や木、そして動物達がいきいきとして、元気いっぱいに過ごせるのです。


そして森にすむほんのちょっぴりの人間であるラーニャたちも、その恩恵を受けて、豊かな森の恵みをわけてもらって生活しているのです。


そう。


森の木が護り、女王が育て慈しむからこそ、この森は美しく豊かなのです。




やがて儀式は進み、浄化を終えた女王は、緑の褥へと戻っていきました。


それに伴って、まるでぽつ、ぽつ、と火がきえてゆくように、ひとり、またひとりと、妖精たちも姿を消します。


ぽつり、ぽつりと消えていって、やがて残るのは静寂のみ。


満月の光のみにてらされて、ラーニャは深く、感嘆に満ちたため息を漏らしました。


そして、くるり、と、きびすを返すと、一気に家まで駆けだしたのです。


そう、この今みた光景を、おばあさんに話したくて。

あの美しかった光景を、早くおばあさんに伝えたくて。



家にかけこんだラーニャは、眠る準備をしていたおばあさんに飛びつくと、息せき切って今みてきたことを伝えました。


穏やかに微笑みながら、それを聞いていたおばあさんは、ひとつ頭をなで、そしていいました。





たとえ小さくとも、女性の湯浴みを覗き見るのは不謹慎だわ、ラーニャ。



くすくすと笑いながら、おばあさんはそれ以上はいいませんでした。


さあ、そろそろ寝ましょう、おちびさん。

小さな子供が夜更かしするのは、いいことじゃあないわ。


それに、遠出をしたので、つかれているでしょう。


ゆったりと抱き上げながら、おばあさんはいいます。


そっと額におやすみのキスを受けて、ラーニャは深くと息を漏らしました。



今夜はきっと、妖精の夢をみることでしょう。



 了


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