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魔法書の創り手 〜 落ちこぼれ無属性の僕のまわりが最強すぎる件 〜  作者: はぴねこ


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39 戦場

お読みいただきありがとうございます。

 それから一週間ほど経った頃、第一王子が戦場となる広い野原に到着し、オスカーの陣営はそれを迎え撃つこととなった。


「さぁ、いよいよ始まるぞ。エノク、心の準備はいいか?」


 ガルフレッドの言葉に僕はこれから始まる戦いへの緊張感以上に、居た堪れない思いを抱いて頷いた。

 何が居た堪れないかって、ガルフレッドの装備だ。


 結局、あの後、ガルフレッドの装備に魔法を直接書き込む作業はさせてもらえなかった。

 一週間もあったのだから集中すれば色々と書き込めたと思うのだが、ガルフレッドは毎日ゼノビアたちと訓練や話し合いを行なっていて、装備を貸してはくれなかった。


 そして、そんなに僕が気にするならとガルフレッド自身が考えた解決策が、魔法書を上腕部にくくりつけるというものだった……

 そうして今、僕がガルフレッドのために作った光属性の魔法書はガルフレッドの太い二の腕にくくりつけられていた。


 正直、ものすごくダサくて居た堪れない!

 それはやめようと何度も説得したのだが、聞き入れてもらえないまま、第一王子の軍隊の目前まで来ていた。


 あ、敵の目前とは言っても、戦えない僕は彼らから離れた安全な崖の上にいる。

 騎士団長のガウェインとゼノビア推薦のAランクパーティーが僕の護衛としてついてくれている。

 僕をここまで連れてきてくれたガルフレッドは「また後で」と手を振って戦場に向かってしまった。




「みんな、用意はできているか!?」


 騎士と領民による一般兵や冒険者への呼びかけは王子であるオスカーがするのかと思ったのだが、ゼノビアの役のようだ。

 

 騎士たちも一般兵たちもパルミラ領地の領民なので、ゼノビアが指揮をとった方が鼓舞となるのかもしれない。

 冒険者はゼノビアたちのパーティーに憧れて一緒に戦うことを望んだ者たちのようだし。


 ちなみに、ゼノビアの声は遠くまで聞こえるように風魔法で拡張されているようだ。

 それは僕の魔法書による魔法ではなく、オスカーが詠唱と杖で発動させた魔法だろう。


「我々には精霊の守りがある!」


 ゼノビアの言葉に合わせてダニアンが盾を持ち上げると、火柱が上がった。

 遠くの兵士にも見えるようにという配慮なのかかなり勢いのある火柱が立った。

 戦う前からそんなに魔力を使っても大丈夫なのかと心配になる。


 ちなみに、今回の内乱に市井の者たちを巻き込まないように出兵命令などは特に出していなかったのだが、騎士たちの動きで内乱を予期したパルミラ領の領民たちは自主的に集まったそうだ。

 急遽、彼らの鎧や武器、盾が用意されて一般兵の隊列が組まれることになった。


 パルミラ領の領主一族は本当に領民に好かれているようで、領民たちの思いを考えると僕まで胸が熱くなる。

 パルミラ領に工房を持ったのは正解だったと思う。

 来訪者がやけに多いという点では現状少し困ってはいるが。


 ちなみに、魔物がよく出没する地域のため、パルミラ領の領民たちは王都の市井の者たちよりも圧倒的に強いそうだ。


 むしろ、なぜ、第一王子が市井の人々を兵士として連れてきたのかが不思議だ。

 しかも、オスカーたちは前面にオスカーやゼノビアたちが陣取り、その後ろにパルミラ領の騎士、さらに後ろに一般兵という隊列なのにも関わらず、第一王子は真逆の隊列だった。


 これでは、一般兵にただ死ねと言っているようなものだ。

 ゼノビアがしょっちゅう、第一王子のことを「バカ」と評していたが、本当にただのバカなのかもしれない。


「この正否を問う正義の炎を見よ! 正義は我らにあり!!」

「「「「「ウォーーーーーーーー!!!」」」」」


 馬を駆け出したゼノビアの後ろに領地の騎士、その後に平民たちによる一般兵が続く。


 相対したゼノビア率いる軍と第一王子の軍。

 第一王子は後ろの方に守られているし、オスカーはゼノビアの横にはいるものの、それでもゼノビアに守られるような場所にいる。


 そして、今回、僕が作った四冊の魔法書と魔法を付与した盾も王子であるオスカーを守るためのものになるのだろう。


 国民を守るための戦争などあるのだろうか?


 ゼノビアは第一王子が王様になれば平民が割を食うと言っていたし、この隊列を見るだけでそれが事実だろうと思う。

 けれど、王位継承争いはできれば王城の中だけで完結してほしい。

 国民は決して王族の駒ではないのだから。


「ゼノビア様をお守りするぞ!」

「ゼノビア様の将来の旦那様をお守りするぞー!」

「我々の領土を荒らす奴らは許さん!!」


 騎士や一般兵たちからそんな声が上がる。

 騎士団長が戦場の状況を知るために風魔法で彼らの声を拾っているのだ。


 第四王子をお守りするぞーみたいな声がなくても怒らないのはオスカーのいいところだと思う。

 しかも、オスカーの馬は徐々に速度を上げて、今やゼノビアたちの先頭を走っている。


 どうやら、オスカーは守られるだけの王子でいるつもりはないようだ。

 右手で器用に手綱を操りながら、左手には魔法書を持っている。

 

「トルネード!」


 一発目から大技だ。

 上級魔法は魔力を多く使うから、最初に使っておくのが正しいのかもしれないが、魔力量によっては最初からばててしまうかもしれない。

 しかし、オスカーもゼノビアも他の”精霊の掟”のメンバーも魔力量が多いから、おそらく大丈夫だろう。

 相手の軍もまだ固まっているし、隊ごとに軍が動き出す前に大技を当てておくのが正解だ。


 それにしても、オスカーはよほど魔力量が多いのか、トルネードだけで前方の一般兵はほぼ吹っ飛ばされて無力化された。

 戦場は野原だし、オスカーの魔力操作のおかげで落下ダメージだけで即死するような高さまでは吹き飛ばしていないので、重症の者でも骨折程度で済んでいるのではないだろうか?


「クレイジーウィンドカッター」

「フレアドラゴンブレス!」


 オスカーは続けて広範囲魔法を使い、目の前の敵を小隊単位で潰していく。

 ゼノビアも敵の塊を広範囲魔法で吹き飛ばしていく。


 ダニアンは盾役のはずだが、盾についた魔法を連発してどんどん敵の軍を削っているし、ガルフレッドは大剣を振り回しながら、同時に二の腕に装備している魔法書を発動するという器用なことをしている。


 シーラは魔力を使いまくっている仲間たちに魔力回復の魔法を使い、時々、水属性の広範囲魔法で敵を溺れさせている。


 軍の後ろの方でふんぞり返っていた第一王子に水魔法でちょくちょく嫌がらせをしているのもシーラだ。

 エルフだけあって魔力も豊富だし、魔法も使い慣れているために器用だ。


 ゼノビアたちの後ろをついて来ている騎士たちはよろよろになっている敵兵を無力化するように斬っていく作業をしている。

 騎士たちのさらに後ろからついてきていた一般兵は無力化した騎士や兵士を縄で括る作業だ。


 僕が思っていたお互いに血を流す戦いとは全く違った。

 第一王子側はともかくとして、オスカーとゼノビアの方はおそらく一般兵たちには全く被害が出ていないだろう。




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